お帰りハイライト
ちょうど良いので直ぐ様ギルドに講習の申し込みに来た。
明日の午前中の分に申し込めたので、強運が働いたのかな。
「そういやヨーへーは探索者になったらバイトは辞めるのか?」
「急には難しいから、今月は辞めないよ」
「流石だアンドレ」
「やめろ」
「あら何の話し?」
「な、なんでもないよ」
「あれ?ヨーへー言ってないの?」
「朱鷺は黙ってろ!」
「ちょっと要兵衛?お母さんに隠し事かしら?」
「違うってば!」
ヨーへーが焦ってるのをニヨニヨしながら眺める。
「いいわよ、朱鷺君に聞くから」
「やめろって」
おっと、これ以上はヤバい。
「要兵衛君がバイト先で、変なアダ名を付けられてただけですよ」
「そうなの?どんなアダ名かしら?」
「思春期の男には、母親には知られたくない事の1つや2つあるものです。要兵衛君がグレたりしないよう、そっと見守ってあげて下さい」
「ふふふ。わかったわ。女性関係以外なら見逃してあげる」
見守ってるのと見逃してるのは似て非なるものだよ。
それと、運転中はハイライトを消さないで下さい。
メロンパフェ効果は時間切れか。
ヨーへーよ、今までよくグレなかったな、偉いぞ。
「別に母さんに隠し事なんてしてないよ。ただ恥ずかしかっただけさ」
マザコンか!
頬を染めるな頬を。
いや、これは天然だな。
「要兵衛ったら照れちゃって可愛いわね」
「もう、止めろよ」
これがモテと非モテの差か…俺がやったらドン引きされるぞ。
「久しぶりだし、朱鷺君も夕飯を一緒に食べましょう」
「御馳走になります」
一応、誘われると思ったから、食べて帰るかもって母さんには言って来た。
「メロンパフェの他にお肉も頂いたから、要兵衛も楽しみでしょ?」
「ミノタウロスなんて久しぶりだよ」
我が家では肉のストックは欠かさないからね。
ミノタウロスだけでなく、迷宮黒牛や迷宮三元豚なんかも入れてたはず。
「そうねぇ…アイツがいた時は、それなりの稼ぎがあったから前はよく食べてたものね…」
ハイライトよカムバック!
「俺は母さんの料理が好きだから!高級肉じゃなくても凄く美味しいし!」
「あらそう?特売でオージー・ビーフを買ってあるから、要兵衛はそっちにする?」
「いえ、ミノタウロスでお願いします」
「うふふ。冗談よ」
ハイライトが消えてると、冗談に聞こえないので止めたげてね。
「雨止みましたね」
「本当ね。あら虹だわ」
ハイライトが戻って良かった良かった。
焼き肉パーティーを終えて、車で送ろうかと言われたが近いので歩いて帰る事にする。
「下まで送るよ」
「女子ならキュンキュンするセリフだな。恋愛漫画ならキスシーンが始まるわ」
「お前に下心なんか持たねえから安心しろ」
「フッ、俺じゃなければ下心満載って事か」
「ちげえし」
「モテる男は下心なんて必要ないってか」
「茶化すなよ。その、今日はありがとな。母さんがこんなにあっさり許してくれたのは、お前のお陰だ」
やだ、急にどしたん?
「俺が礼を言ったらおかしいか?」
マジマジと見てたら逆ギレされた。
「いや~ヨーへーが青春漫画の主人公みたいな事を言うから、呆気にとられたわ。やめろよな。俺とお前の仲だろ。でも、そんなにお礼をしたいなら、可愛い女の子を紹介してくれるとか、合コンのセッティングとかで良いぞ」
「本当にお前は照れ屋だな。そんなに女の子に興味はないくせに無理すんな」
「ち、違うし。照れてなんかいないし。最近、むさ苦しい男とばっかり絡んでるから、可愛い女の子に癒されたいだけだし」
「まあ、うちのクラスの女子はアレだしな」
モノマネが流行り過ぎて、元の顔が思い出せない。
スキルを禁止されてても、セロテープで変顔をしたり小道具まで用意しているからな。
こっそりガチャミに確認したのだが、物真似師になるとモノマネをせずにはいられなくなるからだと。
直接それを教える事が出来ないジレンマ。
一応、コーチャンに教えておいたから、その内にギルドのホームページに載ると思うので、それを見ればモノマネブームも落ち着くだろう。
ガチャミも前はステータスを見ないと教えられないとか言ってたが、職業の名前が判ってたら説明出来るんじゃないかと言う、コーチャンのツッコミで面倒臭くて言ってただけと判明した。
3日間オヤツ抜きの刑に処したら、激ヤセしたのにビックリした。
三食与えていたのに妖精のオヤツ依存率が高過ぎる件。
しかしこれにより、職業リストを元にガチャミの説明を入力すると言う、新たなバイト収入を得た。
隙間時間でチョコチョコやるだけで良いので、時間の拘束がないのに報酬が高いのは、今のところ俺しか出来ない仕事だからだ。
ガチャミは、文字通り飴を与えていれば張り切って教えてくれるので、とてもチョロい。
「兎に角、ヨーへーは明日の講習を頑張れよ」
「わかってるよ。それじゃ、またトークで報告するよ」
「わかった。それじゃあな」
「おう」
マンションの下で別れた俺は、傘を忘れていた事を思い出して引き返す羽目になった。
雨が止むと傘を忘れるなんて、誰でも1度はやるだろ!
笑っているが、ヨーへーなんて学校の置き傘が3本になって、最後はオバサンのピンクの傘で登校してたろ!