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トラブルはゴブリンより弱し

 連休明けのだらけた雰囲気で授業を受けながら、ぽかぽか陽気に睡眠耐性が負けそうになっていると、少し離れた場所から爆発音がした。


「何だ!?」


 ザワザワする俺達に大人しく座っていろと言ってから、数学教師が確認のために出ていく。


 窓から校庭を見ていると、タッチラグビーをしていた上級生達が、校舎の横の武道館の方を指差しているのが見えた。


 身を乗り出して武道館の方を見ると、煙が上がっているのが見える。


 確か武道館は剣道とかの授業にも使うが、基本的にはダンジョン科の訓練に使われているはずだ。


「おい、向こうから煙が出ているぞ!」


 同じように気付いた生徒が騒ぎ出す。


「火事か?」


「テロか?」


「ダンジョン科だろ」


 俺も最後のヤツに同意。

 もしかしたら、連休中にレベルアップして覚えたスキルを使ったバカがいたのもな。


 既に煙は収まっているし、火災報知機も鳴っていないから大したことはなさそうだ。


「こら、静かにしろ!席につけ!」


 数学教師が戻って来たので、窓に群がっていた生徒達が慌てて席に戻る。


「授業を再開するぞ」


「えー!先生なにがあったのか教えてくれないの?」


「後で校内放送があるから、今は授業に集中しろ」


 暫くザワついていたが、休み明けに小テストをやるから、ここ出すぞと言われて慌ててノートに書き写す。


 チャイムが鳴って先生が出ていくと、他の教室に情報収集に行くヤツが何人か出ていく。


「朱鷺は何だと思う?」


 ヨーへーが背中をつついてくるので、振り返る。


「多分ダンジョン科の授業で、誰かがスキルを使ったとかじゃないか」


「ありそうだな」


「煙は見えたけど、炎はなかったからな。土魔法とか物理系のスキルで、壁でも壊したんじゃないか?」


 怪我をしても養護教諭が治癒魔法やポーションで治すのだが、重傷の場合や出血が酷かった場合は救急車を呼ぶ。


 今回は救急車も来てないし、授業も続行しているから大きな問題ではなさそう。


 スピーカーから音がして、校内放送が始まる。


 思った通り、ダンジョン科の授業でのトラブルで武道館の一部が破損したが、怪我人はいないので心配ないと告げられた。


 詳しい事は事実確認が出来ていないので、他の人に喋らないように言って終わった。


「やだぁ、トラブルってなにかしらねぇ。気になるぅ~!」


 馬洗も気になるのか。

 そして今のはIPPOの真似か。

 ウメコと似てるが、最後の叫び方で判った。


 お前はジェンダーレスなモノマネしかやらないんだな。

 絶対に夜青龍の方が似てるのに。


「俺の右手の封印が!とか誰かがやったんだよ、きっと」


「それな」


 ヨーへーの意見に1票だ。


「私、前にダンジョン科の子から、オレがダンジョン科のトップになってやるって言ってた人が、体術の授業でボコボコにやられたとか聞いたわ」


 それは面白そうな話だな。


「ああ、何か初期スキルが当たりだったとか言ってた?」


「そうそう。自分は勇者だとか恥ずかしい事を言ってたらしいわよ」


 それは確かに恥ずかしい。


「何のスキルだったか知ってる?」


「剣のスキルだったと思うわ。私だって初期スキルが探索者向きなら、ダンジョン科に入りたかったよ」


 お?やる気があればスキルなんて生えてくるよ。


「ええ!?ゴブリンとか倒せるの?」


「それは、やってみないとわからないじゃない」


 いいガッツだ。


「私は無理。Y●uTub●の映像でも怖かったから」


 俺も見た事あるが、恐怖を煽る編集が上手い。


「怖がりなくせに、そんなの見てるの?」


「何かわからない方が、怖いじゃない?」


 禿同。


「そんなものかな?」


「そうよ」


 隣の列の女子の話しが聞こえて来て、心の中でツッコミをしていると、ヨーへーがニヨニヨしながら話しかけてみようぜ、なんて言って来る。


 やはり、女タラシの血が騒ぐのか。


 結局、ヨーへーは探活している事を話題に、女子と話す事に成功したから、俺の存在なんて必要ないのさ。


 でもさ、お前まだゴブリンどころか2階さえ行ってないだろ。

 今度ゴブリンを倒して感想を言うとか、今のペースだと半年くらいかかるぞ。


 やるなら早めにバイトを辞めろよ。


 虫ダンジョンは雅美さんと行く時だけで、2人の時はモグラダンジョンを探索しているんだけど、ゴブリンが出るのは6階だぞ。


「八女君はゴブリン倒した事あるの?」


 俺に振るなよ。


「ああ」


「ええ!?怖くなかった?」


「気持ち悪くなかった?」


「別に」


「そうなんだ?流石だよね」


「八女君てクールよね」


「こいつはカッコつけてるだけだから」


 違う、コミュ障なだけだ。


「立明寺君はカッコいいよね」


 そうですね。


「その、ありがとう」


 照れながらも受け入れるとは、言われ慣れてるな。


「やだ、もしかして立明寺君狙い?」


 コソコソしてるが、ステータスが上がってる俺には聞こえてるぞ。


「ち、違うわよ、一般論よ、一般論」


 なぜヨーへーだけがモテるんだ。

 俺をチラチラ見てもヨーへーとの仲介はしないぞ。


 そんな感じで、ダンジョン科のトラブルはゴブリンの話題に負け、普通科ではさほど話題になる事もなく忘れられていった。


 後日とある経緯から、武道館を壊した犯人と関わってしまったのだが、この時の俺は知る由もなかった。

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