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メロンメロン

 土曜日は、小雨が降っていた。


 お昼が春雨サラダだったのは、特に関係ないと思う。


 ヨーへーは歩いて数十秒の距離に住んでいたのだが、離婚後は小学校の隣にあるマンションに引っ越したので、そこまで歩いて行く事にする。


 中学の時から愛用している傘は、内側からだと透けて見えるので視界が塞がらない便利アイテムだ。


 外側をよく見ると小さな光が銀河のような渦巻きを描いている。

 本当に小さな光なので、一見すると青色の傘にしか見えないんだけどね。


 小学校に行くまでにある公園に差し掛かり、よく道草をした事を思い出す。

 3年しか経ってないのに懐かしく感じるな。


 小学校までは歩いて15分くらいだったはずが、10分くらいで到着したので自分の成長を感じる。


 決して道草してたから遅かったのではない。

 身長が伸びて足が長くなったから早くなったのだ。


 ヨーへーがマンションに引っ越しした時は、ギリギリまで寝れるから羨ましかったもんだ。


 インターホンを鳴らすと、ヨーへーの声がした。


「どちら様ですか」


「俺、俺」


「俺様ですか」


「そうだ、俺が俺様だ」


「なんでやねん」


 ガチャっと開いたドアに素早く足を挟む。


「どこぞのヤクザか」


「なんて偏見。ひょっとしたら、生き別れの兄弟が感動のあまり勇み足をしてるとかかもしれないぞ」


「そんな天文学的な確率を想定するな」


「まあまあ、要兵衛ったら何してるの。早く朱鷺君を入れてあげなさい」


 リビングからやって来たオバサンに、手土産を渡す。


「雅美さん、お久し振りです。お邪魔します。これ母からです」


 こうして見ると、ヨーへーはオバサンに口元が似てるな。


「あらら。私の方こそお礼をしないと駄目なのに悪いわね」


「父が偶々いっぱい手に入れたので、気にしないで下さい」


「朱鷺君たら礼儀正しくなったのね」


「俺も高校生ですから」


 女性にオバサンと言ってはいけない事くらい解っているよ。

 せいぜい小学生くらいまでしか許されない呼び方だ。


「要兵衛にも見習わせたいわ」


「俺も敬語くらい使えるよ」


「それは知ってるわ。ちゃんと挨拶が出来てるかよ」


「ちゃんとしてるよ」


「要兵衛君も学校ではちゃんとしてますよ」


「まあ、本当に?女の子にだけ良い顔してるとかじゃなくて?」


 いかん、地雷を踏まないように気をつけてたつもりが、学校はNGワードだったか。


「いやいや、男子にも人気だし外部生とも仲良くしてて、俺も見習いたいと思っていますよ」


「ふーん。まあ、彼女はいないって言ってたし、朱鷺君に免じて信じてあげるわ。でも、2人とも八方美人は駄目よ」


 ちょっと目のハイライトが消えかけたが、ヨーへーが言ってた通り、彼氏が出来たからか昔より穏やかになったね。


「ハイ、わかりました」


「わかってるよ」


 よし、第一段階クリアだな。


 リビングのソファーに座ると、お茶とお菓子が出てきた。


「早く食べてみたいから、お持たせで悪いわね。もし良ければバウムクーヘンもあるけど、どうする?」


「あ、俺もまだ食べてないんで、こっちを頂きます」


 ちゃんと余分に入れてあるからね。

 なんなら育ち盛りなので、昼を食べてから1時間しかたってなかろうが両方食べれますよ。


「おお。もしかして迷宮メロンパフェか?」


「そう。ちょうど出始めたからね」


「ダンジョン産の果物は安い物もあるが、スイーツはなかなか出回らないから高いんだよな」


 回復効果とか付いてるからね。

 因みにメロンは精神耐性の効果だ。

 オバサン対策じゃないよ、偶然だよ。


「旬の時期じゃないと出ない物は、本当に高いわよね。旬を過ぎると、時間停止しておいた物しか手に入れる事が出来ないから、高く売れるせいで旬なのに出回らないもの」


 季節に関係なくドロップする物もあるが、果物を使ったスイーツ系は期間限定な物が多い。


「確かにそうですよね。うちは基本、旬の時期にしか食べないので、いっぱい取れた時は売るか配るかしてるんですけど」


「八女家は贅沢だね」


「そんな事はないだろ」


「普通は迷宮メロンなんて、一生に一度くらいしか食べられないんだぞ。1玉が20万円を下らないんだから」


 そうだったのか…ヤバい我が家では毎年2~3個は食べてるぞ。


 半分は生で食べて、残り半分は母さんがお菓子を作ったり凍らせてシャーベットにしたりと色々やるから、ノルマがキツイ時もあるとか言えない。


 母さんが作るお菓子の方が美味しいから、迷宮メロンパフェはハズレアイテム扱いとか絶対に言えない。


 これも父さんが、毎年ギルドの指名依頼を受けているからだ。


 迷宮メロンの更に上の、迷宮クラウンメロンを目当てに毎年依頼が来るんだよ。


 レアドロップだから、なかなか難しい依頼なんだけど、ニュースで大統領との会食だので出てくるから、依頼主は言わなくても想像がつく。


 父さんは、どんな依頼でも二泊三日までしかやらないから、1度に受けるのは5個までって決めているみたい。


 依頼数より多く取れる事は滅多にないので、俺もクラウンメロンを食べたのは1回だけだ。


 依頼以外のドロップはパーティーメンバーで山分けなので、メロンパフェはいつもは売ってるんだけどね。


 今回はヨーへーの家に行くと言ってあったから、手土産にちょうど良いと持って帰って来ただけだよ、本当だよ。


「やっぱりダンジョン産は旨いな」


「本当にね。甘いのに後味は爽やかで、喉が渇くような事もないんだもの」


「喜んで貰えて良かったです」


「それじゃあ、そろそろ朱鷺君のお話を聞かせて貰おうかしら?」


 いよいよメインイベントだ。

 ヨーへーの探索許可をゲットするぜ!

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