桃色ビオラと黄色のパンジー
僕が「本屋に行くことにしたよ」と言うと、小晴ちゃんは「待ってて」と言って、園芸部の部室横にある小さなビニールハウスへと走り、そこから花の入ったポッドを持ってきた。
「はい、これ。きんちゃんにあげるね。・・・・・・大事に、育ててみて」
「これ、小さめだからビオラだな。へぇ、こんな色もあるのか。いろんな色があるんだな」
「品種が多いからね。もともと、パンジーもビオラも和名は、『三色スミレ』っていうんだよ」
「さんしきすみれ、ねぇ」
「わたし・・・・・・きんちゃんには、ピンクのビオラと黄色のパンジーを、大切にしてほしくてさ」
「そぉかー。今日も花をもらえるとは思ってなかった。これ、誕生日プレゼントってやつかい?」
「うん。まぁね。・・・・・・本、見つかるといいね。誕生花も、花言葉も、見てみるといいかも」
「あったら、立ち読みしてくるつもりなんだ。ただ、こんな僕が、花の本なんてなぁ・・・・・・」
「あはは。気にしなくても大丈夫だよぉ。気をつけて行ってきてね。横断歩道は手を挙げてね」
「僕は幼稚園児か。まったくー。手を挙げなくても、体型で気付いて車は勝手に停まるわい」
「あはは。ごめんごめん。じゃ・・・・・・またね、きんちゃん」
「ああ、またね」
小晴ちゃんにもらった新たな花。ただ、これを持ったまま本屋に行くのもどうなのか。
そんなわけで僕は、この花を一旦家に置いてから本屋へ向かうことにした。
小さなビオラと大きなパンジーが今、家の玄関脇に置かれている。
色合いのせいもあるのか、ビオラは隣のパンジーと並ぶと、なんだか遠近感が狂って見える。
パンジーがやたらと大きく見えるのだ。それをひっそりと、ビオラが支えているようにも見えるな。