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砂漠の薔薇  作者: 望月満
act 1 春の宵、桜の都
48/110

scene 47

 女性とすれ違って少し経った後、小さな風が巻き起こる。風は力なく、しかし確かにフードとそこからはみ出ている茶髪を揺らす。ボクは俯いたまま、フードを抑えて速足で路地を歩く。

 もう人とすれ違うことはなかろうと、ボクは余裕をかましてフードから手を離す。そのまま足を前へと変わりなく運び続け、

「――(あぶ)ッ」

 意外にも前方から人が歩いてきた。長身で、体つきはスリムだけど胸はあるから性別は多分(・・)女だろう。というのも、その人物は顔から肩にかけてを布で覆っていたのだ。そのため、顔がはっきりと見えないから〝多分〟なんだ。年齢も良く分からない。女性は、体格だけじゃ年齢をイマイチ判断できないからな。布の隙間からは、色白の肌が少しだけのぞいている。軽く巻きつけられた布の端は、肩で頼りなげに揺れていた。

「――」

 ボクはできるだけ自然に手をフードへ再度持っていき、さきほどと同じようにふっとすれ違う。相手は特にボクを気にしていないようだった。というか、ボクなんか道に転がっている小石と同じようなもので、全く眼中にないみたいだった。

 先ほどと同じく、すれ違った少し後で小さな風が起きる。風はフードを申し訳程度に揺らし、風は――

爽やかな、花の香りを運んだ。

「!」

 ボクはその香りに、一瞬で前進を止めた。風が運んだ、かすかな香り。

それは――彼女の香り。

 ボクは気付かぬ間に双眸を見開き、反射的に先ほどの人物が歩いて行った後方を振り返った。

 彼女の香りを発した人物は、やはりボクのことなど全く気に止めずに歩いている。その歩調はとても速く、最初にボクとすれ違った女性に追いつきそうになっていた。

「あっ――」

 ボクは口を開いたが、彼女を何と呼びとめたらいいか分からなかった。〝彼女〟と呼ぶのはおかしい。かといって、〝君〟も変だし。

 ボクの口は何と言って良いのか分からないまま、「あ」の形で固まる。が、次の瞬間、

「――え?」

 丸い形をしていた口は、横長の丸い形に変化した。

 見開かれたままの、ボクの目。その目が捉えたのは、信じられない光景だった。

 彼女の香りを発する人物の身体が、女性より前へ進む。と、ここまでは何もおかしいところなんてない。けど、

すれ違いざまに、彼女の香りを発する人物が女性の腕に下げられている籠を、ひったくったのだ。

「え――? えぇ――」「ぎゃあぁぁぁ! ひったくりー! ちょっと、待ちなさぁぁい!」

 ボクの叫び声は、ボクの声より大きい女性の甲高い悲鳴にかき消された。籠を奪った人物は、そのままダッシュで逃げだす。

「待ちなさぁぁぁぁあぁぁぁあぁい!」

 貴婦人、本気(マジ)モード。

 女性は上品に広がるスカートをはいて髪も綺麗にセットしているというのに、その髪を振り乱し、スカートの裾が大きく広がって大根のような太腿(ふともも)がのぞくのもお構いなしに、下品極まりなく走り出す。が、籠をひったくった人物に女性が追いつくはずがないことは、火を見るよりも明らかだ。

「……って。ひったくりを見逃せるかってーの!」

 ボクはしばらく呆然と事を見つめていたが、頭の中を冷静にした後地面をけり、低い体勢で走り出す。正面からぶつかってくる風に、フードは無論煽られはずされる。そこは強風直撃だから仕方がない。し、今はンなもの気にしてる場合じゃねぇ。

 ボクはあっという間にゼーゼーと言って腹の肉を揺らしている女性を追い越した。

 籠を持っている人物までの距離は、十メートル弱。

「てっ!」

 ボクは軽やかに渾身の力を込めた足で地を蹴り、自分の左側にそびえているレンガ造りの家の壁へと移る。身体を斜めにした状態でそのまま壁を蹴り、ひらりと身体を舞わせながら籠を持つ人物の前へと降り立った。つもりだったのに、

「んなぁっ!?」

 ボクが地面に降り立つよりも早く、その人物は右わきに伸びているさらに狭い路地へと入って行った。

 ボクはよくありがちな突っ伏すように身体をずべっと地面に倒すあれをしそうになったが、かろうじてそんなマヌケなことはしなかった。足を曲げて衝撃を和らげながら着地し、苦々しく右へと延びる路地を見つめる。

「くっそー。ヒカリたちよ! あの人物を追い、その手に持っている籠の取っ手を切り落としなさい!」








いいね♪ ハガレン。

25巻、発売日そうそう買ったよ~い♪

ハガレン万歳! 荒川さん最高!

いつかハガレンや黒執事みたく高度なストーリーの話が書きたいと夢見る女子コーセーDEATH(笑)☆

あ。キョーミないですか。そうですか…。はしゃぎすぎました。失礼しましたorz

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