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第6話 魔女さんが結婚!

「はぁ。聖騎士の契約を解除しませんか?」

「するつもりはない」


 取り敢えず、庶民の一般常識を身につけるようにと、外に連れ出しました。

 ついでに外で昼食を食べようとしているのです。


 そして町の中を歩きながら、ため息を吐きつつ、隣を歩く偉丈夫に交渉します。


「これ、どちらもメリットがないですよね?」


 どちらかと言えば、聖騎士側のリスクが大きいです。主の死は聖騎士の死。魔女はそんなに簡単に死にませんが、契約する意味がないと思うのです。


禁厭(きんえん)の魔女。はっきり言ってこの名は今まで耳にしたことはなかった」


 そうでしょうね。人に正式に名乗ったのは今回が初めてですから。


「ということは、まだ年若い魔女だろう?」

「そうですね」


 姿と年齢が同じなのは、魔女の中では私ぐらいでしょう。


「護衛が必要だと思ったのだが?」

「さて? どういう意味でしょうか?」


 年若い魔女と言いきった時点で、クロードはわかっているようですが、私からは敢えて口にはだしません。


「魔女は300歳になるまで人の中で暮らさなければならないらしいじゃないか」

「……」


 魔女には魔女の掟がある。

 生まれてから300年経つまでは、人の世界で暮らさなければならない。

 それは魔女自身の定に由来することです。


 いわゆる修行を積めという話です。ですから、私は魔女としてはまだ未熟者。


 魔女の中では見習い魔女と蔑められる立場です。


 そして、魔女としては未熟な魔女をいいように扱おうという人がいるのも事実。


 それが後の世に悪い魔女として世間に広まるきっかけになるのです。


 ですから、見習い魔女はそういうモノから身を守るために、使い魔や、悪魔と契約する者も居たほどなのです。


「聖騎士は聖獣の監視を受ける立場だ。これ以上うってつけの護衛はいないだろう?」

「はぁ……確かに、魔女であっても力任せにこられると対処のしようがないときがあります」


 私は禁厭(きんえん)の魔女です。術をつかって薬を作ることや病気を治すことが私の定。そして今回のように人の呪いを肩代わりすることもです。


 ですから、絶対不可侵の結界を張れるわけでもなく、全てを排除する攻撃魔法を使えるわけでもありません。


「呪いの件は俺も強引に頼んだことは自覚している。だから、俺の全てをシルヴィアに捧げよう」


 呪いの苦しみから解放されたいと強く望むのは、きっと呪われた者にしかわからないことでしょう。

 それで対価に己自身の全てと言ったのですか。


「わかりました。取り敢えず護衛ということでお願いします」

「いや、そこは契約婚したのだから、夫だろう」


 ……そこはこだわらなくてもいいと思います。


 しかし、さっきから人の視線が気になるのですが、やはり聖騎士ハイヴァザールは有名ですからね。人の視線を集めてしまうのでしょう。







「いらっしゃいませ~」


 昼食をいただくため、町の食堂にやってきました。宿と食堂が一つになっているところです。

 中に入りますと、昼時には少し早いためか、客はまだおりません。


「ま……魔女さん! どうされたのですか?」

「え? なにがです?」


 よく私のところに彼氏のことで相談してくるウエートレスのエリンが駆け寄って来ました。

 この宿の店主の娘さんです。


 そして私の隣に立っている偉丈夫と交互に視線を向けてきます。

 席に座っても良いかしら?


「お揃いですか?」

「はい?」


 何を言っているのかわからず首を傾げます。するとウエートレスのエリンは自分の左頬を指しました。


「お二人。お揃いですよね?」


 その言葉にハッとして左頬を手で押さえます。


 今まで契約痕なんて気にしたことなんてありませんでしたが、もしかして町の中を歩いているときに、視線を感じたのはこれの所為だったのですか!


 はははははは恥ずかしい! お揃いじゃないのに!


「違うわ」

「え? でも同じ色で同じ場所……」

「違うわ」


 言葉を被せて否定します。


「確かに聖獣青虎(ベルドーラ)青炎竜(アウロディゼロ)の紋様は違うな」

「聖獣青虎(ベルドーラ)ってもしかしてあの聖騎士ハイヴァザール様ですか!」

「ああ、そうだ」


 聖獣青虎(ベルドーラ)の聖痕は有名ですからね。こんな辺境の地域の絵姿なんて出回らない場所でも耳にする言葉ですからね。


「魔女シルヴィアの夫としてこの街に住むことになったから、よろしくな」


 ちょっと何をここで言っているのです。エリンにそんなことを言えば町中に広まってしまうではないですか!

 まさか! ワザとですか!


「ま……魔女さんが結婚! ここここれは由々しき事態」

「そんなことでは何も起こらないわよ?」

「魔女を探していたら漆黒の魔女のことを直ぐに教えてくれた『愛想が良い』『可愛い』『しかし用もなしに迂闊に店に近づけばジジイが邪魔をしてくる』とな」


 サイさん! 何をしているのですか!

 確かにお店に来てくれる人は決まっていますけど。


「それでお揃いなんですね?」

「それは違うから!」


 お揃いじゃないのに! 知らない人から見れば同じように見えてしまう紋様が恥ずかしい。


 こうして、魔女シルヴィアと聖騎士クロードの魔女と護衛の生活が始まったのでした。

 ……契約婚の生活が始まったのでした。


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