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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第17話 美味しすぎるのが悪い

「この肉なんだ? 凄く美味い! これが金貨一枚とは安すぎるだろう!」


 あの十キログラ(kg)を全部、ステーキとして焼いてしまいました。そして皿の上に山盛りになっている肉。


「昨日行きました湿原の更に奥にある平原にいる魔物ですね。確か名はテュランブル。姿が見えず鋭い角で襲って来る魔牛です」


 私はケーキが売っていたというパン屋のパンをちぎって食べます。

 小麦の甘い香りが鼻に抜け、柔らかい食感の中にコリッと硬い食感があります。甘い……甘い樹の実って!


「ん! これルアラが入っていますわ! 流石、中央地区にあるパン屋です」


 このルアラの樹の実もグエンデラ平原でしか採れないので、貴重なものです。それをパン生地に練り込むなどなんて贅沢なのでしょう!


「誰か知らんが、『マリアンヌ様御用達』と看板を掲げていたから、美味しいだろうと思ったのだ」


 少し目を離しただけで、既に皿の上に盛られたステーキ肉を半分を食べきっているクロードさんが、機嫌よく教えてくれました。


 マリアンヌ……何か引っかかりますわ……マリアンヌ……マリー……『幻惑のマリーアンヌ』……『幻惑の魔女』!



 私は亜空間収納から群青色の封筒を取り出します。封筒の裏を見ました。


『幻惑のマリーアンヌ』の署名と封蝋印があります。

 幻惑の魔女の御用達のパン屋ですわ!


 それは珍しい高級果実や手に入りにくい樹の実を使ってもおかしくはありません。

 おそらく『幻惑の魔女』自身が品物を卸していると思われます。でなければ、商品として使うことはできないほどの貴重な品ですもの。


 そしてパン屋にケーキが売っていた理由も、『幻惑の魔女』が望んだからでしょう。


 え? 私が食べていいのでしょうか?

 でも、売ってもらえたということは、商品だったということですわね。


 食べ物の恨みは恐ろしいものですから、お会いしたときに確認したほうが宜しいですね。


「あ……もう無くなってしまった。美味し過ぎるのが悪い。全然食べたりない」

「え?」


 その言葉に封筒から視線を上げます。テーブルの上には白い皿しか存在していませんでした。

 あのお肉の山はどこに消えたのですか? あれを全部食べてまだ足りないのですか?


「今から、その何とかブルを狩ってくればいいのか!」


 そう言って立ち上がるクロードさん。

 ちょっと待ってください。

 買ってくるのですか? 狩ってくるのですか?


 聖騎士の剣に手をかけているので、狩ってくるの方ですか!


「クロードさん。雨の日の森は慣れないと危険ですよ。それから、深淵の森『ヴァングルフ』には、まだ美味しい食材がありますからね。解体できるのであれば、ベルデベアがありますよ」


 浅瀬の森にいる熊型の魔物です。少々肉は硬いですが、亜空間収納にそのまま収納されているのです。

 右手は薬の素材に使ってありませんが。


「おぅ! 解体は得意だ!」


 満面の笑みで返事が返ってきました。

 なんとなくわかった気がします。

 料理ができるのは大量の肉を食べるためで、解体ができるのは狩ってきた魔物を肉塊にするためでしょう。


 ええ、普通聖騎士様が料理や解体なんてする必要ありませんもの。


「でも、どこで解体するんだ?」

「裏口から中庭に出られますので、程々に広くて水も使えますから……今から解体するのですか?」

「そうだな。今日はどこかに行く予定はあるのか?」

「基本的に雨の日は、薬の補充を作って過ごしますので外には出ません」


 パンを食べきってから立ち上がります。そしてカウンターの扉を上げて奥の戸棚に向かいました。その戸棚を横に移動させて、奥へと進みます。

 突き当りの壁に絵の具で描かれたレリーフの門の前に立ちました。


「ここは?」

「中庭に通じる扉ですね」


 そう言って私は壁に手をつけます。


「『開門(オプティス)』」


 すると家の壁が無くなり、花の甘い香りが奥から漂ってきました。


「花畑?」

「薬草ですよ。よく使う薬草はここに植えているのです」


 視線の先には、色とりどりの花畑が広がっているように見えますが、全て薬屋の素材として使う薬草になります。

 そして小川が流れている先に地面が見えている場所があります。その奥には高い山々が見え、青い空が広がっていました。


「……どうみても、中庭じゃないだろう」

「魔女の中庭ですよ。扉は開けたままにしておきますから、解体作業が終われば教えてくださいね」


 私は外に亜空間収納から赤い毛並みの大きな熊を出しました。右手は無いですけど。


「へぇ、あの森にはこんな魔物がいるのか」


 クロードさんは喜々として三メル(メートル)はある魔熊を担いでいきます。


「あ! 毛皮はいるのか?」

「私は必要ありませんが、高く売れるでしょうね」


 私が必要だったのは右手だけでしたので。


「そうか」


 機嫌よく去っていくクロードさんを確認して踵を返します。

 さて、私は今からケーキを食べましょう! あのレレリエのケーキには何のお茶が合いますでしょうか?


『幻惑の魔女』御用達のケーキ。楽しみですわ!


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