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第34話 異界の勇者の呪いの真意

「これは、これは前代未聞だ。魔女が聖獣使いの主とは。これほど面白いことはここ千年ほどなかったぞ!」


 カッカッカッカッと、大きく裂けた口から鋭いキバを覗かせながら笑う鎮星(ちんせい)の魔女。


 面白いと言われてしまいましたわ。

 しかし聖騎士ではなく、聖獣使いという言い方をされますのね。


「しかし危険ではないのかえ? 魔に相反する聖の霊獣であるぞえ?」

「それならば、霊獣ごと食ろうてしまえばよい」


 私は聖獣なんて食べませんわよ。

 しかし、力あるものを食して力を得るのは、魔女の理には反しません。


「人の理の中で生きる間は付き合わなくてはならぬな。禁厭(きんえん)の魔女はそれも受け入れたのか?」


 魔女は魔女の理があります。しかし、見習い魔女として人と暮らしている間は、人として生きることも課せられます。

 そう目の前の御三方のように、人外では駄目なのです。


「まだ、困惑はしていますが、私には無い知をお持ちですので、少しの間は付き合ってもよいと思っております」

「我らにとって知は力であるからのぅ」

「相変わらず勤勉な禁厭(きんえん)の魔女だねぇ」


 そう、聖獣との誓約を解呪することは時間をかければできます。私にはない知識をえる間、聖獣の主であればいいこと。


 目の前の方々を見てわかるように、魔女は所詮魔女であり、人ではないのです。


「ばばぁ共、さっさと要件を言って欲しいものですね。この空間の維持も大変なのですが?」

「相変わらず、目上の者に対する言葉遣いがなっていない幻惑の魔女であるのぅ」

「幻惑の魔女はハッキリいいますなぁ(生意気言っているんじゃないわよ)」


 マリーアンヌ様! お歴々の方々を前にしてばばぁと呼ぶのは止めてください。私に飛び火されても、戦闘向きではない私では防御できませんわ。


 そして水月の魔女から聞こえてくる副音声。怖い。怖い。


「確かに、魔女の島ではないここに長居は無用。では本題に入ろう」


 そう言って、鎮星(ちんせい)の魔女は鱗に覆われた手を前に出して、何かの陣を紡ぎ出す。

 読み解くと、誰かからの記憶からの映像を再現ですか。


 そう言えば、御三方にも『青炎竜(アウロディゼロ)』の紋がどこかにあるはずなのです。しかし紋があるように見えません。


 面を被っている天河(てんが)の魔女に見当たらないのはわかるのですが、皮膚が鱗になっている鎮星(ちんせい)の魔女には紋があるように見えず、水月の魔女は全体的に青いので同化しているのかしら?


 そして、鎮星(ちんせい)の魔女が紡ぎ出した陣から一人の青年の姿が映し出されました。


 黒い髪に種族的に見たことがない凹凸が少ない容姿。そして全てのモノを否定するように、深淵の闇をまとった瞳。


 その青年が相反するような綺羅びやかな銀色の鎧をまとって立っているのです。


 これが異界の勇者の姿なのかしら?


「異界から喚び出された勇者カナメ・テンドウの姿だ」


 やはりそのようです。

 異界から喚び出され、帝国の勝手な言い分で討伐された可哀想な勇者。

 この者が世界の全てを恨むのもわかるものです。


 しかし、これ程の呪を世界中にばら撒かれては、魔女たちも黙ってはいないということです。


「この者が何故人々に怨嗟の呪を与えたのか調べた結果。人の魂を食らって復活しようとしていることが判明した」

「え?」


 人の魂を糧にして復活?

 できなくもありませんが、それは外法と呼ばれる禁忌の魔法に分類されるものです。

 それを行おうとしていたと?


「今の現状は禁厭(きんえん)の魔女を入れて、九人の魔女の力で止めているのが現状だ」


 そうですか。ここにいる魔女以外に、五人の魔女が異界の勇者の呪を引き受けたということ。


「しかし、人は弱い生き物だ。呪をかけられた者が死ねば、異界の勇者の復活に近づいていく。いや、現状ではもうすでに何処かに存在しているのかもしれない」

「どういうことですか?」


 討伐戦に関わった人々の力を得て、復活しようとしているのではないのですか?


「転生であるのぅ」

「ほほほほ、考えたものだえ? この世界で新たな肉体を得て、力を徐々に得ようと考えるとは、妾も頭が下がる思いだねぇ」


 転生! 失った身体の代わりに新たな身体を得るために!

 なんだか、魔女に近しい考えを持つ人だったのですね。


 魔女は蓄えた知を残すために()の継承を行ってきました。


 異界の勇者は世界を呪うために、新しい身体を得て再び復讐を始めようとしているのですか。


「お主に頼むことは、呪を引き受けた人間の命を守ることだ。しかし聖獣の主となれば、常にともにいることになるであろうから、わざわざ言うことではなかったかもしれないが」


 はい、そうですわね。今、一緒に住んでいますわね。


「その間に我々が転生した勇者を探し出して始末する」

「しかし、まだ転生していないのか、しているのかもわからぬのぅ」

「異界の勇者は、意地が悪そうだからねぇ」


 そうですか。これはアランカヴァルの意思を受継ぐモノとして、この三人の魔女が動くので、私に手を出すなと釘を差すために喚び出されたのでしょう。


「わかりました。禁厭(きんえん)の魔女は聖騎士の命を守りましょう」


 と言っても、私よりクロードさんの方が強いと思いますけどね。私は所詮は禁厭(きんえん)の魔女ですから。



第34話でした。読んでいただきましてありがとうございます。

異界の勇者がすでに転生しているのかどうか。

失った力を、いったいどれほどの者の命を力に換え、チート存在になっているのでしょうかね。

次回は水曜日の予定です。


そして、短編連載の宣伝を

【浄華の聖女に癒やしのモフモフを〜え?皇子への愛は全くないですわ〜】


連載形式の短編のはず……


(あらすじ)

「婚約破棄されて、お可哀想なオリヴィア様」

春の暖かい日のお茶会で公爵令嬢である『祝福の聖女』エリザベートは、堂々と私の元婚約者に腕をからめながら言ってきたのです。


婚約破棄された私に。エリザベートに毎回絡まれる私に。毎日汚水の浄化をしている私に。

もふもふの癒しがあってもいいではないですか。


なぜ癒しのもふもふが、隣国の皇子っぽい人になっているのですか!


興味がありましたらよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n5091kn/



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