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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第27話 普通ってなんだ?

「シルヴィアがそう言うのであれば、俺は聖騎士として主を護衛する」


 うっ……確かに、そちらの契約も発生していましたわね。


「それなら、聖騎士殿に護衛をしてもらいましょう」

「主の仰せのままに」


 クロードさんは剣を収め、宙に浮遊している私の手を取り、わざとらしく聖騎士の礼の姿をとります。


 くっ……これが誰もいない森の中で良かったですわ。人の目がある場所でやられると恥ずかしくて、叫んでいそうです。


「クロードさん。こういう態度は、とらなくていいですからね」

「主であるシルヴィアが夫婦という形ではなく、主従を求めるのであれば、それに従おう」


 わ……私の所為なのですか!


「い……いつも通りでお願いします」

「クククッ……シルヴィアはかわいいな」

「からかっていましたの?」


 手を振り払い笑っているクロードさんに言い寄ります。私が可愛いって、絶対にからかっていましたわよね!


「シルヴィアが望むのであれば、どちらでもいい。長い付き合いになるのだからな」


 そう言われると、ため息しか出てきません。契約の二重がさね。普通はそんなこと起こりませんのに。


「はぁ、いつも通りでお願いします。先に進みましょう」

「わかった」


 私は雨に濡れた黒い灰をこっそりと亜空間の中に回収して、ヴァンウルフによって破壊された森の中を進んで行ったのでした。




「シルヴィア。あれが何か聞いていいか?」


 目的地についたクロードさんからの質問です。


「『リヴァーヤ』という木ですわね」


 目の前には大きな大木が存在しています。ただ木というには枝が真っすぐに伸びず、禍々しく湾曲しながら伸びているので、別名『悪魔の木』と言われています。


「いや、木の方もなのだが、あれは葉っぱなのか鳥なのか、理解できないのだが?」


 その『リヴァーヤ』の木には葉は一枚も存在していません。ただその葉の代わりと言わんばかりに白い鳥が枝にみっちりと止まっているのです。


 普通に見れば、枯れた木に白い鳥が止まっていると思われる光景なのですが、その鳥の頭には青々とした葉っぱがトサカのように生えているのです。


 さながら鳥の形をした葉っぱに思えなくもありません。


「鳥の方は『ネプラ』という水属性の魔鳥ですね。葉っぱは寄生型の『カリス』です。双方を合わせて、『ネプラカリス』と呼ばれることが多いです」

「『ネプラカリス!』あの祝福の聖水と言われる……どう見ても水ではないが?」


 祝福の聖水にも使われていますね。神からの祝福(ギフト)だと言われていますが、成分を分析すれば、神の祝福ではないことは明白です。


「クロードさんもお飲みになったことが?」

「ああ、聖騎士になったときだ。神からの祝福(ギフト)は聖属性の特化だったが……あの鳥を飲んだのか?」


 クロードさん。今にもキラキラエフェクトを地面に垂れ流しそうなほど、顔色が悪いですが大丈夫ですか?

 確かにこの光景はなんとも言えませんわね。


 禍々しい枝ぶりの大木にみっちりと葉っぱの代わりに鳥が止まっているのです。それも葉っぱに擬態していると主張しているのか、葉っぱのトサカまであるのですから。


「確かに聖水が入っていた瓶のラベルは白い鳥が葉っぱを加えている図柄だったが……納得できるような、したくないような」

「真実はときには知らない方がいいこともありますわよね」


 私は右手を掲げ、大気を揺り動かします。


「少し大技を使うので、耳を塞いでおいてくださいね」

「塞がないとどうなるのだ?」

「実際に使ったことがないので、鼓膜が破れるかも?」

「……」


 なんですか? その沈黙の間は。

 人の町で暮らしていて使える魔法なんて、ほんの一部ではないですか。


「魔女は知識だけは豊富なのですよ」


 私は息を一つ吐き、呪を紡ぎます。


「降りかかる翠雨を凍らす殺風」


 雨が降る中、大気が揺れ火花が弾けだします。突然の周りの変化に警戒感を露わにする白い鳥たち。

 飛び立とうとも辺りを一瞬で凍らす風が吹き抜ける。


「一陣身に染む時、不香花(ふきょうか)が全てを覆い尽くす」


 息が白くなり、世界を凍らせていく。


「荒々しく吹き流れる雷雲。迸る雷光」


 稲光が天を覆い尽くす。

 流石に白い鳥たちもこの場にいる危うさを悟り、凍りついた木の枝から飛び立とうとする。

 しかし、足が枝から離れず、翼をばたつかせるのみ。

 そして徐々に、白い雪に覆われていき、その動きも止まっていきました。


「全てのモノに天の(いかずち)を『トゥルティスカ』!」


 大気を揺るがす雷鳴と共に降り注ぐ雷。その雷に当たり次々に木の枝から落ちてくる白い鳥たち。


「うわっ!」


 そして隣から聞こえてくる悲鳴。


「シルヴィア……少しこの魔法は強すぎないか?」


 両手を耳から下ろしながら聞いてくるクロードさん。

 でも、あの量の鳥を捕獲するには、これぐらいの規模でないと、逃げられてしまいますわ。


「シルヴィアが張ってくれた結界が、一発当たっただけで消えたぞ。ということはドラゴンのブレスより強力だということだよな」

「クロードさん。言ったではないですか。普通(・・)のドラゴンのブレスを防ぐと」


 するとクロードさんは唸りながら、疑問を口にしました。


「普通ってなんだ?」


ただ単にシルヴィアの魔法が強すぎたというだけですね。そして『全てのモノ』に味方も含まれてしまっている事実。単独で動く魔女らしい魔法でしたw



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