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倹約令嬢、怠け者王子に見合いを提案する。  作者: 千神
第1章 王宮編
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第十話 梅に鶯


ルイの仲の良い発言に思わず、2人とも固まった。最初に動き出したのはヴァイゼ様だった。


「君いい目をしている。」

「節穴の間違いでは?」

「相変わらず容赦無いな。…でも、ほらフェリーの毒舌って仲良くなってる証みたいなものじゃん。」

「へぇ、その話もっと詳しく聞きたっ!」

「とにかく話の本筋を元に戻しましょう。()()()()()()話は置いといて。ルイ、貴方も例の件をなるべく早く私達に話したいから来たんでしょ。」

「あぁ…」


私がヴァイゼ様の耳を軽く引っ張るところを見たルイは呆然とするとように頷いた。そして、ぼそりと「王子にも容赦無さすぎるだろう」と呟いていた。ギロリと軽く睨むと「いや、そうだな話しないとな、はは」と紅茶に一口付けた。ソフィに今日のことを言うぞ、とルイへの仕返し方法を考えていると、ドアが開く音がした。


「フェリシテ様っ!持ってきました!」

「ありがとう、アルテ。」


アルテから化粧水を受け取る。事前に用意していたコットン製のガーゼを軽く染み込ませ、「失礼します」とヴァイゼ様の首元のキスマークに当てる。


「この耳の抓りも君からの親愛だっていうなら、悪くないかもしれないな。」

「気持ち悪いことを言わないで下さい。」


抵抗の意味も込めて、彼の首元を拭いていたガーゼを少し強めに拭く。「フェリさん、少し強すぎでは?」というこの変態(ヴァイゼ様)を軽く睨むと「すいません、余計なことは言いません。」と両手を上げて言った。キスマークは消えたしもういいかと、軽く溜息を吐いてガーゼを置いた。


「…お前達のパワーバランス可笑しくね?」

「フェリはこれでいいんだ。」


ルイが私に言った言葉をヴァイゼ様が軽く返す。ね、とウインクをこっちにしてくるヴァイゼ様に渋々頷く。今となっては見る形も影もないけど。これでも秘書官就任直後は、ヴァイゼ様に対してはヴァイゼ殿下と呼び、それなりに王族と秘書官としてそれなりの距離感を持って接していた。たが、2日目にはヴァイゼ殿下の女関係の激しさが判明したり、彼自身からも「もっと気軽でいい。これからほぼ一緒にいることになるんだろうしね」と言われてから遠慮はなしとした。遠慮しているのが、馬鹿馬鹿しくなったとも言うかもしれないけど。


「まぁ、俺としてはフェリーがそれなりに楽しく仕事やってるならそれでいいんだけどな。」


ソフィも何だか心配してたからな、とルイは微笑んだ。ソフィにもルイにもよく仕事の愚痴やら何やらを聞いて貰っていたから要らぬ心配を掛けてしまっていたようである。まぁ、今日のことは水に流してソフィには言わないで於いてあげよう。私のルイへの仕返しが棄却されると同時に「あのさ」とヴァイゼ様から声が掛かる。その声がいつものようなどこか陽気な感じではなくどことなく冷気を持たせた声に驚いて彼の方を見る。


「…話するんでしょ?フェリはこっち座って」

「そ、そうですね」


ルイも何となくヴァイゼ様の雰囲気が変わったのがわかったのか、戸惑うように頷く。私も「はい」と少し戸惑いながらヴァイゼ様の横に腰を落ち着かせる。ルイからは俺何かした?という視線を送られてきたが、私もわからないと軽く左右に首に振った。


「で、話っていうのは?」

「はい。フェリーには軽く話したですが、ナラジアの件です。ナラジアが今回怪しい動きを_」


ルイの話はこうだ。


100年前の戦争終了後、私たちの国とナラジアはナチア領土を見返りに和平を結んだ。その後、そのナチアでは度々小競り合いが起きていたたものの、表面上は仲良くはしていた。だが、最近はその小競り合いが非常に活発化しており重傷者も昨年に比べて、約3倍増加している。この数値に危機感を持った王宮外交課が国際関係管理部を中心に調査することになった。調査していく中で大変なことがわかってきた。ナラジアが遠い国であるフェミからグリコを、ラマという国からはショウという材料を輸入しているそうだ。その他にも食糧なども集めている動きもあるようだ。小競り合いでの怪我人の増加、食糧の収集の動き、2カ国からの材料の輸入。…まさか。


「ねぇ、ナラジアって…リュウが発掘できたわよね?」

「あぁ」


ルイが頷く。グリコ、ショウ、リュウが集まって出来るものなんて…ひとつしかない。


超炎火大魔法(ダイナマイト)しか。


「あれは!禁術よ!」

「わかってる、俺たちだって。ただ、材料を集めてるだけでは何とも言えない。実際に魔法陣を書かずに火薬玉として使うことだってある。今、俺たちが北部開発がやっているようにな。」


ダイナマイトとは、魔術工学系統の一つ。100年前に1人の稀代天才魔術師によって生み出されたものである。まだ大陸横断対戦の真っ只中に戦闘用魔道具として編み出されたものであり、それはその後の戦況を大きく変えていった。その魔法道具のお陰で私達の国は勝利を納めたのだけど…戦争の終戦後、それは発案者の強い希望によって手法は全て廃棄された。ただ、魔法陣自体は廃棄したものの、魔法陣を書く前の材料を集めて魔法陣なし版ダイナマイトとして生まれたのが火薬玉である。火薬玉はダイナマイトに比べると、威力は50分の1だがそれでも、土地を削る威力はあり、土地開発の際に用られる。


「あれはしっかりと()()()()()()行なったことよ。ナラジアと場合が違う。」

「百の承知だ。だが、小国とは言え国を訴えるというのはしっかりとした確証が必要なんだ。」

「それはそうでしょうけど…」


ダイナマイトはその威力から、魔法工学の最高傑作とまで呼ばれている。また、魔法陣がない火薬玉の場合でも、土地を削るほどの威力を持っている。その危険性の高さから、世界火薬類取締連盟に申請書を出す必要性がある。申請書は主に使用用途と使用時の際に爆弾処理責任者を伴うことが条件である。因みに、ヴァイゼ様と私自身もその資格を取得している。なぜそのような資格を取ることになったのかなどの細かい話については割愛させていただく。まぁ、一言で言うなら今私の隣に座っている男に掌で転がされたのだ。全くだ、ふん。


「ナラジアが不穏な動きをしているのはわかった。ただいくら軍部絡みと言えど、何故俺に話が来た?」

「それが…これです。」


ルイは私達の前にほんの数日前に出た新聞を見せた。新聞の一部はそこで生きているように動く。カメラというのが発明されてから、そのような一時的な瞬間だけだが動きを捉えて取れるようになったのだ。その動いている画面には満面な笑みのヴァイゼ様の顔があった。

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