結果発表~!
「さあ、それじゃあ帰ろうか」
時計を確認すると、あと30分弱しかない。
5階のボス部屋まで行って転移水晶で戻るにはギリギリだな。
またまた爆走かと思ったら、エスケープボールを使おうと言われた。
「ほら、トキから買ったやつがあるけど、使う機会がなかなかなくて試してみたかったんだよね」
確かに、コーチャンがピンチになるとかなさそうだし、いつもは時間配分も完璧だから時間がオーバーした事もないからね。
戦利品をリュックに詰め替えて準備はOKだ。
エスケープボールを地面に叩きつければ、ピカッと光ったと思ったら1階の転移水晶の横に出ていた。
「へえ、こんな感じか」
「一瞬だったね」
魔法陣が出たりするのかと思ってたが、逃げる時に悠長に魔法陣が出るのは待てないか。
でも、これならギリギリの時間まで探索して、帰りはエスケープボールでなんて言うのも可能になるね。
しかも転移はパーティー単位だから経済的だぞ。
周りを見回してみると誰も注目していないから、出て来るのも転移水晶と変わらないみたいだな。
何食わぬ顔でダンジョンを出ると、セイクリッドほにゃららは既に買取を終えていたようだ。
「遅かったな。そんなにギリギリまで探索しないと自信がなかったのか?」
モヤシっ子が煽ってくるが無視して受付へ行く。
「まだ時間内なんだから、ルールの範囲でしょ。そっちこそ余裕をかましてて大丈夫なのかな?」
と思ったら、コーチャンが煽り返してるし。
「買取お願いします」
そっちの相手は任せ、カードを差し込んで手続きをする。
リーダーのメダル1個とハチミツを1瓶だけ引き取り、その他は全て売却した。
もちろんガチャ関連は最初から除いている。
胸当てはガチャで出てるので引き取らない。
ポロリ対策は別に考えておくよ。
「それじゃあ、お互いの買取金額を見せ合おう」
カードの裏に直前の取引は残るからね。
………は?
嘘だろ?
これが本当に1日の成果か?
「いちまん…ろくせん…ごひゃくえん」
6時間で勝負したから、コイツらレベル5になってるんだよな?
6人もいるのに、これが普通なの?
これはヤバい。
「な……15万7600円だと?」
完全に俺達はやり過ぎだった。
「嘘だ嘘だ!」
「信じられない」
「嘘つきだぁ!」
「ふええ」
「マジかよ」
ざわつくセイクほにゃららのメンバー達。
それは、そうだよな。
「それじゃあ、僕達の勝ちって事で。さて何をして貰おうかなぁ」
ニヤニヤと楽しそうだね。
「不正だ!不正に決まっている!」
「そうだそうだ!」
「信じられない」
「イカサマだぁ!」
「ふええ!?」
「マジかよ」
いや、ギルドカードを誤魔化すとか無理だろ。
どうやったら不正が出来るのか、知ってるなら教えて欲しいわ。
「へえ。君たちはギルドで不正が出来ると思ってるんだ」
「そ、それは……そうだ!本当はさっきは何も買取にせず、その前の取引の表示を見せたんじゃないのか!?」
なるほど、それなら出来そうな気もするけど。
「それなら受付に確認してもらおう」
後から買取価格に文句を言う人がいるので、当たり前だが取引履歴の確認は出来る。
「ほら、トキのカードを出して。今日の取引内容の確認をして下さい」
カードを受付のお兄さんに渡すと、ニッコリ笑って頼む。
「はい。八女様の本日の取引は、買取アイテムが65点で合計15万7600円になります。明細が必要でしたらマイページからも確認出来ます。書面の場合は1枚につき100円かかりますが、如何なさいますか」
「あ、要りません。これで、不正がないのは確認出来たから十分でしょ?」
受付の人に頭を下げて離れる。
他の人の邪魔だから、会議室の近くへ移動した。
「嘘だろ…アイテムが65点?」
「嘘だ嘘だ」
「嘘だろぉ」
「嘘に決まってる」
「ふええ」
「マジかよ!?」
こいつらさっきから、同じようなやり取りだな。
殆どはオナモミの魔石だから、そんなもんだよ。
薬草は買取単位になるから、5本や10本で1点だぞ。
「これが、トキと君たちの実力の差だよ」
なぜドヤ顔なの。
「そんな…俺のスキルと職業は最強だぞ」
よっぽど良いスキルと職業が出たんだな。
「あのね、どんなに良いスキルや職業があっても、使いこなせなければ意味がないんだよ」
そうだぞ。
俺が何回ガチャを回したと思ってるんだ。
もとい爺ちゃんにボコボコにされたと思ってるんだ。
「俺は聖剣の勇者だぞ」
大丈夫か?
中学は卒業したんだから、中二で患う病も卒業しろよ。
「そう。それなら君のその態度は、勇者に相応しいものなのかな?振り返って考えてみてごらん」
なんだなんだ、その青春ドラマで言いそうな台詞は。
「あ……そうだ…これじゃあ、主人公に絡むやられ役だ……僕が目指す勇者じゃない」
なにやら、目が覚めたような顔をするモヤシっ子。
「君が勇者に相応しい人間になる事を祈るよ」
「オレは…いや、僕は、勇者の職業に相応しい男になります!」
おぉ、何か知らんが解決したっぽい?
てか、職業が勇者だったのか。
「さて、それじゃあ君たちのペナルティを発表します」
え?何か良い感じに青春してたと思ったのに、その黒い笑顔は何?
セイクほにゃららが怯えているよ。
「初めのルールで君たちが勝てばトキに土下座させるって話だったよね?そして、僕達が勝てばそれに見合った事をして貰う約束だ」
ヒイッとか言ってるけど大丈夫だよ、違法な事はやらせないよ…きっと多分メイビー。
俺はリザルトの確認で忙しいので、お任せします。
結果はショボかったとだけ言っておこう。