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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第41話 親衛隊ですか?

「何だ! この料理は!」


 お皿が割れる音にテーブルが倒れる音が続きます。


 なんとなく予想ができてしまったので、食事を終えても、私は席を立たずにエルン亭に居座っていました。


 だって初めて店で食事をとったとき、こんな硬いお肉があるなんてっと思ってしまいましたもの。


「申し訳ございません。田舎の下町の食堂ではこのようなものしか提供できません」


 それに対して萎縮することなく、答えるエリンさん。


「すみませんね。お客様。当店では決まった料理しかお出しできないのです」


 そして珍しく置くから出てきた店主。奥に引きこもっているとわかりませんが、料理人というより武人でしょうというぐらいの体格の良さが見て取れます。ええ、白い料理人が着る衣服が筋肉でパツパツですから。

 しかしお昼や夕刻の時間の人の捌き方をみますと料理人は体力勝負なのかもしれません。


 普通の冒険者なら店主の姿に怖気付くのですが、誰かに仕えてそうな人たちからすれば、威圧にもならないようです。


「だったら、あれはなんなのですか!」


 アレと言われてこちらを指されました。はい、クロードさんがお昼の定食をおかわりして食べています。お肉山盛りの昼食をです。


「はい。常連の方なので、量を増やした料理で、お出しした内容は皆様にお出ししたものと同じです」


 そうですよ。お肉が山盛りなだけです。しかし、常連というほどクロードさんはエルン亭に通っていません。


「そっちの女の方だ」


 え? 私ですか?

 私の目の前には、店主特性の『あいすくりーむ』があるのです。それも器からはみ出さんばかりの大盛りです。


 トッピングに赤い果実のレレリエが彩っていました。冷たくて甘くてとても滑らかな舌ざわりの『あいすくりーむ』に、甘酸っぱいレレリエが私の目も舌も楽しませてくれるのです。

 とても幸せですわ。


「この辺境都市『エルヴァーター』では魔女様は最上級の客人ですので、特別扱いは当たり前です」


 え? そんな決まりがあるなんて知りませんでしたわよ。店主。

 でもその魔女というのは幻惑の魔女のことだと思うのですが……。


 すると、五人の騎士っぽい人たちがざわめき出しました。


「そこにいるのが魔女なのか!」

「この町のどこかに魔女がいるはずなにのに、誰に聞いても魔女なんて居ないと口を揃えて言っていたのは、魔女に見えなかったからですか」


 え? たぶん、元夫が血眼になって私を探している姿を町の人達がみて、勝手に勘違いしてくれているだけだと思います。

 私が誰かから逃げているという風に。

 それと、サイさんの口添えもあって、町の人達は魔女を探しているという人に私のことを話さないのでしょうね。


 するとカツカツと近づいてくる足音が聞こえてきました。その気配に不機嫌そうに眉を顰めるクロードさん。

 食事の邪魔はされたくありませんわよね。


「おい、魔女。我が主が魔女を所望している。ついてこい」


 まだ私は『あいすくりーむ』を楽しんでいるところですわ。


「見てわからないのか、まだ食事中だ。出直してこい」


 私の手を取ろうとした騎士の腕を掴むクロードさん。


「手を離せ、下賤な者が! 我々は魔導師長閣下の直属の親衛隊だぞ!」


 魔導師長? この国の魔導師長と言えば、ラファウール魔導師長ですか!

 これはまた厄介なご身分の方がこられましたね。


 それは幻惑の魔女も国王陛下の蝋印が押された封筒を用意してくれるわけです。


「ふん! 別にそれはお前が偉いわけじゃないだろう。権力に(かしず)く犬が」


 クロードさん。何か私怨がその言葉の中に混じっていませんか? ここはアンドラーゼ聖王国ではありませんよ。


「あ? 貴様! 国に立てつこうというのか!」


 最終的にアンドラーゼ聖王国に報復をしようと考えているクロードさんには意味がない脅しですわね。

 私も別にこの国にこだわりはありませんし、魔女は魔女の理の中で生きて行けばいいだけです……が、今回はサイさんからの依頼ですからね。ことは穏便に運びたいですわ。


 私はクロードさんに声をかけようと顔を上げると、クロードさんの姿が向かい側の席にはありません。

 あれ? どこに行ったのでしょう?


「お前、俺のシルヴィアに何をしようとしていた」

「うぐっ……」


 何故か背後から聞こえる声。いつの間に背後に移動したのでしょう?

 そして重い金属が床に落ちる音が聞こえます。


「貴様! このようなことをしてただで済むと思っているのか!」

「ちょっと待てゼイン。この者、聖騎士じゃないのか? 聖痕を持っている」


 今まで入口を背にしてクロードさんは座っていましたので、聖痕がある左側は見えていなかったのでしょう。


「は? 聖騎士がこの国にいるはずないだろう!」


 普通はそう思いますよね。ですが、思い込みはよろしくありませんわ。


「我々に逆らったことを後悔させてやらねばならない!」

「店主。少し騒がしくするがいいか?」「騒がしいのはいつもですからいいですよ」


 クロードさんの言葉に苛つきながら剣を抜く音の中に店主の声が混じります。

 できれば埃は立てないでほしいものですわ。私は私の周りに結界を張って、『あいすくりーむ』を守ったのでした。



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