第二十六話 我が上の星は見えぬ
若干のスランプに陥っていましたが、何とか脱出。
またちょっとずつ頑張りたいと思います。
「女遊びしなくなった?」
「うん」
今日は久々にソフィと個室のある食事処でご飯とお酒を堪能していた。序でに、ここ最近ある意味可笑しい我が主であるヴァイゼ様の話を彼女にしてみた。
「よかったわね!」
一気に色々解決できるかな、と嬉しそうに呟くソフィを見ながら目の前のお酒に一口口を付けた。
…ある日を境に、ぱったりとヴァイゼ様が女遊びを辞めた。毎朝聞こえて来た女性達の声が聞こえなくなった。
忍び込む女性たちにも丁重に帰って貰ってる。今までは摘み食いしまくっていたのに。良い事ではある。
婚約話の1番の難関がサクッと解決したのだから。
「急にぱったりと無くなると…それはそれで怖い」
「素直に喜べいいものを」
「いや…うーん、それは…今までの…ことが…」
「まぁ、気持ちもわからなくないけど。」
もっと気楽に考えてもいいと思うけどな、と言いながらソフィは目の前のつまみに手を出していた。
気楽ね…と心中で呟く。
「あの人の女癖はもう病みたいなものだったよ。」
「病は言い過ぎじゃない?」
「そんなことはない!」
私のあまりの迫力に、ソフィが「そうなのね」と若干引きながら呟いた。ヴァイゼ様に使えて、見習い期間も入れて…5年。5年間、あの人が女遊びを途切れさせたことなんかなかったのに。望んでいたことだけど…。
「何か様子が可笑しいの?」
「いや、通常運転。」
いつもにみたいに挨拶代わりに口説い来たり、と飲みながら言ってるとソフィが若干首を傾げた。
「口説く?」
「えぇ」
「どういう感じで?」
「どういう感じって…うーん、麗しの秘書官殿的な?」
「遊ばなくなったのに…フェリーには口説く…」
ソフィの中で確信に近い答えが導かれたとき、思わず目の前の親友を見る。当の本人はソフィの様子にん?と目配せを送るだけだった。これは…本人だけわかってないパターンかな。ソフィの昔はその立場だったのであまり人の事は言えないが、フォローはしなければ。
「私の予想が正しければ、第二王子は大丈夫よ。」
「その言い方、何かわかった?」
「たぶんね…だけど、私からは言えないわね」
「えぇ!」
なんでぇと呟く親友の肩をポンと軽くソフィは手を置いた。助けになってはあげたいが、自分の考えていることが正しい場合はこれは自分が勝手に暴露してはいけないものだし。暴露した場合、慌てふためく親友の姿が容易に想像できる。この2人は女の勘だが、第三者が余計な介入をしない方が上手くいく気がする。
「まぁ、あれよ。頑張れ!」
「何を?」
フェリが首を傾げると、ソフィは軽く苦笑いで返した。
「そういえば、結婚式。どうにか間に合いそうよ。」
「え!本当!ルイから話を聞いてから、本音を言うとフェリーはもう参加が難しいかもって諦めてたのよ。」
「まぁ、南部のことがあったから騎士団遠征は前倒しになったし。次は北部。国境線近くに行くとは言え、戻ってこようと思えば3日で戻ってこれるし。」
最悪、騎士団は誰かに任せてという言葉は酒と共に飲み込んだ。みんなで戻ってこられるように頑張ろう。
「北部と言えば、最近小競り合いが激化してるって聞いたわ。下手したら……戦争に発展するかもって。」
「…流石はアイチェの娘ね。」
ソフィの家であるアイチェは東部から派生した王侯貴族である。その為、貿易関係を主軸にあらゆる場所の情報を仕入れている。また、北部開発にも一部関わっている為その線の情報は特に耳に入るのが早いのだろう。
「その感じだと、本当のことのようね。貴方のお兄様もそっちに今派遣されているのよね。」
「うん。そこまでは心配してないわ。兄様がいてもいなくても、戦争になる前に終止符を打つのが私の仕事。」
そっかと、優しくソフィが呟いた。そして、ふと何かを思い出したように私の顔を見る。
「そう言えば聞いてる?」
「何が?」
「カイもその戦いに参加してるのよ。」
「え?」
カイ、本名はカイオリス・スヴィーゲンである。そして私、ソフィとルイの親友でもある。カイも騎士家系の貴族で割と最初から騎士家系あるある話で盛り上がり、馬が合った。最後にあったのが1年前。軍部に入っていたのは知っていたが…まさか北部にいたとは。
「あれ、カイって今騎士団のどこ所属だっけ?」
「それはフェリーの方が詳しいでしょ。」
「うーん、騎士団って組織図が複雑なのよね。それに人数だって馬鹿にならないし。一々把握してないよね。」
「それもそうね。この前の話の感じだと、騎士団の先鋒部隊に入っているみたいなことは言ってたけど。」
「先鋒って、国王直属部隊の一つじゃない!」
「そ、そうなの?」
この国では、クーデターや内乱防止で色々と騎士団構成が割と複雑だ。第二王子で継承権第二の我が主ヴァイゼ様率いる騎士団統括管理課はその名通り騎士団の統括かつ管理を任せられている。それでも、彼が簡単には動かせない軍部組織が存在する。それが、カイが所属しているであろう王族護衛団である。王族護衛団は一応騎士団の一部組織扱いにはなっているが実態は一線を概す。彼らは精鋭中精鋭、己の主の指示しか聞かない。なので、ヴァイゼ様の指示もある程度は突っ張り返すことができる程の権限がある。王族は自己防衛という観点から、それぞれの一定の武力保持が認められている。昔はヴァイゼ様にも居たけど、彼が騎士団の統括責任者になってからは解散辞令が出ていた。今は騎士団第一部隊護衛部として彼らはヴァイゼ様の下で今も彼を守ってくれている。…脱走を阻止する方が主な仕事になっていなくもしないが、今はそれはそれとして置いておいて。
王族護衛団は、それぞれ王族の1人を主人として騎士として守り抜くを信条の組織である。一応、王族1人に偏りが出ないようにはなってはいるらしい。
「まさかカイがね…」
「カイとは全然連絡取り合って無かったの?」
「ここ1年はサッパリ。お互いに忙しかったし。」
カイなら軍部のどこにいても元気にしてるだろうという感じがしていたので、あんまり連絡し合えなくても心配はしてなかった。カイも同様な感じだろう。
「それにしても王衛が動いていたなんて。」
「それっていけないことなの?」
「いけないっていう訳じゃないけど…王が直々騎士団を動かさないといけない程自体が深刻っていうことを意味してる。逆に考えればチャンスでもあるけど。」
これは思ったより事が早く収束するかもしれない。王衛たちがどういう辞令が下されているのかにもよるけど。
「フェリー、嬉しそうね。」
「まぁね、思わぬ援軍に喜んでたのよ。」
それはよかったわね、と微笑むソフィに微笑み返しながら互いのグラスを乾杯し合った。




