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サンシキスミレ  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
5/8

夫婦の日

 明日は節分。その前日、二月二日は「夫婦の日」だそうだ。いや、違うだろ。僕の誕生日だよ。

 ちなみに十一月二十二日は「いい夫婦の日」だって。朝、テレビで女子アナがそう言っていた。


 今月から三年生は特別日課となり、月末の卒業式予行までほぼ休みになった。進路が決まってない人は大変だけど、僕はもう地元の青果店に内定している。ほとんど学校に行かなくていいのだ。

 小晴ちゃんは、千葉の大学に内定が決まったようだ。猛勉強して、難関である国立大学の園芸学科に受かったそうだ。

 こんな群馬の山間から千葉に出るんじゃ、距離も遠いし、独り暮らしだろうな。いろいろと大変なことも多いだろうな。一人娘だから、親父さんが寂しがりそうだ。

 そして今日もまた、小晴ちゃんはあの花壇のところで花を愛でている。

 僕もあの花は覚えたよ、ビオラだ。以前もらったやつはパンジーで、植わってるのはビオラ。違いは花の大きさだったな。


「あれ、きんちゃん。今日は学校に用事?」

「え。あ、ああ、そうだね。ちょっと、図書室に・・・・・・」

「珍しいね、きんちゃんが図書室に行くのは。お相撲の本でも探しに?」

「うーん、違うな」

「じゃあ、おにぎりとか、ハンバーグの本? それとも、ちゃんこ鍋とか? あ、肉まんかぁ!」

「あのなぁ小晴ちゃん。僕のお腹を見て、適当に言うのはやめてくれ。わかってるんだろぉ?」

「あはは。ごめんごめんー。・・・・・・見つかるといいね、きんちゃんが探してる本。あるかなぁ?」

「そうだね。無かったら、本屋に行ってみる」

「わかったー。・・・・・・あ、きんちゃん。探し終わったら、帰りにまた、ここ寄って?」

「え、いいけど。なんだい? ま、いいか。じゃあ、帰りに寄るわ」


 それから僕は二階にある図書室でお目当ての本を探したが、見つからなかった。

 仕方ないので諦めて、本屋に行ってみることにした。『誕生日ケーキ作りの本』は棚にあったのだが。


 図書室に入ってから出てくるまで一時間くらい経っていたが、正門の所へ戻ってきた時、小晴ちゃんはゴム手袋をして、学校ジャージ姿でまだ花壇をいじっていた。

 本当に、花が好きなんだな。


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