表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/87

第18話 裏口からの訪問者

「シルヴィア。客が来ているんだが?」


 ケーキを食べ終わって幸せの余韻に浸っているとクロードさんから声をかけられました。


 客ですか?


「あの魔女の中庭というのは、いったいどこに繋がっているんだ? エルフ族なんて初めて見たぞ」


 まぁ、世界は広いですからエルフ族ぐらいいるでしょう。

 しかし客とはどういうことでしょうかね? 私にはエルフ族の知り合いなどいませんわよ。


 取り敢えず行ってみましょうか。




「来てやったのじゃ! 禁厭(きんえん)の魔女!」


 金髪碧眼の十六歳ぐらいの少女が言ってきました。

 動きやすそうな戦闘服を着て、背中には弓を背負っています。耳が人よりも長いのでエルフ族に間違いはないでしょう。


 そしてエルフ族の少女の背後には小型の飛竜が轡をされて地面に寝そべっていました。

 騎獣ですか?


「あの……どちら様でしょうか?」


 私は見覚えのないエルフ族の少女に向って尋ねました。確かに私は禁厭(きんえん)の魔女で間違いはないですが、エルフ族の知り合いはいません。


「我じゃ! 我!」


 ご自分の顔を指しながら言っていますが、知り合いに見せかけて騙そうとしている詐欺ですか?


「え? 知り合いじゃなかったのか? 昔からの知り合いと言っていたぞ」


 ……昔。エルフ族の昔とは、おそらくクロードさんが思っているような十年前とかではないと思います。


「何か勘違いされているようですが、貴女の知り合いの禁厭(きんえん)の魔女と私は別人ですわよ」


 おそらく、このエルフ族が言っているのは、私が禁厭(きんえん)の魔女として生まれる前にいた、禁厭(きんえん)の魔女のことです。


「わかっておる! しかし、記憶の継承を魔女はしているのじゃろう?」


 やはり勘違いされているようですわね。魔女の血で継承されるのは知識であって、記憶ではありません。

 ですから、私の先祖である前の禁厭(きんえん)の魔女の個人的な記憶は持ってはいません。


「知識の継承です。先祖にあたる禁厭(きんえん)の魔女の記憶は、御本人のモノであって、私のモノではありません」

「なんじゃ……そうなのか……」


 なんだか凄く落ち込まれてしまいました。


「今まで手入れがされていなかった畑が、綺麗になっておったので、戻ってきたと思っておったのに」


 おそらくお二人は、懇意にしていたのでしょう。魔女も長命ですが、エルフ族も長命ですから。


「モテモテの秘薬がやっと手に入ると思ったのに」


 ん? モテモテ?


「成長してボンキュッボンになる秘薬が手に入ると思ったのに」


 ボンキュッボン……思わずエルフ族の少女の絶壁のスタイルに視線がいってしまいました。あ……すみません。


「作るのに必要だという『マグマの中に咲く烈花』と『万年凍土に眠るヨルムンガンドの欠片』と『父上の恥ずかしい日記』じゃ!」


 エルフ族の少女は一冊の古びた手帳を自慢気に取り出して掲げました。


 これは……先祖の禁厭(きんえん)の魔女が適当なことを言いましたわね。

 それに気づきなさいよ。最後の恥ずかしい日記は薬になる要素が全くないことに。


「エルフの御方。そもそもマグマの中に花は咲きません」

「なんじゃと! ではっ! これは何なのじゃ!」

「年に一度、一斉に数日だけ咲く赤い花を乾燥させたものですね。毒があるので食べないでくださいね」


 色あせ乾燥した赤い花が、パサリと地面に落ちました。


「これは本物じゃろう! ヨルムンガンドの欠片じゃ!」

「ただの氷漬けのドラゴンの肉です」


 ぼとりと両手に抱えるほどの氷漬けの肉が地面に落ちました。


 そして地面にボトボトと水滴が落ちています。


「やっと、ボンキュッボンになって、モテモテになれると思っていたのに」


 動機が不純ですわ。スタイルがいいからと言って、絶対にモテるとは限りませんわよ。


 しかし、いつまでもエルフ族に居座られても困ってしまいますからね。ここは魔女の中庭。

 私は見習い魔女ですからね。裏口からの客はお断りしますわ。


「エルフの御方」


 私はそう言いながら、頬にハンカチを添えて差し上げます。


「成長というのは種族差もあれば、個人差もあります。しかしエルフ族……それもハイエルフ族となれば、成長もゆっくりになることでしょう」


 そう、先祖の禁厭(きんえん)の魔女が生きていたときの知り合いで、未だに少女の姿ということは、エルフ族ではなく、更に希少種であるハイエルフ族になるはずです。


「まずは、服装から入ってみればよろしいのではないのでしょうか?」


 そう言って、服の見本冊子(カタログ)を亜空間から取り出して、泣いている少女に差し出します。


「か……可愛いのじゃ!」

「差し上げますから、参考にしてください」

「嬉しいのじゃ! 流石、我の友なのじゃ!」


 友達ではありませんわよ。

 でもまぁ、貴族として恥ずかしくない格好をするために、王都から取り寄せた冊子がこんなところで役に立つのですね。


 そしてエルフ族の少女はご機嫌で、飛竜に乗って帰っていきました。


「なぁ、恥ずかしい日記が落ちているけどいいのか?」

「はっ! 忘れ物ですわよ!」


 慌てて声をかけたものの、飛竜の姿は既に遥か彼方を飛んでいたのでした。

 どこぞかのハイエルフの恥ずかしい日記など保管に困ってしまいますわ。


第18話でした。読んでいただきまして、ありがとうございました。


今回は魔女の記憶の話でした。

ボンキュッボンの秘薬は存在しないのでしょうねw

存在しても何か副作用があるのかな?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでます、ありがとうございます ハイエルフの恥ずかしい日記きっと薬?になりますよ 意気揚々と亜空間に入れといて下さい いつかドライアイの患者さんが来たらお渡し下さい 追伸 ドライア…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ