フォロワー1人のV●ューバー
『妖精界のアイドル☆笑顔と☆元気で☆ガチャっとハジける☆☆ガチャミだよ~☆☆☆』
どこぞのアイドルみたいに、自己紹介しながら次々ポーズを変えていく芸の細かさだね。
まぁ羽も生えてるし飛んでるし、妖精は自称ではないだろう。
セリフの合間合間で☆とエフェクトが出るのが妖精の力なのだろうか?
画面で見てた時から薄々わかってたけど…実際に目の前で見ると更にウザい…
俺にドルヲタ属性はないのだ。
声がキンキンしてなくて、思ったより耳障りじゃなかったからまだマシか。
『もうご主人様ったらノリが悪いぞ☆』
いやもうお腹いっぱいです。
メイド属性もいらないよ。
「いや普通に朱鷺って呼んでくれ」
『えぇ~☆世の中の男はみんな、ご主人様って呼ばれたがるってセンパイが言ってたのに~☆』
何て事を言うセンパイだよ?!
と言うか、本当に会話出来てるし…
まさかな~と思いながら話しかけたら返事したわ。
「それは大いなる誤解だ。兎に角そういうの要らないんで、普通に喋って欲しい」
真顔で頼む。
『もう朱鷺きゅんったら照れ屋なんだから☆』
「きゅんとか付けんな」
『ひゃっ』
自分史上一番低い声が出たわ。
ガチャミがキラッとさせるのを忘れる程ビビってる。
『ぴえんTT』
わざわざ指でTを作って泣き真似するな!
ちょっと古いぞ!
そしてビビったの誤魔化せてないぞ。
ジーッと見てると、どんどんガチャミの顔色が悪くなってるが、これから先を考えると絶対妥協しないからな。
俺は心の中ではイケイケにはしゃいでるが、外に出さないタイプなんだ。
ちょっとテンション上がってても、真面目でクールな態度だと同級生に言われるくらい筋金入りだぞ。
実体化中のガチャミのノリは受け付けない方向でやらないと、思わずつっこんでしまって、お茶目な俺が世間にバレてしまう。
「よく考えてみろよ?ガチャミが見えてるのは俺しかいないんだから、言ってみれば視聴者が1人しかいないVチュー●ーみたいなもんだろ?その視聴者が嫌うキャラで良いのか?アイドルなら視聴者の要望に答えるのがプロってもんだろ」
俺が真顔でそれっぽい事を言ってみたら、ガーンと岩文字でも出そうな顔でガチャミがorzになる。
『そうね…ガチャミはアイドルだもん☆ファンの1人1人に応えなきゃアイドルじゃないよね☆私が間違ってた☆これからは朱鷺って呼ぶよ☆』
暫く見てたら、何か納得したように言ってきたけど、ここにファンは1人もいないよ。
あとキラッも要らないんで優しくオネガイしたよ。
うぐぐとアイドルらしからぬ声で呻いていたけど、ゴニョゴニョとこれは妖精のパッシブスキルだから止められないの☆とか言うから「非表示もあったな」とボソッと言ったら掌を返してきた。
さっきの"ひゃっ"と"ぴえん"にはキラッがなかったからな。
『もう、せっかくガチャミがドキドキワクワクさせようと頑張ってるのに~』
いや、全くドキドキワクワクしないから。
「八女様、そろそろ宜しいでしょうか」
あ、ガチャミのウザさに早良さん達がいたのを忘れてた。
空中に向かって喋るイタイ人になってたわ。
うわ~恥ずかしい…
ちょっとお茶目な俺は出てなかったよね?
『ガチャミと話す時は声に出さなくても、念話で大丈夫だよ~』
だから、そういう事は早く言えよ!!




