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倹約令嬢、怠け者王子に見合いを提案する。  作者: 千神
第1章 王宮編
7/24

第七話 禍福は糾える縄の如し

今日…というより、もう昨日ですが。

少し投稿遅れてしまいましたが、

どうぞよろしくお願いします(^○^)


「うぅ、美味しい。体に沁みるって感じ」

「令嬢っていうよりオヤジじみているわね」


目の前にあるチーズのツマミを食べ、ワインを口を含み思わず声が出た。その声に、ソフィは容赦ないツッコミが入る。まぁ、と飲んでいる私を横目にソフィが呟く。


「50年前だったら、フェリーは変人令嬢扱いね」

「だね、今の時代の令嬢で良かった」


貴族も外でこのようなお店で食べるようになったのはほんの50年前くらい。それまでは、自分たちの家にシェフを招いていたり、お抱えシェフというのが主流となっていた。私の家のような騎士家系は騎士達のなかにも平民上がりというの者がいたりなどの理由から貴族でも酒場にいることはあったらしい。微かな記憶を辿ると、確かに祖父が酒場に行ってきり朝まで帰ってこなくて危うく離婚の危機だったとお母様が言っていた気がする。

それでもそれは騎士家系の貴族令息という限定な話で、基本的には店に行って食べるなんてことは庶民が行うことだと思われていた。それがテラスでお茶ができるカフェが出来てからその風潮が変わったのだ。それがちょうど50年前。元々貴族がアフターヌーンティーを行うとき、自分家のサロン室かそれとも別途であるサロン館といった所で執り行われていた。今でも執り行われることも多いが、とにかく準備が大変だ。私もお母様とアフターヌーンティー謂わゆるお茶会を執り行うってことになったら朝から2人で料理や飾り付けやらで大騒ぎしている。お菓子は招待した側の手作りということになっているため、この国の令嬢達の教養としてお菓子作りが入っているくらいだ。この文化自体かなり独特らしく、他国から短期留学していた令嬢がとても驚いていた位だ。

接待やら何やらとにかく忙しいに尽きるお茶会を劇的に変えたのがカフェという訳だ。カフェにはオープルスペースとプライベートスペースがある。特にプライベートスペースは貴族間で需要が高い。カフェのある一角の部屋を丸ごと使えるこのサービスはお茶会をやる貴族にとってはとても都合が良かった。予約をするのと食事のメニューの流れを考えるだけで済む。とくにテラス付きというのはここ2、3年は予約いっぱいというくらいに人気でお茶を室内で楽ながら、天気がいい日は外でも楽しめるようになっている。その流れから、店にご飯を食べに出るというのに貴族の間から抵抗がなくなっていき、今では私達がいるようなカジュアルレストランとかにも貴族がお忍びで来るようになったという訳だ。


「わぁ、これ美味しい」

「本当だわ。これピリつきが癖になりそうね」


アンチョビのパスタを2人でシェアしながら、美味しいと言い合う。…私達の場合は、忍んでというより完全に場に馴染んでになっているけど。


「ねぇ、そういえば騎士団遠征6月に南部に行くってことは、私達の結婚式に参加できるの?」

「任せてよ。そこら辺の調節に抜かりないから。なんと言っても()()2人の結婚式なんだからね。」

「よかったわ。フェリーがいないと始まらないもの。」


ソフィは今年の6月末に学友でもあるルイス・バーバラと結婚する予定である。ソフィが元々席の近い私に声を掛けたことがきっかけで、ルイとも仲良くなった。ルイと仲の良かったカイも一緒に4人で生活することが増えた。そんな時だったルイとソフィがお互いに意識し合ってるではないかと気付き始めたのは。当時から恋愛面のからっきしの私としては自信がなく親友の1人であるカイに聞いてみると、「わかる?わかるよなぁ。あの状況3年間くらい続いてるんだよ。」と、因みに当本人たち以外は気づいているということだった。当時の私は思わず「本当?」と言うと彼は「本当本当」と頷いた。

その後このようなことに変に首を突っ込むのもよくないと、静かに見守っていたがまぁ…発展なし。見ているこっちの方が、そのまま行ってしまえ!勢いだ!と思ってしまうくらいに何もなかった。いや、私もそこまで乙女脳はしてなかったので、ラブラブイベントとかそういうのはそこまで期待してなかった。だか、本当に何もない。健全な友達付き合いである。このままでは何もせず、2人とも卒業してしまうのではないかと危惧した私はカイと手を組んで、2人の間を取り持つこととした。2人を誘って、祭りを行ったりしていた。他にも、勉強会を開いたら誕生日会などを行うなど裏で色々とカイと策を投じたのだ。その結果、2人はめでたく付き合うことになり、今年結婚することになった。結婚することになったと聞いた時は思わず泣いてしまった。カイにも手紙を書いたりして、2人で喜びを分かち合った。


「ルイの方こそ大丈夫なの?外交課、今結構忙しいって聞いたけど。」


ルイは卒業後、王宮外交課国際関係管理部に就職した。国際関係管理部とは、その名通り他国から来賓におもてなしを行うプランを考えたり、国交関係が非常不安定な国との中継ぎをするといった仕事である。今は隣国ナラジアがここ数年きな臭い動きをしているということで、私達騎士団も交えてナラジアへの対応に追われている。ナラジアは私達の国にとってとても難しい相手だ。今は和平を結んでいるが、100年前には戦争し殺し合っていた。そして、その際に私達の国が勝利し一部領土を報酬として手に入れた。今はナチア領土と呼ばれており、西部の東の方に位置している。私達が領土を手に入れる際に先住民を追い出した記録もあり、その先住民たちの子孫たちを中心に小競りが今でもあった。だが最近、怪我人も増えてきており不安要素も見つかってきている為、再度両者の会談を執り行うことが決まったのだ。

王族としてはナラジアの事で、西部と不安定な関係になりたくない。北部開発計画で今南部と交渉していたりしているから。南部との対応をしていくなかで、西部もなると…ごたつく可能性が高い。ナラジアにその隙を狙われてしまう。なるべく短い期間で事を片付けたいという王族の本音。そしてそれは王宮外交課にも伝わっている筈だ。面倒くさいことになってないといいけど。


「今の所は大丈夫。色々と融通を効かせて貰っているみたいで結婚準備にもちゃんと顔を出してくれるしね。」

「本当にルイはそういうところはマメよね。」

「そうね、彼のいい所の一つよ。」

「惚気、ごちそうさまです。」


私が冗談で両手を合わせるフリをすると、もうやめてよとソフィはにこにこと笑った。彼女の薬指がリングの光に反射して光った。

彼女の笑顔、そして彼との関係が末永くそして幸在らんことを祈るばかりだ。

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