scene 15
* * *
橙色の炎が揺らめく。
彩乃の部屋は電気がなく、明りは蝋燭の炎のみ。部屋はこげ茶色の板張りの床で、広さは約十二畳ほど。中心に大きな木のテーブルがあり、その上と部屋の四隅と彩乃の横たわる布団の枕元に燭台がおかれ、蝋燭が夕焼け色の炎を放っていた。光は優しく、枕元に正座をしているユーフェミアと白胡、あぐらをかいているシャノンの姿を照らし、それぞれの顔に陰影をつける。
「……で、ユーフェミア。この、彩乃の病気は何だ? 眼の色が変わる病気なんて、聞いたことねぇぞ」
「そうですか。……私にも、この病の詳しいことは分かりません。けれど、病の進行のサインとして、こうして片目が血を流して赤くなることと、この病にかかった者が――〝呪われし瞳の子〟と呼ばれることなどを、私は知っています」
「呪われし、瞳の子……」
シャノンの背筋に、ぞっと悪寒が走った。その病気がどんなものか分からないというのに、その名を聞くだけで嫌悪感が身体を駆け巡り、胃から食べ物を迫り上がらせる。
シャノンはこくりと喉を上下させて、唾を呑み下した。ユーフェミアは悲哀におぼれているかのような、苦しげで寂しげな顔をしている。
「えぇ。呪われし瞳の子には、その名の通り子供しかなりはしません。しかも、発病するのは十代以下のときです」
「そんなに長い期間、彩乃は――。うん? でも、待て。子供しかならないって言うけど、その病気にかかった子供が、大人になったら……?」
シャノンの尤もらしい問いに、ゆるゆると力なくユーフェミアは首を横に振った。
「呪われし瞳の子は、大人になるまでは――厳密に言うと二十歳になるまでは、生きられないのです……」
「っ……」
シャノンは無意識のうちに自分が眼を大きく瞠り、口を小さく開いて息をのんでいたことに気がつかなかった。胸の皮膚を突き破らんばかりに心臓は激しく脈打ち、シャノンの耳に鼓動が反響する。シャノンは喘ぐような苦しげな息を繰り返し、ユーフェミアが心配げに声をかけるほどだった。
「えっ。あ。だ、だけどっ……。今、彩乃の歳は……」
「――はい。彩乃は現在……十八歳です。今年の夏で、十九歳になってしまうのです……」
「そんなっ……。じゃあ、彩乃はもう……いつ死んでも、おかしくないってことか……?」
シャノンは手を震わせ、恐怖に冷や汗を流しながら訴えた。ユーフェミアはまつ毛を伏せて木の床を見つめ、こくりと弱々しく頷いた。その肩と唇は震え、俯いているため表情は分からない。
ユーフェミアは視線を上げぬまま、小さく息を吸い込んだ。
「呪われし瞳の子の体内には、一匹の虫が棲んでいるそうです。その虫は長い年月を経て、宿主の身体を喰いつくし、最後には宿主の身体の自由をも、奪ってしまうのです。そうなってしまった子供は、寄生虫に身体を奪われ、己の意思で動くことが不可能になってしまいます」
「――それで、その寄生虫は、宿主を、殺す、のか?」
シャノンの悲痛げな問いに、ユーフェミアは重たげに首を振る。
「いいえ。まだ、殺しはしません」
シャノンはユーフェミアの返答に眉をひそめた。
「じゃあ……。一体、何を……?」
「寄生虫は、狂っているとしか思えない行動を、宿主にさせるのです。その中で、一番多いのは――殺人、です」
シャノンは再度息をのむ。眩暈を起こしそうなほど激しい動悸を抑えようと、短く空気を吸っては吐いてを繰り返した。
「寄生虫はしばらく宿主を操った後……宿主の片目から……孵化するの、です……」
シャノンの口の中に、すっぱい液が胃から迫り上がってきた。その液を吐き出したい気持ちを抑え、シャノンは静かにその液体を嚥下する。
ユーフェミアは消え入りそうなほど小さな声で、しかしはっきりと続ける。
「呪われし瞳の子が死ぬ間際は、眼を向けていられないほど、悲惨だと聞きました。血走った眼を見開き、腕や額から血管が浮き出し、訳の分からぬことを叫び続け、片目を掻きむしりながら、死んでいくそうです。そして、眼から孵った寄生虫は、宿主の赤くなる前の瞳の色と同じ色の、目を瞠るほど美しい羽をもつ、〝蝶〟だそうです」
さてさて。シリアスな雰囲気ぶっ壊して、ここで私の中のキャラクターの声のイメージを声優さんに当てはめたいと思います。
シャノン…沢城みゆきサン(超大好きな声優さんです!! 第四回声優アワード主演女優賞受賞おめでとうございますっ!! CANAANと化物語をみて沢城さんに魅了されましたっっ!!)
ユーフェミア…能登麻美子サン(私が初めて好きななった女性の声優さんです☆ キノの旅のティーの声は、メチャぴったりです!)
彩乃…水樹奈々サン(歌も、声も大好きです!! ハガレンのランファンの声は良すぎですww)
白胡…竹達彩奈サン(けいおんのあずにゃんが可愛すぎました!!)