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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第29話 寒気が……


「グエンデラ平原で異変が起こっていると?」


 冒険者ギルドの建物の中の一室に通され、私は深淵の森『ヴァングルフ』で起こっている異変について説明しました。

 一度だけでは偶然と片付けられるでしょうが、二日続けて、グエンデラ平原の魔物が同じような状況で存在していたとなると必然となります。


 何者かの手によって作られた脅威。

 他の人の目にはただの魔物の暴走に映るでしょうが、私の目には呪われた物体Xに見えたのです。

 ただ、その意図は私にはわかりませんが。


「ええ、故意に魔物を暴走させているようですわ。だから、冒険者ギルドか町のほうで対応して欲しいです」

「ふむ。この二日間で二度も遭遇とは、早急に対処が必要かもしれん……が」


 が? なんでしょうか?


「昨日のことで『ディナート』の奴らは、まだ休息は必要だろう」


 バルトさんとお仲間の方のことですわね。バルトさんを中心に『ディナート』というチーム名で活動しているのです。確かに石化していましたからね。活動再開には、もう少し日を開けたほうがいいでしょう。


「『ラグロワール』のリーダーは傷心で、使い物にならないだろうし、『グランディーア』の奴らはまだ、王都への護衛の依頼を受けて戻ってきてはいない。冒険者ギルドからすぐに動かせる冒険者はいないのが現状だ」


 はい。それは存じています。しかし『ラグロワール』のリーダーさんは傷心というより、普通に休息が必要だと私は思ったのですが。

 まぁ、調査に人を出せても寄せ集めの人員ということですわね。


「今から領主様に掛け合ってくるか。領兵を動かしてくれるほうが、こちらとしては有り難い現状ではあるな。呪いという目に見えないものには、普通では対処できないからな」


 チラチラと私の方に視線を意味ありげにみてこられても、調査をするとは言いませんわよ。

 呪いのことには対処可能ですが、私は戦闘系の魔女ではありませんので、領主様とご相談してきてくださいね。


 あら? なんだか部屋の外が騒がしいですわね。


「お! いいタイミングだな『グランディーア』が戻ってきた」


 そうですか。では私はそろそろ帰りましょう。


「それではギルドマスターさん。私はこれで帰りますね」


 私は席を立ってにこりと笑みを浮かべます。


「ちょっと待て、『グランディーア』にも説明してくれないか」

「イヤですわ。同じ話を何度もするなんて。それはギルドマスターさんのお仕事ですわよね?」

「では、聖騎士ハイヴァザール殿にご助力を願いたい。今回の件はどうも三十年前のことを彷彿させるのだ」


 私の方をチラチラ見ているかと思えば、私の背後霊のように後ろに立っていたクロードさんを見ていたのですか。それは本人と交渉してほしいですわ。


 しかし、三十年前にも同じことが起きたということは、周期的に繰り返すものなのでしょうか?


「それは直接クロードさんと交渉してください」

「俺はシルヴィアの護衛だから、シルヴィアがいいと言えば、手を貸そう」


 え? それは私に決定権があるということですか?

 私が返答に困っていると、突然背後の部屋の扉が開け放たれました。


「やぁ! ギルマス。なんだかお祭りに出遅れてしまって悪いね」


 そう言いながらズカズカと入ってくる青い髪の青年は、先程名が上がっていた『グランディーア』の兄の方のカイトさんです。


「兄さん……ギルマスは接客中って言われた……のに」


 そして入口の方からこちらの様子を窺っているのは妹のレイラさんです。

『グランディーア』は兄妹で組んでいて、冒険者仲間からは、『グランディーア兄妹』の方の名で通っています。


「これはこれは、濡れ羽色の髪が美しい魔女の店主。実は貴女を探していたのですよ」


 そう言って、カイトさんはわざとらしく私の右手を取ります……が、背後から出てきた手にはたかれて、私は後ろに引っ張られてしまいました。


「シルヴィアに何の用だ」

「ああ、噂はかねがね伺っていますよ。あの聖騎士ハイヴァザール殿が魔女の噂に大金を出していると。いいカモにされていたようで」


 ……クロードさんの貴族的な金銭感覚は噂になっていたようです。ええ、私の作った薬に金貨100枚出す程ですもの。やはり、それはボッタクリだったようです。


「貴方達には大金でも、私にとってははした金ですよ」


 ひっ! 何故、突然聖騎士仕様になったのですか! それに何やら寒気がしてきました。


「はした金。それは失礼しました。お貴族様である聖騎士ハイヴァザール殿がおっしゃられると、説得力が違いますね」

「兄さん……誰にでも……喧嘩を売らないで」


『グランディーア』のお二人ははっきり言って、天賦の才能をもっていると思われます。しかし、このような辺境の地で冒険者などという不安定な仕事をしているのはきっと、本音をそのまま言ってしまうカイトさんの所為なのでしょう。


 いい人なのですけどね。物腰も丁寧なのですけどね。ただ、歯に衣着せぬ物言いで色々人と衝突しているのを見かけることがあります。

 まぁ、それもあって妹のレイラさんとしか、組めないというのがあるのでしょう。


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舌禍のカイト とか二つ名がありそうな……
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