記憶喪失と衝撃の事実
「もう、その事は忘れてよ!それじゃ俺の記憶喪失って、誰かのせいなの?」
「ああ、スキルか魔道具なのか、誰にやられたかも判らないが、ダンジョンの転移水晶の前で倒れてる所を発見されて、病院で検査した時に魔力の残滓が検出されたんだよ」
父さんが悲痛な表情で答える。
「発見された時の状況で、何者かにダンジョン内へ連れ込まれて、記憶を封印された可能性までは解ったのじゃが、色々と調べたが全く手掛かりになるものがなくてのう」
爺ちゃんも辛そうに続ける。
「ビトーがそのダンジョンで死んだから関連が疑われたが、ビトーの遺体が発見された場所から、お前が一緒だったとしたら辻褄が合わないんだよ。その他に誰かが出入りした記録もなくてな」
父さんが更に苦悩の表情で続ける。
息の合った説明はいいんだけど、さっきまで俺の記憶喪失の事は忘れてたんだよね?
なんで、そんな悔しそうな表情なのさ?
「あのアホ親父には前科があったから、トキをダンジョンに連れ込んだのは、親父だと思ったんだ。でも親父が死んだ階層から、トキが1人で戻れるとは思えないからな。親父が犯人だとしても、他に協力者がいた筈なんだ」
え~どんな前科があったの?
完全に犯人呼ばわりだし。
「ああ、親父は5歳のオレにステータスを獲得させたんだよ。幼少期から鍛える方がチートが目覚める!とか訳のわからん理屈でな」
「そうそう。その頃はステータス獲得は15歳からって決まった時だったから、誤魔化すのを手伝えとか、無茶苦茶だったなアイツ。まぁ、二度としないと契約魔法まで使ったからな。朱鷺も獲得はしてなかったし、だから昨日ギルドに行っただろ?」
うえ?そんなの誤魔化せたの?
「取得時期は誤魔化せたけど、そもそも子供をダンジョンに入れる訳ないから、スキルの使用許可も出ないしな。そしたらダンジョン以外で鍛えるとか言って、山に登らされたり、海の上で突き落とされて、陸地まで泳がされたりしたよ」
何そのスパルタ式。
「コーチャンよく死ななかったね?」
「まぁ、何だかんだで、結果的にステータスの効果で身体が丈夫だったから、親父の訓練に付き合えてしまったのが、運のつきだよ。後はコッソリ某滅亡国家に入国して、そこら中にいたモンスターを倒したりダンジョンに入ってレベルアップもしたしね」
そ、そうなんだ?
それ言っちゃって大丈夫なヤツなの?
大丈夫?もうどこの国でもないから、自分のものとか言わない限り、文句を言ってくる国も法律もない?
そう言うものなの?
「それで目的はわからんが、ワシらの家族が狙われてる可能性もあるから、ギルドから警備が付けられてたんじゃよ」
「え?警備なんていたの?」
「出入りを怪しまれないように、大牟田君とか蓮のパーティーメンバーという名目で連れて来て、順番に警護しておったぞ」
な、なんだって~!
父さんのパーティーは人気だから、入って来る人が多いんだと思ってた!
「まぁ、あれから特に怪しい者もいないから、心配しなくても大丈夫だ」
「そういえば朱鷺に見つかって、警備失格になったヤツもいたな」
ん?もしかして姉ちゃんのストーカー?
「そうそう、ストーカー呼ばわりされて捕まったマヌケだよ。警護対象に怪我をさせる訳にいかないから、手を振りほどけなくて警察に連れていかれてさ。あの時は説明するのに苦労したよ。結局ギルドの力で揉み消したけど、彼は鍛え直してあげたから、今は隠密もバッチリだよ」
イケメンウインクで黒い裏話はやめて!
って、それ結構最近の話しじゃんか!?
まさか今も警備ついてるの?
思わずキョロキョロしちゃう。
「今はオレや巧乃さん達がいるから、付いてきてないよ」
それっていつも警備されてるって事じゃん。
「君達が外出する時だけだから、気にしないで。それに訓練にもなるし」
ストーカーがいるとか、気になるわ!?
さりげなく訓練にするな!
「まぁまぁ、それじゃ本題から逸れたけど、トキのスキル妖精を先に紹介しておこう」
あ~この中にガチャミを呼ぶと、更にカオスになるよ。
とりあえずガチャミを見ると、また拗ねてるポーズだよ。
そう言えば昼飯は食わせてなかったな。
『ちょっと早いけどオヤツにするかな』
『オヤツ~♪朱鷺~オヤツちょうだい~』
相変わらずオヤツへの執着が酷いな。
ご機嫌になったガチャミを呼び出す。
『その前に、爺ちゃん達に挨拶しろ』
『え~オヤツを先に…あ、挨拶は大事だよね~!』
『プリティキュートな妖精~ガチャミだよ~よろしくね~』
そういう決めポーズじゃないと、登場出来ないルールでもあるのか?
☆で影響とか言うくらいだから、迂闊に止められないわ。
唖然と見ている爺ちゃん達に、とりあえずコレが妖精だと説明したよ。