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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第22話 私にチョコレートを作れと?それは危険ですわ。

 私はとても満足です。

 チョコレートどころか、カカオまで手に入ったのですから。


 そして、カカオの種を発酵させて使えるようになるまで2年という歳月が必要でした。

 しかし魔女である私にそのようなものは関係ありません。

 魔法で発酵速度を調整できるのですから。


「シルヴィアが嬉しそうでよかった。ハイヴァザール公爵家経由だと、どうしても時間がかかってしまうからな」


 帰りに市場で食材を買ってきたクロードさんは嬉々としてパスタを茹でています。

 朝にあれだけお肉を食べたのに、お昼ご飯を食べれるのですか?

 私は『エレンシア商会』でいただいたケーキでお腹も心も満足ですわ。


 はっ! 私も人のことを言えなかったです。朝もケーキを食べて、直ぐに商会で甘味を堪能してしまいました。


「ありがとうございます。これで万能薬の素材が一つ揃いましたわ」

「ん? シルヴィアがチョコレートを作るために購入したのではないのか?」


 え? 魔女の私がチョコレートを作るなんて出来ませんわよ。


「クロードさん。私は甘いものが好きですが、自分では作れませんわよ」

「作らないのではなくて、作れない?」


 クロードさんは不思議そうに首を傾げています。

 ええ、作れないのです。


「薬をこれだけ作っているのにか?」


 私が定位置の様に座っている背後の戸棚に視線を向けながら疑問を口にするクロードさん。

 私は禁厭(きんえん)の魔女ですもの。


「例えばこのチョコレート。効果としては血管を広げる効果に美肌効果があります」


 貧血予防にもなるので、栄養食としていいでしょう。万能薬には老化防止作用を最大限に引き出して使用します。


「ですが、呪によって素材の効果を最大限に引き出す禁厭(きんえん)の魔女が作ると、媚薬になります」

「意味がわからないが?」

「私の知識ではカカオそのモノを使って出来たものは、媚薬効果があり、貴族の奥方に重宝されたとありますね」


 かなりの高額で取引されたと知識にはありますので、お金に困ることがあれば作ることもあるでしょう。


「ですから私が作ったチョコレートを私自身が食べると、クロードさんに押し迫ってしまいますので作りません」

「それは、それで、いいかも……」

「何かおっしゃいました?」

「いいや。何でもない」


 そうですか?


 ふふふ。今日買ったチョコレートは一粒ずつ大事に食べましょう。


 どうもチョコレートの原料のカカオは聖王国経由でないと手に入らないらしく、頻繁に入荷ができないそうなのです。


 ……そう言えば、クロードさんがあのとき言っていましたわよね。南方から取り寄せていると、ということは……


「シルヴィア!」

「どうかしましたか?」


 思ったより近くでクロードさんから名前を呼ばれて、肩がビクッと揺れてしまいました。

 視線を声のする方に向ければ、思っていた以上に近くに赤い瞳が!


 ち……近すぎます。


「ドラゴンの肉を食べてみたい!」


 あ、幻の肉かどうか確認したいということですのね?

 私は空間に両手を入れて抱えるほどの壺を取り出します。


 ちょっとクロードさん。近いですわよ。待てですわよ! 待て!


 なんだか背後に白い尻尾が振られているような幻覚が見えてしまいます。


「なんだか禍々しい気配がする壺だな」

「毒抜きしているからかしら?」


 ドラゴンの毒が欲しくて、わざわざ別の大陸まで飛んで行ったのよね。物理攻撃特化のメイスに乗って。


 でも大陸にわたり切るまでに海上上空で、渡り竜の群れに遭遇してしまったのよ。それで出会い頭に鈍器で殴りつけて持ち帰ったのよね。


 あの時はまだ子爵家に住んでいたときだったから、あまり遠出をしなくて済んでホッとしたわ。

 私が家にいるとグチグチ言うくせに、姿が見えないと『どこで何の悪さをしてきた』と兄が決めつけるのですもの。


 あの時から漬け込んでいるから、だいぶん年数が経ってしまっているわね。


「十年以上漬け込んであるから、毒は抜けているはずよ」

「はず?」

「ええ」

「十年以上?」

「そうね。十五年ぐらいかしら?」

「食えるのか?」


 なんだかクロードさんが徐々に離れて行っています。そんなにビビるものではありませんわよ。


「クロードさん。何故こぶし大の肉が金貨一枚の価値になるか考えたことがありますか?」

「滅多に出会わない……ドラゴンの肉だからか?」

「いるところにはいますよ」


 私は先程買ってきたカカオとチョコレートをクロードさんに見えるように掲げます。


「このカカオの種がチョコレートになるには二年かかります。その価値が一粒銀貨一枚です」


 そのチョコレートをパクリと食べます。

 ああ、なんて幸せなのでしょう。一粒銀貨一枚の価値は絶対にあると思います。しかし、この価格では高額過ぎて下町では買い手がつきません。

 嗜好品の価値は貴族が決めているようなものですから。


「ドラゴンの肉が食べられるようになるには十年です」


 そして私はドラゴンの皮で作った壺の蓋を開けて、トングで中の肉を取り出します。

 先程解体したばかりかのような赤みのある肉が取り出されました。

 弾力があり十年以上前の肉とは思えない新鮮さ。


「肉の状態が不安なのでしたら、私が焼いて差し上げますわよ」



銀貨一枚は1万円相当です。聖王国では一粒100円ほどで食べられていますが、聖王国経由でしかカカオが手に入らず、異界の聖女考案のレシピ使用料、そして関税や諸々がかかり、シルヴィアの手に届く頃には1万円になっていたのでした。


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