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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第19話 雨の日のデート?

「少し筋張ってはいるが、美味いな」


 熊型の魔物であるベルデベアの肉を食べたクロードさんの感想です。

 良かったですわね。


 そして私は、どこぞかのハイエルフの恥ずかしい日記というものに目を通しています。


 これ、普通に植物の栽培記録ですわ。


 確かに言い換えれば、失敗の記録とも言えますから、恥ずかしい記録になるのかもしれません。


 しかし、この知識は役に立ちますわ。もしかして、先祖の禁厭(きんえん)の魔女はこの知識が欲しくて、あのエルフ族の少女に父親の恥ずかしい日記を持ってくるように言ったのでしょうか。


 ありえますわ。私の知識はその先祖の禁厭(きんえん)の魔女から引き継がれたもの。同じところで行き詰まっていたのも事実。


 これなら、かねてより考えていた薬草の栽培に着手できそうです。


「シルヴィア。今日は雨だが一緒に買い物に行こう」

「は?」


 何故に雨の日に外に出なければならないのですか?


「俺がいれば中央地区というところは顔パスだぞ」


 ん?


「まだ開いていなかったが、チョコレートの店があったんだ」

「チョコレート!」


 知識にはあるチョコレート! しかし未だに食べたことがないチョコレート!

 王都では、お店があると噂のチョコレートのお店が、この辺境都市にあるのですか!


「デートに行かないか?」


 チョコレートのお店。チョコレートのお店。チョコレート。


「行きます!」

「ついでに、一緒に暮らすのに必要なものを買おう」


 チョコレートってどんな味がするのか、楽しみですわ。


 私はチョコレートという魅惑的な言葉に支配されて、クロードさんの目的を聞いていませんでした。




 辺境都市『エルヴァーター』の面積は広大なため、巡回馬車が走っています。とは言っても、敷地面積の多くは農地であり、その中に中央地区、北地区、南地区の町が存在しているのです。


 中央地区に向かう巡回馬車は殆どなく、歩いて行ったほうが早いというのが現状です。

 ええ、中央地区に住まう人たちは、大抵が馬車を個人でもてるほどの金持ちが住んでいるからです。


 雨よけの外套をまとい、北に向って歩いていきます。何故かクロードさんに右手を繋がれて。


 手を繋ぐ意味ありますか?


 それに雨の日は外に出ている人が少ないですわね。わざわざ雨の日に外に出ようだなんて思いませんもの。


「それで、あの魔女の中庭というのは、どこに繋がっているんだ?」

「先程も同じことを聞かれましたが、そんなに気になるのですか? それから手を繋ぐ意味あります?」

「裏から侵入されても困るだろう。それから手を繋ぐのは、俺がこの地に不慣れだからな」


 にこりと笑みを向けて言うクロードさん。別に迷子になったりはしないでしょう。

 今朝、行って帰って来てましたわよね。


 それから中庭の件は心配は無用ですわ。あちら側からの侵入は無理ですもの。


「小川の先に木の柵がしてあったのを覚えていますか?」

「ああ、最初はその柵の向こう側からエルフ族に声をかけられたからな」


 小川の先には開けた場所がありますが、その先には庭と小屋のような建物を囲うように木の柵があるのです。


「ええ、魔法に長けた者があの場に立つと空間が断絶しているのが見えるはずですから」

「空間が断絶? しかしあのエルフ族は柵から入ってきたぞ」

「それはクロードさんが招き入れたからです。中にいる者が許可をしないと入れません」

「俺の所為か?」

「そうですわね。まぁ、私も説明はしていませんでしたが」


 流石に中庭に案内したその日に、裏から客がくるとは思わないですもの。


「それで、あそこはどこなんだ?」

「そんなに気になりますか?」

「気になる。遠くに見えた高い山の上。あれは伝説の精霊王『フィーデカリス』の黄金の城じゃないのか?」


 伝説の精霊王ねぇ。本物を知らないって幸せなことね。だから、黙っておいて差し上げますわ。


「伝説の精霊王の城は、残っておりませんわよ。残念でしたわね」

「いや、別に残念じゃないけど、だったら山の上の建物はなんだ?」

「あら? 私は言いましたわよ。魔女の中庭だと」

「ん?」

「あそこは別の魔女の中庭ですわ」

「どういう意味だ?」

「どういう意味もなにも、島全体が魔女の中庭ですわ」


 あそこには普通では行けません。あのエルフ族の少女のように飛行するモノに乗るか、己自身で飛行しなければ島にはたどり着けません。


「魔女の住処は不特定です。どうしても魔女とコンタクトを取りたい場合には、魔女の島に足を運ぶのです。そこには魔女の住処の裏口に通じる中庭があるのですよ。あら? もしかして今はそんな風習は廃れてしまいましたの?」

「知らなかった」


 今は、そこまで魔女を必要としなくなったのでしょう。


「魔女の集会もあの島で開かれますのよ? 見習い魔女には参加する権利はありませんけど」


 禁厭(きんえん)の魔女は、代々あの薬草畑が中庭と決まっています。それが尋ね人への目印になっているのです。


 あと、いつまで手を繋いでいるのでしょうか?

 雨の日で人通りが少ないとはいえ、視線が突き刺さってくるのですが。



第19話でした。読んでいただきましてありがとうございます。


魔女の中庭が晴れていた謎。

全く違う場所だったからですね。


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