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砂漠の薔薇  作者: 望月満
act 1 春の宵、桜の都
8/110

scene 7

 双方とも、しばし沈黙を破ろうとしなかった。

 ユーフェミアは、桃色の(あで)やかな唇をうっすらほころばせてシャノンを見つめ、シャノンは視線を薄い緑の畳に落としている。

 シャノンを見つめるユーフェミアの笑みは、どこか作り物めいた口元だけの笑みだった。煌めく蜜色の瞳は真剣そのものの眼差しで、シャノンを見据える。一方のシャノンは顔に影を落としているため、表情を読み取ることができない。

「――ボクは」

 重く、陰鬱(いんうつ)な沈黙を最初に破ったのは、顔を伏せたままのシャノンだった。シャノンはひどく緩慢(かんまん)な動きで顔を上げ、神妙なユーフェミアの瞳をまっすぐ見つめる。

「ボクは、ずっとずっと(だま)されてきた。家族に裏切られ、実験をされ、あげくに世界征服をもくろむ〝ほら吹きジジイ〟に、利用されそうになった。……だから〝素直〟とか〝真実〟とかボクにとっては綺麗事でしかないんだ。世の中は〝偽善〟と〝虚構〟で溢れ返っているしな」

 後半は吐き捨てるように言葉を発したシャノンはそっと瞳を閉じ、自分を抱き込むように両腕を身体の前で交差させた。自分を抱くシャノンの手には、強い力がこもっていた。その肩は、微かに震えている。

 再び、二人の間に沈黙という名の重圧が降り注ぐ。

 沈黙の中、ふいにシャノンがゆっくりと蝶が羽を広げるように瞼を開けた。長くカールしたまつ毛の隙間から、紺碧の瞳がのぞく。同時に、するりと腕も身体から解いた。

 沈黙を破ったのは、先ほどとは変わってユーフェミアだった。

「そうですか……。もうこれ以上話すことがイヤであれば、そのまま口をつぐんでください。私も、これ以上は詳しく問い(ただ)さないことにしますので」

 口を閉じたままのシャノンに、ユーフェミアは柔らかな声音でそっと語りかけた。

「うん。それでも……」

「それでも……?」

 ――逃げて。生き延びて……。

  たとえ、すべての希望が消えたとしても……。

  私はずっと、貴方の味方だから。

 シャノンの頭の中に、そんな言葉を呟く小鳥のさえずりを思わせる綺麗な声が、鮮やかに反響する。

「それでもたった一人だけ、いつだってボクに真実を言ってくれた心優しい人がいた……」

 言葉が過去形であることにユーフェミアは気付いたが、うっすらと微笑んだだけでそれについては何も言わなかった。その微笑みは、憂いを垣間見ることのできるものだった。

「一人だけ、ですか。では、今日からは二人になりますね」

「……は?」

 シャノンは眉根をきゅっと寄せ、ユーフェミアを見て小さく首をかしげた。短い栗毛が肩の上で揺らぐ。

「分かりませんか? とても単純なことです。今日から、貴女に真実を言う人が一人増えるということですよ。つまり、いつでも真実を貴女に告げる人の中に、私が仲間入りするということです。……あ、いえ、間違えました。きっと彩乃と白胡も私と同じだと思いますから、全部で三人と一体になりますね」

 ユーフェミアは作り物めいた部分の一切ない、心からの笑みを浮かべた。

 ユーフェミアの偽りの欠片もない、正真正銘本物の優しさ溢れる笑みと言葉に、シャノンは泣き出しそうに顔を大きく歪めた。涙を見られたくないのか、表情を隠すように下を向く。

「もしかして、うれし泣きですか?」

 おどけたようなユーフェミアの口調に、シャノンは俯いたままプッと吹いた。

「ちげーよ。ボクが泣くワケないだろ。バッカじゃない?」

 半泣き、半笑いの顔を上げたシャノンは、全く棘のない声音と口調で言った。

 その顔は少し涙で濡れていたが、とても素敵な笑みを浮かべていた。





昨日は投稿できず、申し訳なかったです。

音楽のほうをダウンロードしていまして、それだけで一時間が潰れてしまいました。

ちなみにボカロの曲をとりました★

鏡音リン&レン兄弟は最高ですね!!

ちなみに私は40㍍PとアゴアニキPと暴走Pが好きです☆

あとは「雷鳴アンプリファ」と「極楽鳥」に最近ははまってます!

「方向音痴」は反則級の超良い恋愛歌詞だと思います!!

ア、あとがきにふさわしくない全く別の話をしてしまって申し訳ないデス……。

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