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音楽性の違いって何だ

 D級になるのは、早い人で1年かかる所を約半年で到達してしまったし、このレベルではスキルの数が断トツだろう。


 更にセイクほにゃららとの勝負で、圧倒的な差を付けて勝ったりして、普通なら天狗になるところなのだろうが、なんせ周りに人外が多すぎて調子に乗る事も出来ない。


 ずっと有名人の家族として、俺も凄い探索者になると期待されて妙な注目を浴びて来た。


 だから目立つのは嫌いだし、変な期待もされたくない。


 その点ヨーへーは、揶揄う事はあっても努力している事を認めてくれているのは解っている。


 他のヤツみたいな事を言わないのは解っているのに、本当に凄いスキルが出たからこそ、単に運が良かっただけだと自分でも思ってるからこそ、八女家だから当たり前なんて言われたくないのかも。


 そんな俺の気持ちもコーチャンにはバレてるから、説明してあげるなんて言ったのかな。


 やっぱりスキルの事は言わず、平均的なD級探索者のステータスで出来る範囲で、のんびりやる方が良いかなぁ。


 はぁ…ため息が出ちゃう、だって男の子だもん。


「どうしたんだ?何か悩みがあるなら言ってみろよ」


 クッ、このイケメンめ。

 お前の事で悩んでるんだよ。


 幼馴染みだけあって、いつまでも誤魔化されたりしないだろうし、先に言った方が良いのも解っている。

 俺の隠し事が下手なんじゃないぞ。


「ヨーへーに話があるんだよ」


「え?告白なら間に合ってるよ」


 知ってる。

 GW前にデートに誘われてたよな。

 バイトがあると素で断っていたけど。


「…真面目な話だよ」


 いつもなら乗るとこだが、ここで茶化したら進まない。


「わかった。ダンジョンに行く前がいいのか?」


 ヨーへーも真面目な顔になる。

 隣の席の彼女達から熱い視線が飛んでるぞ。


「ああ。それで、この前の勝負の助っ人を頼んだ人も一緒なんだけどいいか?」


「いいけど…まさか、パーティー解散とかじゃないよな?その人と組むとか?」


「違う違う。解散なんてしないから」


 音楽性の違いはないので。


「俺だってしないよ」


 そうなるといいな。


「それじゃあ、放課後になったら迎えに来て貰うから」


 トークを送っておこう。


「お?彼氏のお迎えなんて贅沢だな」


 バイブ設定のスマホが震える。

 返事早っ。


「そう言う事を、絶対にあの人の前で言うなよ」


 喜ばせるだけだから。


「おぅ、了解。そっか冗談が通じないタイプなのか」


 ヨーへーが何やら誤解しているが、本当の事を言いたくないので黙っておこう。


 体育の授業で無双しないように気を付けながら、何事もなく放課後になった。


 下駄箱でモヤシっ子がこっちを見ていたのは、知らないったら知らない。


 あの勝負でコーチャンが提示したのは、メンバーの誰かが坊主になる事だった。


 モヤシっ子が勇者として責任を取るとか言ってたが、別に見せに来なくて良いんだよ。


 どうせなら俺に関わるなと言えば良かった。

 コーチャンに任せた俺のバカ。


 いつものコンビニでコーチャンが待っていた。

 今日もチャラい家庭教師バージョンだね。


「はじめまして、朱鷺君の友達の立明寺要兵衛です」


 ヨーヘーに君付けされると照れるな。


「トキの家庭教師をしている尾藤光成です。今日は僕も一緒だけど、よろしくね」


 コーチャンは呼び捨てでいくの?


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 後部座席にヨーへーと一緒に乗ると、コーチャンの視線が鋭くなったが、ここで助手席に乗るのは不自然だろ。


「どこに行くんだ?」


 コソッと聞いて来るヨーヘーに、俺も知らないと答える。


「ギルドだよ」


 コーチャンが答えてくれたが、わざわざギルドで話すのか。


「あ、そうなんですね」


「何でギルドなの?」


「他に適当な場所がなかったからね」


 特例法の事もあるからかな。


「ヨーへー君と呼んでもいいかな?」


「あ、ハイ」


「ヨーへー君はトキから今日の話の内容を何か聞いている?」


「いえ。何か真面目な話としか聞いていません」


 何度か探りを入れられたけど、誤魔化してある。


「そっか。それじゃあ不安だよね。まあ、君にとって悪い話じゃないから、心配いらないよ」


「そうなんですね」


 物言いたげなヨーへーから顔を背ける。

 いかん、この期に及んでヒビってきた。


 ソワソワと貧乏ゆすりをしながら、このままギルドに着かないで欲しいなんて祈ってしまう。


「ふふっ」


 コーチャンの笑い声が聞こえて、顔を向ける。


「ゴメンね。トキの緊張してる顔が可愛くて」


 そう言うのは今日は止めてよね。


「揶揄うのは止めてよ」


「ええ?揶揄ってないよ。ヨーへー君も、そう思うでしょ?」


「ええ。いつも澄ました顔をしてるから、面白いですね」


 ヨーヘーまで面白がるな。


「学校ではそうなの?」


「クールな朱鷺君ですから」


「あはは。それも見てみたいな」


 いつもクールでしょ。


「君とは気が合いそうだ」


 この間はヨーへーの事を話したら、凄く嫌そうな顔をしてなかった?


「俺もそう思ってたとこです」


 それはコーチャン(ヤンデレ)を知らないからさ。


 ギルドの地下駐車場に入って行くのに、ヨーへーも驚いている。


 ギルド職員とB級以上の探索者しか入れないからね。


 車を降りるとエレベーターで4階に行く。

 あの会議室を使うの?


「尾藤さんて、朱鷺の家庭教師じゃなかったんですか?」


「僕の事は光成の方で呼んでくれるかな。間違いなくトキの家庭教師だよ」


 嘘ではないね。


「どうなってるんだ?」


「その辺も後でな」


 耳元で囁くな。

 コーチャンといいヨーへーといい、イケメンとイケボはセットと決まっているのか?


 俺だって声には自信があるんだぞ。

 ちょっと声変わりが遅かったけど、某声優に似てるとか似てないとか言われたんだからな。

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