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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第20話 特別待遇の理由

 本当に中央区の門を顔パスで通り抜けたクロードさん。

 やはり聖獣青虎(ベルドーラ)の聖痕をもつ聖騎士ハイヴァザールの名が凄いということですわね。


 中央地区には初めて足を運びましたが、整然と整えられた町並みです。

 馬車がすれ違える広い石畳の道路。区画が決められているのか同じ大きさの建物が並び、街路樹が道の端で雨に打たれて、葉の色彩をより深い緑色にしています。


「ああ、あそこだ。『エレンシア商会』」


 エレンシア商会? それはかなり大手の商会の名ですわ。各国で手広く商品を取り扱っている商会です。


 確かに大手の商会であれば、チョコレートは取り扱っているでしょう。


 同じような大きさの建物が並んでいる中、ひときわ大きな建物が『エレンシア商会』の建物のようです。店の中は外からでもわかるほど窓から煌々と満ちた光が漏れています。それは、商会が持つ力の大きさを示しているようでした。


 店の扉の前にはドアマンがおり、歩いて近づいてくる私達に不審げな視線を向けてきています。


 ええ、普通は馬車で来ますわよね。それも個人で所有している馬車を。


「来店のご予約をされていらっしゃいますか?」


 そうですわよね。いきなり来て、入れてくれるような商会ではありませんわよね。

 それに貴族であれば普通は呼びつけるものです。


「今朝、オーナーに言っておいたんだが?」


 そう言ってクロードさんは外套のフードを上げました。するとドアマンの態度が直ぐに変わり、深々と頭を下げながら、店の扉を開けてくれます。


「ご来店、誠にありがとうございます。聖騎士ハイヴァザール様」


 やはり、聖獣青虎(ベルドーラ)の聖痕のもつ影響力は凄いですわ。


 それよりも、今日の今日で予約するのですか?

 お店が開いていないって言っていましたわよね。どうやってオーナーと連絡を取ったのですか?


 中に入ると広い玄関ホールが目に飛び込んできました。正面に受付でしょうか? カウンターの奥には女性スタッフがおり、ホールの端には、いくつかに区切られた応接スペースがあることから、待合スペースか商談スペースなのでしょう。


 ここだけでもかなり広いです。そして玄関ホールを煌々と照らすシャンデリア。

 もう、商会の規模というよりは貴族の屋敷です。


「外套をお預かりします」


 カウンターの奥にいた女性がやってきて、にこやかに言ってきました。そうですわよね。いつまでも雨に濡れた外套を着ているわけにはいきません。


 こういうところに来ると、貴族としての教育を受けていて良かったと思います。

 何も知らなければ、戸惑っていたでしょうから。


 外套を渡し、にこやかな笑みを浮かべます。


「頼むわね」

「かしこまり……魔女様……こここここここれはししししししつれい致しました」


 え? どうかなさいましたか?

 私の顔を見た瞬間、凄く挙動不審になっていますわよ。


「魔女様のご来店ですぅー!」


 何故に大声で叫ばれたのですか?

 意味がわからず、私も戸惑ってしまいます。


「魔女様。ようこそ『エレンシア商会』に足を運んでいただき、恐悦至極に存じます。さぁさぁ、こちらへどうぞ」


 突然、上品なスーツを着た男性が現れたかと思うと、奥の方に案内されそうになっています。

 意味がわからず、クロードさんに助けを求める視線を送りました。しかし肝心のクロードさんは、別の方と話をしているではないですか!



 成り行きのまま、店の奥にある個室に通されたかと思うと、香り高い紅茶が出され、数種類の小さなケーキに、焼き菓子、プリンまであるではないですか!

 よだれが出そうなのを押さえ、貴族らしく凛とした姿を保ちます。


「本日はどのようなものをご所望なのでしょうか?」


 おそらく、この方がオーナーなのでしょう。物腰柔らかい壮年の男性です。


「チョコレートを」

「流石、魔女様! お目が高い! 先日入荷したばかりのものがございます。直ぐに用意をいたしましょう」


 そう言って、オーナーらしき男性は個室から出ていきました。そして私は受付にいた女性と二人っきりになってしまったのです。


 この状況はどうすればいいのかしら?

 このケーキを食べていいのかしら?

 出されているのだから食べていいのですわよね。

 流石に全部食べると駄目ですわよね。


「魔女様。なにかお気に召さないものがございましたでしょうか? 別の紅茶がよろしければ、お淹れいたします。ご希望の銘柄はございますか?」

「あの……その前に聞きたいことがあるのです」

「はい! 何でしょう!」

「どうして、このような特別待遇を?」


 どう見てもこれは特別待遇ですわよね。大手の商会からすれば、これぐらいの甘味は大したことはないでしょうが、普通の貴族でもお茶の時間に、これ程のケーキや焼き菓子は用意しませんわよ。


「『エレンシア商会』は魔女様たちの忠実な下僕でございます。なんなりとご要望をおっしゃってくださいませ!」


 ああ、これは魔女の誰かの逆鱗に触れたのですわね。


「額に魔石があるお客様には、五体投地の心意気で接待する。これが我が商会のモットーです!」


 嫌なモットーですわね。それに五体投地に心意気があるのですか? もう、ポッキリと心が折れていると思うのですけど。



第20話でした。読んでいただきましてありがとうございます。


商会はどの魔女を怒らせたのでしょうね。


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