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リーダーのメダルとエナジードリンク

 スタートしてから既に2時間が経っていたので、昼食をとる事にする。


 階段周りにはモンスターが入れない安全地帯があるのだが、6階も7階も他のパーティーがいたので、死角になる場所にコーチャンが結界を張って俺が隠蔽する事にした。


 弁当を持って来たのでテーブルの上に取り出す。

 光成先生のために、母さんが張り切って重箱に詰めてくれたのだ。


「はあ、何か疲れた」


 お握りを手に取り愚痴をこぼす。


「初めてのダンジョンだから、地図があっても神経を使うよね」


 コーチャンも甘辛い手羽先をつまんでいる。


「わかってくれる?」


「もちろん、トキの事なら何でも解るよ」


 その怪しい目付きはやめれ。


「これ以上の成果は必要なさそうだけど」


 卵焼きの甘さと、お握りの塩っぱさは相性がいいよね。


「やだなぁ。ああ言うタイプは徹底的にやらないと、何度でも絡んで来るもんだよ」


 それは経験談なの?


「本当は1対1で叩きのめすのが一番だけど、トキは実力がバレるのが嫌なんだよね?」


 可愛らしいピックに刺したミートボールとうずら卵を手に、物騒な事を言う。


「実力がバレると言うより、目立つのが嫌なんだよ」


 2個目のお握りを、明太マヨにするかツナマヨにするか迷いながら答える。


 ヨーへーみたいな感じの目立つ存在になれたら良いんだが、俺の場合は何故か悪目立ちする。


 遠巻きにヒソヒソやられる気持ちが判る?

 メンタルがやられるよ。


「トキはこの世の誰よりも輝いているから、目立たないなんて無理だよ」


 それ、コーチャンの目が腐ってるからだよ。

 俺なんてササと張り合うくらいのモブ顔だよ。


 黙って座ってたら、誰も声をかけないくらい存在感もないみたいだし。

 ヨーへーや馬洗といる時くらいしか、女子に話しかけて貰えないんだぞ。


「ふふ。トキはそのままで良いんだよ」


 エビフライの尻尾が出てるお握りに、大口でかぶり付く姿すらイケメンだね。


「そう?」


 フツメンは頑張ってもモテないって事か…くすん。


 昼食を終えて7階を探索する。


 ここも探索者の数は少ないので、視界に入らない程度の距離を開けて進む。


 地球上なら障害物がなければ5キロメートル近く見えると言われているが、草原ダンジョンだと数百メートルも離れると見えなくなる。


 これもダンジョンの謎な現象の一つだ。


 鷹の目などの遠距離が見えるスキルがあると、草原ダンジョンでも遠くまで見えるらしいけど。


「さてと、早めに目的の物が手に入ると良いんだけど」


 俺の強運が仕事をすれば大丈夫でしょ。


 6体目のコボルトで目的のアイテムが出た。


 レアドロップの"リーダーのメダル"だ。


 小さな勲章の様なアイテムを装備すると、パーティーメンバーと念話が可能になるアイテムだ。


 念話と言っても、例のイヤーカフのように話が出来るような物ではなく、メダル装着者(リーダー)の意思を伝えるだけの効果だ。


 例えば「右を攻撃しろ」や「逃げろ」と言う指示が何となく伝わるので、連携や撤退が容易になる。


 ハンドサインでは伝え切れない部分を補えるので、人気が高いアイテムだ。


 ただし念話の範囲が狭く、だいたい声が届く距離と同じくらいだ。


 コボルトのように、言語を持たないモンスターが連携の取れた行動をするのは、この能力が備わっているからだと言われている。


 レアドロップな上に自分たちで使用するパーティーが多いため、E級としては破格の2万円で買取してくれる。


「あと1個だね」


「え?」


「だって買取に出しちゃうとトキが使えないでしょ?」


「ヨーへーと2人だと必要ない気もするけど」


「ランクEなら2人でもいいけど、ランクDになると3人は必要だよ。トキが力を隠さないなら2人でも良いけど、普通の高校生のレベルに合わせて制御するなら難しいかな」


 ヨーへーになら特例法に関わるスキル以外は見せても大丈夫だと思うけど、どうやって覚えたのか言い訳が思い付かない。


「スキルをどうやって覚えたかなんて言う必要はないと思うよ」


「そうなの?」


「そりゃあ、ネットなんかで公開している人はいるけど、自分の努力や工夫で覚えたものを、わざわざ教える必要なんてないでしょ」


「それもそうか。ヨーヘーには何でも話してたから、教えなきゃいけない気になってたよ」


「へえ…何でも話してたんだ…」


 やだな何故かハイライトが消えてるよ。


「そんなに教えたいなら、契約魔法で制限をかけて、トキのスキルやステータスに関する事は口外出来ないようにするかい?」


「そこまでするの!?」


「安全性を取るなら必要かな。もちろん、スキルの詳しい説明をせず、こんな事が出来るとフワッと言うだけにするなら必要はないけど」


 なるほど、地図スキルと言わず、何となくモンスターのいる場所が判るとか、階段のある方向が判るみたいに言えば良いのか。


 でも、ヨーヘーに隠し事が出来る自信がないよなぁ。


「それなら初めから特例法だと説明して、ステータスの件は黙ってて貰う方が良いよ。なんなら僕が説明してあげるよ」


 そうだよね。ボロが出る前にコーチャンに説明して貰う方が、俺のダメージが少ない気がする。


 それからコボルト狩りをして、8体目で漸く出た。


「普通は20体倒しても1個も出ないから、やっぱり強運だよ」


 まだ時間もあるし、ついでにダンジョンクリアしちゃおっかと、良い笑顔で言われた。


 8階以降は他パーティーが殆どいないので、10階まで爆走してボス部屋の前で休憩する。


 マラソンランナーを超えて、100メートルの世界記録を超えるスピードだった。


 他のパーティーが部屋に入ったところだったから、出て来るまで休憩するのに丁度良かった。


 流石に息が上がったが、涼しい顔をしてるイケメンにエナジードリンクを出されたので大人しく頂く。


 最近よく見かける、ご当地ドリンクってヤツだがスッキリした後味で旨い。


 これを飲んだからと言って踊り出したりはしないが、ご当地の有名な踊りがデザインされている。


 なんでマイナーな飲み物を持ってるのか謎なイケメンだ。


「ん?ギルドの査察で行った時にくれたんだよ」


 そうだったんだ。

 美味しいと褒めたら箱でくれたのか。


 グラマスも愛飲してますとか、ネットに書かれてたりして。

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