殴り合わなくても友情は深まる
いつもの会議室より小さな部屋に案内された。
「さ、そっちに座って。何か飲むかい?」
「この前のご当地ドリンクってまだある?」
「あるよ」
「ご当地ドリンク?」
「ヨーへー君も飲んでみるかい?」
「お願いします」
ゆっくり飲んで心を落ち着ける。
「さて。今日はヨーへー君に、トキのステータスに関する話しをしようと思って来てもらいました」
「え?光成さんは、朱鷺のステータスを知ってるんですか?」
「まあ、その辺りも順番に話すよ」
で、まあ、俺の初期スキルが特例法に引っ掛かって内容は言えないが、その検証のためにダンジョンに入ってたので、思ってる以上にステータスが高くてスキルも色々あるよって事を話した。
「僕はギルド職員として検証にも立ち会ってて、その縁で家庭教師もやってるんだ」
話の中で嘘を言ってないのが凄い。
「それで、ヨーへー君は話を聞いてどう思った?」
「あ~。確かに驚きましたが、ちょっと変だなと思っていた事もあるので納得しました。朱鷺も、もっと早く教えてくれても良かったのに」
それはすまぬ。てか変だと思われてたのか…
「そう…それじゃあ、トキが君なんかが逆立ちしたって勝てないモンスターを倒せるとしても、嫉妬したり怖がったり羨ましく思ったりしないのかい?」
そこはかとなくトゲを感じる言い方だな。
「そりゃあ、俺も嫉妬したり羨ましいと思う事はあると思います。でも、朱鷺を嫌ったり怖がったりする事はないですよ」
それ本当?
「何でそう言い切れるのかな?」
「そりゃあ、俺が朱鷺の幼馴染みで親友だからですよ」
やだ、ヨーヘーきゅんたら真顔でそんな事……照れるじゃん。
「…へえ…幼馴染みで親友ね。君の言葉が嘘だったら、僕は赦さないからね」
笑顔なのに目が笑ってないんだけど。
「もちろん、嘘なんかじゃないから大丈夫です」
やだ、ヨーヘーったら男前。
「わかったよ。とりあえず君を信じよう」
俺も信じるよ。
「それなら、光成さんに聞きたい事があるんですが、質問いいですか?」
「なんだい?」
「特例法ってスキルの使用制限があるんですよね?」
そうそう、意外と面倒なんだよね。
「まあ、その辺りを含んでいるけど、基本的には情報規制に重点を置いてるんだ」
そうだね。特に妖精とか。
「つまり、朱鷺のスキルを知る可能性があるから、パーティーメンバーである俺も、情報規制の対象になるかもしれないって事ですか?」
「そうだよ。ヨーへー君は頭が良いね」
イケメンで勉強も出来てサッカーも上手くて優しいと評判だよ。
「それほどでもありません。中間テストの範囲に特例法が入りそうだったので、予習していただけです」
え!?そんなの知らないよ!
後でテスト範囲を教えてくれ。
「なら、トキのステータスに関して、契約魔法で誓約して貰わないといけないのは理解しているよね」
それもあったよ。
「はい、もちろん。親友の不利になるような事はしません」
もう、そんなに親友を連呼しなくても、俺達は竹馬の友でマブダチでズッ友でBFFだよ。
「理解してもらえて良かったよ。ところで、さっきも言ったように、君の親友のトキは既にD級だから、君とは大きな差があるのは理解しているよね」
何だか圧を感じる言い方だなぁ。
「ええ、まあ」
「なのに君はアルバイトをしていて、トキの足を引っ張っているそうじゃないか」
「それを言われると反論出来ないですが、お世話になってる店長に引き留められてて、直ぐに辞められないんです」
「君は、本気で探索者になりたい訳じゃないのかな?トキは、本来ならランクDで稼げるんだよ?いつまでも、君に合わせてランクEの2階でウロウロしてるなんて、とんでもない損失だよ」
そんなの俺は気にしてないよ。
ぶっちゃけ、お金ならソコソコあるから。
「ちゃんと本気で探索者になりたいと思っています。俺のレベルに合わせて貰っているのは朱鷺に悪いと思ってますが、それも夏休みまでの間だけです」
「悪いと思っている?本気なら、早くバイトなんか辞めて探活をやるべきだ。それが出来ないなら、トキとパーティーを組むのは諦めてくれないかな」
「ちょっと、勝手な事を言わないでよ!俺が、ヨーへーと探活したいんだから!」
俺のステータスが凄すぎて、ヨーへーがドン引きして一緒に探活しないとか言われる心配をしてたのに、コーチャンが諦めさせるとか想定外だよ!
「トキだって、本当はもっと探活したいんじゃないの?土日だってコイツに合わせて3時間しか探活してないんでしょ?」
「そんなのは別に構わないよ。誰と組んでも、今の時期は3時間しか活動なんて出来ないだろ。それなら俺はヨーへーとやりたいの!」
「ふぅ…トキはこう言っているけど、ヨーへー君はどうなんだい?別にトキじゃなくて、他の友達とのんびり探活すればいいんじゃないのかい?」
「他の友達にも誘われたけど、その時に母に話をしなかったのは、許可が降りないと思ってたのもあったけど、俺は朱鷺とやりたかったからなんです」
やだ、ヨーへーったら、他の友達じゃなく俺を選んだなんて…キュン死にさせる気か。
「ふうん。それなら、店長だって訳を言えば納得してくれるんじゃないのかい?」
それな。
「その…実は中学を卒業する少し前からバイトをやってたんです。店長には年齢を誤魔化してたのもバレてたみたいで、目を瞑っててもらってた手前、高校に入った途端に辞めますとは言えなくて」
「それが労働基準法違反と言うのは解ってる?」
そうなの!?
子役とか小学生アイドルとかいるから、理由があれば働けるのかと思ってた。
普通のアルバイトは駄目で、映画や演劇関連だけOKなの?
テレビのバラエティーは演劇じゃないのに解せぬ。
「それは……でも、母に引っ越しするかもって話をされて、どうしてもこっちに残りたかったから、お金が欲しかったんです!」
俺に宝くじを買わせようとしたくらいだもんな。
「まあ、僕は労基署でもないし、そこは黙っててあげるよ。でもお金が欲しいなら尚更、探索者で頑張る方が儲かるんじゃないの?」
「それは、そうかもしれません。でも、不義理な事をしたくないんです」
「不義理ねぇ。それならトキには不義理じゃないと?親友だから何をしても許されるとか思ってないかい?」
やけに親友を強調するなぁ…照れるだろ。
「そんな事は思ってません。それに朱鷺は、本当に嫌なら言ってくれます。俺も朱鷺が本当に嫌がっているなら判ります」
おお、心友よ!
やっぱりヨーへーは俺の事を解ってるね!
決してBとLな展開ではないよ。




