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バーイシコー

 いよいよ初出勤だ。

 気合いを入れてギルドに向かう。


 GWの混雑を避けて魔道自転車で移動する。

 この魔道自転車の凄い所は、風魔法の応用で作り出される風防だ。


 自動で構築された風の繭が空気抵抗を抑え、更に衝突や転倒した時にはエアバッグ代わりになるのだ。


 ステータスが獲得されてからは、自転車でも危険な事故が増えたため、免許制が導入されて講習を受けないと乗れなくなった。


 免許と言っても、基本的な交通ルールの知識があり、自転車に乗れれば取得出来るので、小学校などでも受けられる。


 ヘルメットの着用は義務だが、風防付きの魔道自転車は免除されている。


 左側通行が徹底され、右折の場合は基本的に二段階右折をしなければならない。


 人外の力を持つ人もいるので、制限速度も設けられて時速20kmまでしか出してはいけない。


 これ以上の速度で移動したいのなら、バイクや自動車に乗れって事だ。


 速度メーターを確認しながらスピードを調整する。


 ウインカーも付いてるから車体が重くなりそうだが、千々石ブランドは軽くて丈夫なダンジョン産の素材で出来ているのが特徴だ。


 アシスト付きのタイプは人気だが、やはり高額なのがネックだな。


 よく考えたら、ステータスが上がったらアシストは必要ないので、俺のは付いてないタイプにした。


 Bicycle♪と口ずさみながら15分程でギルドの建物が見えてきた。


 駐輪場に停めて鍵をかけると、チェーンで固定する。


 アイテムボックスに入れたい所だが、高校生が持っていると知られるとトラブルを招くので、人目が多いギルドで使うのは自重する。


 ギルドで盗むような強者は少ないとは思うが、何事も絶対はないので、そんじゃそこらの探索者では切れないオリハルコン合金のチェーンを使っている。


 まあ、もし盗まれても地図スキルで追跡可能なのだがな。

 流石はSSSランクのスキルだぜ。


 マーキング機能で登録しておけば、コーチャンの居場所も判るよ。

 今は3階にいるみたい。


 正面ではなく裏口に回り、インターホンを押す。

 応答してくれた職員さんに名乗ると、鍵が開いたので中に入る。


「おはようございます。今日からこちらで働かせて頂きます、八女朱鷺です。宜しくお願いします」


 人影が見えたので、頭を下げて挨拶をする。


「ようこそ。待っていましたよ」


「あれ?早良さん?」


 さっきまで3階にいたはずなのに…GPSとか付けられてないよね。


「そろそろトキ君が来る頃だと思いましたので、待っていました」


 ギルドにいる時は早良さんバージョンだから、バイト中に間違ってコーチャンと呼ばないようにしないと。


「こちらで先ずは、書類整理をお願いします」


 案内された部屋は3階にあったから、さっきまで早良さんのいた場所かな。


「わかりました」


「殆どは電子対応になってはいるのですが、モンスターハザードなどで停電する場合に備えて、書類でも保管しているんですよ」


「そうなんですね」


 と言うか、他の職員に挨拶とかしなくて良いの?


「他の職員は、ダンジョンの見回りや受付業務をしていますので、ここは私達だけですよ」


 挨拶のシミュレーションまでしてきたのに。


「GWは事務員は休みと伝えてあったと思うのですが」


 そんな事も言ってたけど、誰もいないとは思わないでしょ。


 古い資料を期間ごとに箱に詰めて、中身を箱に記入する事1時間。


「ここは終わりです。少し休憩しましょうか」


「はい」


「決算は5月末なので、今月中に整理しておかないと来期の資料が置けなくなるので、本当に助かりました」


 決算て3月とかじゃないの?


「探索者は春休みに増えるので、決算時期をずらしているんです」


 なるほど。

 4月末だとGWにかかるから、5月末が都合が良いんだな。


 その代わり中間決算が11月末なので、トラブルがあると年末年始に出勤する羽目になるとか。


 冬休みは比較的ダンジョンに行く人は少ないが、ギルドは忙しいのだとか。

 去年は新しいシステムのせいで、職員全員がゾンビのようになったとか、ギルド秘話を面白おかしく聞いた。


 あれ?そんなに忙しかったのに、サブマスやコーチャンは俺と楽しく探活してたの?


「それは違いますよ。トキ君のスキル検証をしたお陰で、職業問題はトラブルも少なく期限内に終わらせる事が出来ましたから、必要な仕事です」


 爽やかスマイルで言いきるが、楽しんでやってたクセに。


「では、次の仕事をお願いしますね。こちらの書類をシステムに入力して下さい。手書きのため文字の判読が出来ない時は、私に聞いて下さい」


 システムを立ち上げた画面は、カーソルが自動に飛んで行くから、上から順番に項目を入力するだけなので俺でも出来そうだ。


 日付は自動で入るから、その次から打ち込んでいく。


 しかし、文字が綺麗な人は良いが、達筆すぎて読めない人の解読で時間がかかった。


 早良さんは、よくこれが文字に見えるね。


「慣れですよ。それに住所なんかは地名を知っていれば判断出来ますし、他の文字からハネや払いの癖を見れば、何となく解ります」


 それは最早、特殊能力(スキル)だね。


 個人情報とかあるけど、バイトの俺が見ても大丈夫?


「トキ君は信頼出来る方だと知っていますからね。これは重要な書類ではありませんから大丈夫です」


 止めて、イケボで囁かないで。

 あと、教えるのに椅子の後ろから覆い被さる必要はないよね。

 隣の席でも聞こえるよ!


 これが漫画なら、オフィスラブのワンシーンだよ。

 そして現実でやれば、セクハラ案件だぞ。


 カチャカチャとキーボードを叩きながら暫く無言が続く。


 セクハラと言う言葉に何か思うところがあったらしい。

 ストーカーとか下着泥棒以外にも何かあったのかな?


 キラキライケメンスマイルなのに怖かったので、その質問は封印された。


「では時間ですので、今日はここまでにしましょう」


 キリの良いところで書類を片付ける。


 あ~肩が凝ったな。

 肩を回してから腕を伸ばすと、ポキポキと聞こえる。


「明日は5時間にしても大丈夫そうですか?」


「はい。これなら大丈夫です」


「それじゃあ、明日は午前10時に来て下さい」


「わかりました」


「お疲れ様でした。気を付けて帰って下さいね」


「ありがとうございます。お先に失礼します」

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