ロールプレイはほどほどに
「あ、俺は暫くヨーへーと探活するから、特殊部隊は空いてる時間になるよ」
「ヨーへーって誰だよ!浮気は駄目だよ!」
誰と誰が浮気だ。
「コーチャンも知ってるだろ?幼稚園からの親友のヨーへーだよ。ああ、前はリュウって呼んでたけど」
立明寺のリュウが竜の事だと思ってて、カッコいいからってそっちで呼んでたんだよな。
「リュウ…ああ、アイツか。チッ…まだ纏わりついてやがったのか」
「なんか言った?」
「なんでもないよ。そのヨーへーと探活するの?」
「うん。ヨーへーが探索者になるのに、オバサンが一緒に行くなら構わないって言われたんだ」
「クッ、知らないヤツよりマシか…」
「コーチャン?」
何をブツブツ言ってるのさ。
「わかったよ。でも、制限しているスキルやアイテムもだけど、ガチャミの事やユニークスキルは絶対に知られないようにね。もし隠し部屋や宝箱を見つけても、トキは開けるなよ」
「わかってるよ」
「それじゃあ、探活の許可をする代わりに、ちょっとハグしていい?」
「嫌だよ、何でだよ」
「がーん」
口で言うなよ。
そもそもコーチャンの許可は要らないだろ。
いや、グラマス権限ならいるのか?
「だって~春休みはトキと毎日会ってたのに、今週はまだ1日しか会ってないんだよ!トキ成分が足りないよ!」
俺はサプリメントか。
「今週てまだ火曜日だし」
「やだやだ、毎日会いたいよ~。それに俺以外と探活するのを我慢するんだから、ご褒美くらい欲しいよ」
彼女気取りか。
「コーチャンは仕事なんだし、仕方ないだろ。それに他の人と探活しろって言ったのは皆だろ」
「仕事は優太に押し付ければ…クッ…トキの成長のためとは言え辛い」
サブマスが可哀想だろ。
「サブマスも忙しそうだよ。俺の成長のためにも諦めて」
「成長を知るためにもハグさせてよ。なんで優太が忙しい事を知ってるんだよ。ハッ、まさか連絡を取ってるの!?」
嫉妬深い彼女か。
「ハグは却下だよ。父さんがギルドに納品に行った時に見たらしいよ。父さんに気付かないくらい疲れてて、目の下に隈も出来てたそうだよ。コーチャンは顔色も良いし、元気そうだね。ちゃんと仕事しているの?」
「え~顔に出ないだけで疲れてるよ。トキに会って癒されたお陰で、顔色が良くなっただけで、会えない時はゾンビみたいになるくらい仕事してるよ~」
「本当に?」
ジト目で見つめる。
「……今から仕事して来ます」
ほら、やっぱりサブマスに仕事を押し付けてるんだろ。
「よしよし。頑張って」
ここは飴を与えておこう。
「トキによしよしされたら、元気出たよ~!今日は徹夜で仕事して、明日も会いに来るよ!」
「いや、ちゃんと寝て仕事しろよ!」
手の平で転がすって難しいな。
たまにはイヤーカフで連絡してとか言ってたが、アレは封印している。
だってイケボで囁かれたくないので。
それにしても、ヤンデレキャラはいつまで続くんだか。
絶対に揶揄ってるのは解っているのだが、たまに自信がなくなる。
いやいや、それこそコーチャンの思うつぼだ。
あれはロールプレイだ。
爺ちゃん達もコーチャンのロールは徹底してるって言ってたし、本気だと思ってたら二人きりになんてさせないだろ。
どうせなら理想の兄キャラをやってくれたら良いのに。
早良さんは完璧イケメンなのに、なぜ俺の前では残念イケメンになるのか。
父さんに思わず愚痴る。
「そりゃあ、お前の反応が面白いからだ」
な、なんだってー!?
「頑張って気にしないフリしたり、動揺を抑えてる表情とかが丸解りなとこが可愛いって言ってたぞ」
色々バレてたー!!
「早良とかグラマスみたいなタイプだと、お前あんまり動揺しないから、ちょっと変態入ってる方が面白いんだろ」
な、なんてこったい。
そんな理由でヤンデレキャラをしてたのか…
「まあ、光成が飽きるまで頑張れ」
無責任な激励をありがとう。
でも、ヤンデレが演技だとお墨付きを貰ったので、惑わされず対応すれば良いのだ。
しかし、揶揄われてばかりなのも悔しいので、いつかギャフンと言わせたい。
あ、勝負はしないよ、勘が負けると言っているので。
◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
さて、今日は隣町のランクEダンジョンで、ヨーへーの探活デビューです。
なぜ隣町かと言うと、雅美さんの強い要望のためです。
…ちょっと間違ってオバサンと呼んだらアイアンクローをされたので、これからは心の中でも雅美さんと呼ぶ事にした。
ここならオジサン達に絶対に会わない場所だと、とても良い笑顔に逆らえるはずもなかった。
しかし、代わりに俺達の顔色が優れないのは、このダンジョンの通称が虫ダンジョンだからだと思う。
オジサンは虫が大嫌いで、キッチンで黒光りするGをやっつけるのはオバサンの役目だったそうだ。
ほとんどの人は嫌いだと思うとは、それを始末してる人に言えなかったのは仕方ない。
「さあ、パーティー登録もしたし、行きますか」
ダンジョンの入口が魔窟に見える。
果たして俺達は無事に帰って来れるのか…なんつて。
早速だが第一モンスターを発見。
ビッグキャタピラーだ。
ヨーへーはヒッとか言ってるが、虫の中では比較的気持ち悪くないタイプだぞ。
グリーンキャタピラーの下位モンスターで、糸も吐かないし体当たりしてくるだけの最弱の虫だぞ。
「ほら、ヨーへー行け」
「お、おう」
腰が引けてるな。
「大丈夫だ、槍で突くだけで倒せる」
ヨーへーの武器は2メートル程の長さの鉄シリーズの槍と、腰に差しているメイスだ。
虫ダンジョンは森林型なので、広い場所では槍が効果的だ。
狭い森の中ではメイスに切り替える。
甲殻のある虫がいるから剣より打撃武器が良いので、このチョイス。
槍も石突きを使えば打撃も可能だから、虫ダンジョン対策はバッチリだ。
ヨーへーの装備は雅美さんが用意したので。
完全に外堀を埋められてます。




