第十七話 先見の明
大分久しぶりです。
終わりは決まってますが、どう二人を生き生きと書くかと頭を抱えながら書いてます。
今回、フェリちゃんが頑張ります!
(いや、彼女はいつも頑張ってますがw
「…つまり、兄様が危ないってことか。」
ご飯を食べながら、資料の読み終わり一息吐く。
これが本当ならかなり不味いなと思いながら、周りの状況を伺う。ここでは、この資料がどこまで信憑性に足りるのか確かめられない。殿下の命もあるし、時間が圧倒的に足りない。…まぁ、それ込みの作戦でしょうけど。
資料の内容が正しいと仮定して動くとして、反王族派が南部貴族だけで約2割。西部、北部は約1割。東部に関しては3割前後。今の王族体制に不満を持つ貴族というのは勿論いる。王族の方でも反王族派の貴族に関しては密偵部隊を送り、監視している。あっちはあっちで私達の方に密偵を送っているだろうし。まぁ現状均衡状態だった。表面的には穏やかな関係を保ちつつ、裏ではそれなりの駆け引きが執り行われている。
…前の調査よりも反王族派の割合が各部多くなっている。それでも誤差と言えば誤差。それよりも、各部の反王族派が連携が取れている動きをしている方がよっぽど大問題だ。南部の土砂崩れ、西部のナラジア問題、東部との北部開発による関係の解れ、北部との開発日程の調節…ここ数年で中央部と各部には大小あれど関係に解れが出てきている。これが全部反王族派たちの思惑通り…らしい。こんなに連携を持たせるような動きなんか見せなかった。…そうならないように王族たちも気を張ってきたと言うのに。私達にとっての最悪のシナリオは反王族派が力を合わせて私達に攻撃を仕掛けることだった。王族が崩壊しようがしまいが内政が荒れるのは必須だ。反王族派だって一枚岩ではない。それこそカリスマ的な存在がいなければ纏め上げられないような脆い組織だった…はず。これ程の規模の組織を纏め上げ、ある程度計画通りに持っていく実行力と統率力。
これは絶対に裏に国が絡んでるな。
「この感じだと、ナラジアとスノープリアね。」
どっちか、最悪どちらも。この資料を見る限りだと、この2カ国どちらともという線が濃い。スノープリアは私達の国の北部と隣接している国だ。北部とよく小競り合いしている国である。私の兄ティカーはその北部の小競り合いに騎士として出向している。兄様は今は第五小隊隊長で機敏な動きを得意としている第五小隊の力を貸して欲しいとのことで北部の方のハートスノ地方に今行っているのだ。…あの兄のことだからそんな簡単に負けるとかないと思うけど。父に似て脳筋だからなぁ。国絡みの緻密な戦略っていうのは弱い。勝率としては五分五分というところか。う〜ん、微妙だな。
「やぁ、どうだ?決心は決まったか?」
さて、どうしたものかと悩んでいるとその男は入ってきた。その憎たらしいくらいな余裕な笑みに嫌な予感が過ぎる。それでも、ここで曲げたら駄目だ。
「ザラゲート様、私は…あの方を裏切るなんてできません。兄様なら、これぐらいどうにかします。」
「やっぱり、そうか。フェリシエ様ならそう言うだろうと思っていたが、実に残念だ。しかし、裏切るも何も裏切る主人がいないと話にならんだろうに。」
「!、それってどういう意味っ!」
ヴァイゼ様の身に何かあったの、と思いながら黒ずくめの男たちに抱え上げられた。う、やっぱりこの封鎖的な環境だと情報が手に入らない。あの能天気怠け者王子がそんな簡単に死ぬような口じゃないでしょ。
死んでないですよね、ヴァイゼ様。
「では、其方を交渉材料にさせて頂くぞ。」
「何を…するつもり…なの。」
抱き抱えられ、その後すぐに目隠しをされた。どこに向かって歩いているのはわかっていたけど。目隠しを取られた瞬間、息を呑む自分の音が耳に残る。
目の前には森が広がっていた。この感じ…スカーレット地方からそんな離れてなかったのね。
「今、其方を拘束しているロープの先に時間固定の魔道具を付けた。これは持って12時間。効力が切れたら、そのまま森に一直線で落ちる。」
「え」
落ちるってここから。思わず、下に視線を向ける。
「12時間以内に第二王子を失うか其方を失うかの二択だ。第二王子のことは偶々だったが運が良い。」
そんな、私か彼なら…彼の方が。
「十中八九、アイツらは第二王子を取るだろうな。だが、迷う時間が稼げれば良い。結果として、第二王子が助かる可能性もあるだろうが、それでも其方は確実に死ぬ。迷えば、それだけ第二王子だって死ぬ確率が上がる。迷った挙句に第二王子も其方も亡くなったというのが最高のシナリオだが…それは高望みかな。」
何を言っているのかわからない。いや、言葉はわかる。意味がわからないのだ。…私が捕まった時点で半分は目的を達成しているって、つまり、こういうことなの。私が捕まれば、私が味方になるならそれはそれで良し。私が味方にならなかったら、それはそれで私を材料に第二王子たちに揺さぶりをかけるつもりだったということか。…もう、本当に。私の存在が彼の足枷に。
「だからって言って、ここで飛び降りなんてこともしても犬死ね。…猶予は12時間か。」
彼等の言い分からして、あの怠け者王子は死んでない。そしてまだ3日は立ってない。もし、3日立っている場合はそもそもこの交渉が成り立たないからだ。だから、この12時間というのが私と殿下のタイムリミット。…あの王子を死なせる訳にもいかないが、こっちだって死ぬ訳にいかない。あの人、意外に繊細なんだから。もし、私がここで死んだら。きっと…己を攻める。
「それに文句の一つや二つ言わないと。」
無事、あの人の元に帰って。その言葉は飲み込みながら、前を見据える。後ろで私の様子を見ていたザラゲートは勝利を確信しているのか、どこか勝ち誇った笑みを浮かべていた。…腹が煮えくり返るってこのことね。
「最後まで足掻けばいい。結果は変わらん。」
「えぇ、言葉に甘えて、最後まで足掻かせて貰うわ。」
私が不敵に笑うと思った反応ではなかったのか、つまらそうな顔をしてここを後にしようとした。
「全てに絶望した顔を見れなくて残念だ。」
「私、結構運がいい方なんです。」
暗に死なないかもよ、と匂わせしていると単に強がりと思われているのか先程とは打って変わってにやりと薄気味悪い笑顔に戻って、ふんと鼻を鳴らし後にした。
「人質を実質一人して大丈夫なの?」
まぁ、この環境だと特にすることにすることはないけど。解除用の魔道具もないし、男に勝る程の武力がある訳ではない。口喧嘩では負ける気がしないけど。
「口喧嘩の攻撃が物理攻撃に繋がれば良かったのに」
…まぁ、そんなことを言っても時間の無駄なのはわかってるけど。言ってみただけよ。と、一人でノリツッコミしながら状況を整理していく。
「私を一人にしたこと後悔させてやるわ。」
だてに、問題児王子の秘書官やってないのよ。




