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黒星きんちゃん
フラれた。無理だとわかっていた。
でもやっぱり、ショックだ。「あなたが私と釣り合うとでも思ってんの?」と、そう言われた。
告白した相手はこの大逸見高校ナンバーワン、いや、もしかするとこの群馬県トップレベルの才色兼備な女の子だった。
僕は悟っていた。初めから、宝くじで一等当てるのと変わらぬ確率だったんだろう、と。
これで、人生においてにフラれた人数はざっと二十人。今や僕は、「黒星きんちゃん」と呼ばれている。
田丸きん平。群馬県立大逸見高校三年一組、農業科。
勉強、スポーツ共にダメ。特技はニコニコ笑うこと。体重はちょうど百キロ。髪はいつでも、坊主ヘアー。そんな僕だ。
小学校からずっと相撲を続けて、今年で十年。
でも、これまで大した実績も無い。大会では一度も勝ったことがない。負けるのだけは慣れている。白星ゼロのまま、高校の部活も引退した。
今日もまた、僕はどすどす音を立て、輝く星を見上げて帰る。
黒い星って空には無いんだよな。