表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンシキスミレ  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
2/8

元気だしなね

 学校の正門横には小さな花壇がある。いつもは用務員さんが管理している場所だ。

 いつも、そこにしゃがんで花を愛でてる女子がいる。幼馴染みの春日井(かすがい)小晴(こはる)

 僕と彼女は保育園からずっと同じクラス。小学校、中学校、そしてこの高校でも、十二年間ずっと同じクラス。

 クラスが一つしかないわけじゃないのだが。何気にすごい確率かもしれない。


「おつかれ、きんちゃん。もう帰るの? ・・・・・・。ねぇ・・・・・・また、フラれちゃったんだって?」

「・・・・・・まぁね」

「いいところ、いっぱいあるのにね、きんちゃんは。・・・・・・元気だしなね?」

「僕にそう言ってくれるのは、小晴ちゃんしかいないよ」

「そうなの? そんなことないと思うけどなぁ」


 小晴ちゃんは園芸部の部長だった。

 部活を引退した後でも、こうしてボランティアで学校の花壇に咲く花の面倒を見ている。小さい頃から花が好きな子なんだ。

 同じ農業科だけど、僕と違って勉強はできる。普通科のトップレベルと比べても遜色なく、偏差値は七十近いほど。すごいよね。


「小晴ちゃんも、好きだねぇ。園芸部引退しても、ずっと毎日花壇をいじってるもんな」

「うん、好き。きんちゃんも園芸部に入ってくれればよかったのになー。お花に詳しくなるよ」

「僕は、花の種類なんてよくわからんのだ。カリフラワーなら、食べられるから知ってるけどさ」

「だめだよぉ、食べるなんて。ここに咲いてる花は、観賞用だからねっ?」

「冗談だよ、冗談。花を食べても、お腹いっぱいにならなそうだし」


 小晴ちゃんは僕に「きんちゃんにもこれあげる」と、花の入ったポッドを差し出した。


「なんだい、これ? そこに植わって咲いてる花と、同じだな」

「同じじゃないよ。植えてあるのはビオラで、それはパンジー。きんちゃんには黄色を選んだよ」

「見た目、変わらないけどな? 同じにしか、見えんー」

「変わるよぉ。花の大きさが、だいたい五センチ以上なら、パンジーなの」

「じゃあ、四.九九九九センチの花は、パンジーってやつにならない?」

「え? うーん。まぁ、『だいたい』だから、それはパンジーでもいいかなー」

「いいのか、そんなんで? あと僕、花の育て方知らないし、枯らしちゃうぞ、きっと」

「大丈夫。わたしが教えてあげるから」


 小晴ちゃんは優しい。

 派手さもなく、極めて美人って程でもないと思うが、標準的に整ったきれいな顔で、のんびりした自然な感じの女の子。田舎によくいる可愛さを持つ感じの子、かな。

 僕が何かで失敗すると、いつも小晴ちゃんは「元気だしなね」と慰めてくれる。

 試合で負けて泥だらけの時も、赤点とって追試の時も、女子に告ってフラれた時も、いつも「元気だしなね」って言ってくれる。幼馴染みってやつは、気を遣わなくて良いから、なんかいい。


 花壇のビオラが、僕と小晴ちゃんを見上げてる気がする。

 なんだかこの花、模様が顔みたいだ。

 笑ってるような、睨んでるような、不思議な花だな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 園芸女子!! あたらしい!!! [一言] 「極めて美人って程でもないと思うが」って、なんだかすげー偉そうだなwwww デブなおまえが言うか、と爆笑wwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ