ヒーローVSダークヒーロー
「ヨーへー君の気持ちはわかった。要するに店長さんが納得してくれれば、バイトを辞めるのは構わないって事でいいよね?」
「え?あ、はい」
「なら、僕の方から店長さんに話をしておくよ」
え?
「え?」
ヨーへーと心の声が重なる。
やだ心友度が上がったせい?
なんて、巫山戯てる場合ではない。
店長さんに何をするつもりなんだ。
「ちゃんと次のバイトを紹介しておくから大丈夫だよ。コスプレ好きな知り合いがいるから」
それなら…良い…のか?
「いや、何で光成さんがヨーへーのバイト先を知ってるんだよ!」
「雅美さんに聞いたからだよ」
「雅美さんと知り合いなの!?」
「母さんと知り合いなんですか!?」
またヨーへーと…って、それより聞き捨てならないぞ。
なんと、雅美さんのパーティーと一緒に探活していた時期があったとか。
でも、それってコーチャンとしてでしょ?
尾藤光成は家庭教師のためのキャラじゃなかったの?
10年以上前だから、ビトーの息子だと雅美さんは知ってるの?
そう言えばビトーも爺ちゃんに弟子入りしてたんだから、近所の人は知ってるのか。
ん?10年以上前?
そう言えば、コーチャンて何歳なのか聞いてなかった。
子供の頃は大人の年齢なんて気にしてなかったから、コーチャンも父さんも変わらない感じに思ってたけど。
確かビトーが父さんの2個上だから生きてたら47~48歳くらいか…んん?年齢おかしくない?
えー!26歳なの!?
早良さんとかグラマスとかやってるから、30越えてるのかと思った。
イタタ…向かいの席から、涼しい顔で足を蹴らないで。
顔は二十代にしか見えないけど、落ち着き過ぎなのが悪いと思う。
コーチャンの時は大人気ないから若く見え…イタタ…本当に心は読めないんだよね?
てか15歳でC級の雅美さんとパーティー組んでたの?
父さんの紹介で?
ランクCに1人で出入りしてたら絡まれるから一緒に行ってたんだ。
ん?未成年はランクDまでしか入れないんじゃなかった?
何事にも例外があるって…また権力ですか。
違う?
レベル30を超えてる場合は未成年でもC級になれるのか。
レベル20を越えたら、ランクDのクリアは出来ると言われているからね。
これも強い探索者を育てて、ダンジョン攻略をさせる政策って事か。
そう言えばコーチャンは子供の時から、ビトーズブートキャンプで修行してたんだっけ。
そりゃあC級なんて簡単に成れるわ。
そういや初めて会ったのは俺が1~2歳頃って話だったけど、ならコーチャンは12~13歳だったって事?
ふむ。お兄ちゃんと言っててもおかしくなかったな。
いや、二十歳越えて幼児にお兄ちゃんて言わせてたのかと思ったわ。
イタタタ…ごめんなさい、どうやら心の声が漏れていたようだ。
ここまで例のイヤーカフで念話を交えて話してたので、秘密の部分はヨーへーには知られていない。
イヤーカフは隠覆術で見えなくしてる。
ヨーヘーに見られたら絶対に笑われるのが解ってるからな。
「へえ、そんな前から朱鷺の家と交流があったんですね。あれ?もしかして銀髪のお兄さんですか?」
「覚えてたかな?あの頃はヤンチャしてたから恥ずかしいな」
「やっぱり、あの人が?」
「銀髪なら僕の事だと思うよ」
「……へえ。そうなんですね。なんだよ、朱鷺も言ってくれよ」
どうしたんだヨーへー。
ハイライトが消えてるぞ?
「いや、ヨーへーが覚えているかわからなかったからさ」
光成さんがコーチャンだと言ってもいいのか判らなかったし。
「覚えているさ。ヒーローごっこをよくやってただろ」
「そうそう。コーチャンがダークヒーローで、ヒーローのライバルとして戦ってたよな」
あれ?そう言えばヒーローはヨーヘーがやってたんだっけ?
「そうそう。それでボコボコにやられるヒーローを俺がやってたよ」
どうしたハイライトが戻らないぞ。
「あれ?そうだったか?」
「ああ。ダークヒーローが朱鷺を拐って、次のヒーローとして洗脳しようとするって設定でな。それをヒーローが自分達と同じ存在にさせないとか言って、助けに行くってストーリーだ」
へえ~、そんな設定があったのか。
てか、ヨーへーはそんな細かい事までよく覚えているな。
「ヨーへー君は記憶力も良いんだね」
良すぎだろヨーへー。
俺なんて記憶喪失だからな。
覚えてないのはそのせいだよ、きっと。
「いえいえ。強烈な記憶だから忘れられないだけですよ。なんせヒーローがダークヒーローにやられると言う、斬新な設定だったので」
「そんなにヒーローごっこが楽しかったなんて、僕も嬉しいよ」
「誰も楽しかったなんて言ってませんよ。大人が本気でヒーローごっこをやってたから覚えてただけです」
なんだか2人の間に、ブリザードが吹きすさぶ幻影が見えるんだが…
2人ともニコニコしてるのに変だなぁ。
「僕も子供だったんだけどね」
「いやあ、5歳と16歳では同じ子供に入りませんよ。大人気ないと言う意味では子供かもしれませんが」
ほら、2人ともハイライトさんが家出したままだぞ。
「なんだよ、ヒーローごっこが嫌なら言ってくれれば良かったのに」
「だって、朱鷺が楽しそうだったし」
「そりゃ楽しかったけど、ヨーへーも楽しんでくれなきゃ駄目だろ」
「2人でヒーローをやってるのは楽しかったよ」
「あははは。それだと敵がいないじゃん」
「ダークヒーローはヒーローの敵だろ」
あれ?そうだっけ?
ヒーローと共闘したりしてなかった?
ほら、特殊な目で洗脳する反逆者とか周りから見たら悪だけど、親友と一緒に自分の正義を貫くとかカッコよくない?