人外魔境
早良さんが出してくれたオヤツを貪り食ってるガチャミを、ガン見してる爺ちゃんの職業を見せてもらったよ。
いや、もうヤバかったと言っておく。
爺ちゃんは人外になってたよ。
変更したら駄目なヤツを一部抜粋したよ。
リヴァイアサン 不死の王 死神
堕天使ルシファー ヘカトンケイル
まぁ、ほとんどがモンスターだよね。
ヤバい理由は精神が殺伐とするとか、身体が凄く大きくなるとかアンデッドになるとか、厄災を振り撒くとかだってさ。
でも基本的に上級探索者に出る職業が殆どだから、ステータスが高い場合は1~2日くらいなら、すぐに影響はないってさ。
お勧め職業の一部も聞いたよ。
刀神 帝釈天 黒龍王 竜殺し
魔獣殺し 地蔵菩薩 迷宮の覇王
ホントに大丈夫なのかと思ったけど、理由は身体能力やスキルが高い、特化したスキルや効果がある、特に爺ちゃんは精神力が高いから、デメリットがないってさ。
精神力が低いとデメリットがあるの?
職業に性格が引っ張られる人がいる?
ゴブリンやオークなら精力的になっちゃうみたいな感じ?
えぇ、まさかテンプレの薄い本展開?
まぁ、爺ちゃんは変更する気はないから、師範のままだよ。
称号は【迷宮の覇王】で、条件は言えない、職業に迷宮の覇王が出る。
父さんのも見たかったけど、ダンジョンに到着したのでお預けだ。
駐車場へ停めて、ダンジョンの受付へ行く。
ガチャミは姿を消している状態で、父さんの肩に座っている。
叩き落とそうかと思ったけど、父さんは構わないって言うから見逃してやるよ。
ここはギルドが併設されてないから、出張所になっている。
受付とドロップの買取り査定をするだけの場所だよ。
後はロッカールームと更衣室があり、ここで装備に着替える。
ランクEだし重装備で来る人もいないから、着替えたのはノリノリだけだ。
拠点にしてるダンジョンなら、貸しロッカーに装備を保管して手ぶらで来るパーティーもいるよ。
刀とか下げてたら銃刀法違反になる。
だから、ちゃんと鍵付きのケースに入れて持ち運ぶ。
アイテムボックスが人気な理由は、このためだ。
まだF級は正式な探索者じゃないから、本物の武器は持ち歩けない。
ギルドの貸し出し武器を借りるか、探索者が同行して持ってもらうかだね。
俺の装備は腰に下げてる木刀だよ。
ここのモンスターなら木刀で充分だって、爺ちゃんが言うから。
確かにトレントの木刀なら過剰なくらいかも…
ノリノリはサブマスにメイスを渡されてる。
ノリノリなら撲殺も似合うよ。
「ちょっと今、失礼な事を考えてなかった?」
「いや別に?」
ジーッとメイスの先に付いてるトゲトゲを見ながら答える。
「これはパパが、このダンジョンならメイスが効果的って言うから!」
「俺は何も言ってナイヨ」
「ほら、ヒノリちゃんも、じゃれてないで前に進んで」
「じゃれてません!」
俺は肩をすくめるだけにしておく。
アメリカンなやれやれスタイルだよ。
先に到着してたサブマスが手続きを終えてたから、カードを翳すだけで入れた。
入るのは父さん、サブマス、ヒノリ、早良さん、俺、爺ちゃんの順だ。
ギルドのダンジョンとランクは同じだけど、洞窟じゃなくて廃坑みたいに、木枠やランプのフックがあって、所々にランプが吊り下げられて明かりになっている。
ダンジョンオブジェクトと呼ばれる、非破壊物だね。
取り外しも出来ない不思議仕様だ。
ランプがなくて暗い場所もあるため、自前の照明を用意しておく。
俺も今日はちゃんと用意してきたから、ベルトに下げてるよ。
3cmくらいの伸縮式のキーホルダーみたいなんだけど、魔石電池で明るさ調整付きなのに安価だよ。
あまり明るくすると、遠くのモンスターに見つかるから、ランプと同じくらいに調整する。
「キキキ」
第1モンスターの声だ。
俺の位置からは見えないが、父さんが何かしたみたい。
「キギッ」
モンスターの悲鳴がして、何事もなかったように進む。
さっきのモンスターは、モグラ型のビッグモールだ。
このダンジョンの1階は、ビッグモールとスライムが出るんだけど、ドロップのほとんどが魔石とスライムの欠片で、レアドロがビッグモールの爪だ。
ランクEの魔石は一律300円だ。
ビッグモールの爪は需要がなくて、買取り0円なんで意味がない。
コアなコレクターが取りに来るくらいだよ。
スライムの欠片はスライムパウダーの元になるから売れるけど、ある企業がスライムの養殖に成功してから価格が下がって、1個100円だから不人気ダンジョンなんだよね。
不意に早良さんがフッと息をつく。
あら?お知らせでDチケット[F]が出たよ。
名も知らぬ第2モンスターよサラバだ。
後は第3モンスターにスライムが出て、スライムの欠片を落としたよ。