第十二話 益者三友
「どういうことですか?」
「…今は駄目というだけだ。」
タイミングが悪い、とヴァイゼ様は呟いた。
「タイミングですか?」
「あぁ、フェリ。一旦ディートに手紙を書いてくれ。それをあっちにいるウチの諜報員に渡すから。」
「なるほど、そういうことですか。」
「どういうことだ?」
ルイは首を傾げ、フェリーに説明を求めた。
「ルイの作戦としては、まずは隣国のダイナマイトのプロジェクトの中核を壊したかったんでしょ?」
「あぁ、そうだ。」
中核としては、ディートがいる。逆なことを言うと、彼さえこちら側に着かせることが出来れば、ダイナマイトの脅威を著しく下げることができる。そして、運が良いのか悪いのかはわからないけど、ディートは私の言うことなら耳を貸す。私がディートにプロジェクトを外れて欲しいと言うのが1番誰も傷付かずそして安易な方法だろう。だから、ルイも態々こちらに来た訳だし。
だが、これには厄介な難点が一つだけある。
「フェリたちの話を聞く限り、ディートという男は隣国に忠誠をこっちに恨みがある訳でもない。どちらかというと、隣国の方が自分が進めている研究が進められるから隣国に着いているという感覚だろう。」
「その通りです。アイツにとって重要なのは己の研究とフェリーのことだけなんで。」
「それは言い過ぎじゃない?」
「言い過ぎなもんか。アイツにとっては研究、そしてフェリー以外やフェリーに関するもの以外に関してはそこら辺の雑草と同じ感覚と言っても過言じゃない。」
俺は辛うじて花くらいだろうな、とルイは苦笑しながら呟く。ヴァイゼ様はそんなルイを横目に、コホンと咳払いを軽く吐いた。その横顔は珍しく不機嫌な気がした。
「だからこそだ。ルイ氏が言っていることは両者にとって一番血が流れない方法だろうな。だがな、それは一回しかチャンスがない。そして、このチャンスを逃すと一回しか使えないし、こっちの切り札を見せるだけで逆にフェリを危険な所に晒すだけになるかもしれない。」
「な、なるほどです。納得しました。」
そう。この方法の難点は一発一撃、確実にこの方法で仕留めなければならないというところである。そして、この方法が万が一にでも失敗した場合は私という手段は使えなくなるし。相手側にこれ以上の手はないと思わされてしまう可能性だってある。そうすれば、ヴァイゼ様との婚約話だって強引に進められる可能性だってある。もし、それでヴァイゼ様と今の第三王女の子供が生まれたら、王宮の後継問題になる。隣国がこっちの政界に力を及ばしたいなら、これ以上のないチャンスになる。…ヴァイゼ様がそこら辺の問題が感知できない程間抜けではないから何とかするかもしれないけど。だがそれは同時に隣国の圧に常に耐えねばらないことになる。
「私のこともそうですが、一番はヴァイゼ様です。その方法が失敗したら、貴方に一番皺寄せが来ます。」
「何?心配してくれてるの?」
「当たり前です。貴方は私の大切な主人ですから。」
「!…そ、そうか。」
ヴァイゼ様が思っ切り、私とは反対側に顔を向ける、彼なら笑顔でありがとうとサラリと流すかと思えば、真正面から言われた所為か、照れたようである。こういう反応されてしまうと、こっちも照れるんだが。
「フェリー、偶にすげぇ男前だよな。」
「何よ、男勝りって言いたい訳?」
「違えよ。かっこいいって褒めてんの。」
私達の様子を見てたルイは苦笑しながら呟いた。「帰るわ。何となくお前達の関係性も見えて来たしな。」と言いながら立ち上がった。その顔が全部わかった的な顔をしているのが妙にムカついたが…心中にとどめた。
「何?もう、帰るの?」
「あぁ、今の話で大体わかったし。もう一回、外交課で話を纏めてくる。明日も来ていいか?」
「えぇ、勿論。ヴァイゼ様。少し送ってきますね。」
「あぁ」
何となく心ここに在らずのような返事に首を傾げながら、ルイのより少し先を歩いてドアを開ける。
「…お前って罪な女だよな。」
「何よ、急に。」
ドアを開け、少し歩くとルイはふと呟いた。
「イヤ、学生時代からわかってたけどな。」
「だから、何よ。」
「妙なところが鈍感なんだよな。」
「鈍感って、あぁヴァイゼ様とのこと?だから、口説きは挨拶みたいなものよ。それに生粋の女好きよ。」
「生粋の女好きでも恋くらいするじゃないか。」
「まぁ、するかもしれないけど…」
それがどう繋がって、私が罪な女になるのかわからなかった。私の様子を見て、私が理解していないことをルイは察したのだろう。はは、と笑いながら「当人同士の方がわからないってこともあるよな」と言った。
「あの方は恋をするのが上手くなり過ぎたんだ。」
「…上手くなり過ぎた?」
「あぁ、俺から言われるなんて大きなお世話だと思うがな。きっとしっかり恋愛してこなかったんだ。」
「そりゃ、ほぼ毎日遊び呆けているもの。」
部屋のドア越しで女の人の喘ぎ声を聞こえてこなかった日なんてほぼない。しかも、毎日違う人だし。そんな人間がしっかり恋愛なんてして来たとは思えなかった。そんな意味で彼の言葉を返すと、少し苦笑いを溢した。
「恋って楽しいだけじゃない。俺だって、ソフィにむかつくことも逆にあっちが俺にむかつくこともあって、喧嘩して、それでも仲直りして一緒にいる。」
「何、惚気話?」
「まぁ、それもあるけど。ソフィが俺に向かって微笑んでくれると嬉しいんだ。好きっていうだけじゃなくて、何というかずっと一緒にいるというか、隣にいるのが当たり前になっているというか。」
「好きってことじゃん?」
「そうじゃねぇよ。好きって言葉じゃなくて、ただ世の中で表せる言葉が愛してるってしかないだけで。」
本当世の中っていうのは不都合な事ばかりだ。愛しているっていう言葉以上の愛す言葉がねぇんだからと彼は呟いた。それは日頃から思っていることなのか、心底困ったということがわかる程のトーンだった。
「ロマンチストね、ルイって。」
「五月蝿ぇ、悪いか?」
「いいや、全然。」
夕陽が私達の歩いている廊下を照らしていく。夕陽の光も伴って、ルイの顔は紅く染まっていた。ふふ、この顔ソフィに見せてあげたいなと思いながら歩く。
「私の大親友はどうやら見る目があるようね。」
「そうか?そうだといいんだが。」
「あら?王宮で定評のある私の目さえも疑うつもり?」
「はは、そうか。」
「そうよ。貴方達は私の自慢の親友たちなんだから。」
「そりゃ、嬉しいね。」
「ルイ」
別れ際、彼を呼び止めた。少し先を歩いていたルイはこちらを軽く振り返る。
「ソフィを幸せにしてあげるのよ。泣かせたら、私があんたの事殴りに行ってやるから。」
「父直伝でか。」
「そうよ。覚悟しなさい。」
「それは肝に命じないとな。」
「あと、言うの早いけど。結婚おめでとう。」
結婚式、絶対参加するからと言うとルイは少し驚いた目をしてあぁと頷いた。
大変、遅延しててすいません。
いやぁ、社会人はつらい。(泣
私もフェリーたちと一緒に仕事頑張ります。
もちろん、小説も。




