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キャラが濃すぎる同級生達

 勝手にキャラを想像していると、第一同級生が教室に入って来た。


 ふむ。

 なんて絵に描いたようなモブなんだ。

 存在感の薄い黒髪で前髪長めのマッシュルームカットのフツメンだ。


 こんなヤツ中学にいたっけ?


 見た覚えがないから外部生かもしれないが、一度も同じクラスになった事がない可能性も否めない。


 黒板に貼られた席順表を見て、自分の席を探すように見回したところで、漸く俺の存在に気付いた。


 あ、無意識に気配を消してたわ。


「あ、おはよう」


 ビクッとしながらも普通に挨拶をしてくるとは、なかなか肝が座っているな。


「おはよう」


 俺も挨拶を返したが、内心ではこの後どうしようか悩んでいる。

 名前を聞くべきか、でも万が一にでも顔見知りだった場合に気まずい。


「えと、君は中学からの持ち上がり組かな?」


 向こうから話しかけてくれて助かったな。


「ああ、そうだよ」


「僕は猿喰(さるはみ)(さとる)。漢字は猿カニ合戦の猿に、口偏に食べると書く方の()うって字でサルハミ。名前の方は孫悟空のゴでサトルと読むんだ。隣町の中学出身だよ。これからよろしくね!」


 ヤバい。

 見た目と違って、滅茶苦茶コミュニケーション能力が高い。

 ニコッと笑って握手までされてしまった。


「ああ…よろしく」


「えと、君の名前を教えてくれるかな?」


「ああ、俺は八女朱鷺だ」


「ヤメトキ君?どんな字を書くの?」


「ああ、数字の八と女でヤメで、トキは鳥の名前そのままで、朱色のサギって書く方の漢字」


「そっか~。ならトキって呼んでもいい?僕の事はササって呼んでくれると嬉しいな」


ササって、猿喰のサと悟のサって事か?


「ああ。わかった」


 さっきから、『ああ』ばっか言ってる気がするが、この一言は俺の心の壁が現れているのだ。


 普通はグイグイ来られると引いちゃうだろ。

 ワンクッションおかないと、何か嫌だな~って気持ちが出ちゃうので。


 それにしても、普通は八女って言っただけで、もしかして?とか言われるのに、コイツはそんな素振りがない。


 まさか爺ちゃんを知らないとかないよな?

 歴史の教科書でも出てくるし、テレビでも好きな探索者ランキングとかで取り上げられる事もあるのに。


「あれ?そう言えば八女ってどこかで聞いた事があるような?」


 そうだろ、そうだろ。


「ああ…まあ、同じ学校にいれば直ぐにわかるから教えるけど、俺の祖父が有名人だから。八女巧乃って聞いた事があるだろ?」


「ヤメタクナイ…タクナイ・ヤメ?まさかミスターダンジョンサーチャー!?」


「ミスターなんちゃらは知らないけど」


「史上最悪のランクSダンジョンを攻略し、世界で初めてS級を与えられたタクナイ・ヤメと言えば、ミスターダンジョンサーチャーまたはダンジョンスローターの愛称で呼ばれる人でしょ!?」


 迷宮大虐殺(ダンジョンスローター)とは物騒な愛称だな!?


「愛称は知らないけど、それなら爺ちゃんの事だな」


「オーマイガー!」


 いきなり外国人みたいに叫んで、マッシュルームカットを掻き乱し出したぞ。


 なにやらブツブツと小声で喋ってるが、何を言ってるのか解らない。


 関わらない方が良さそうなので、とりあえず廊下に逃げ出した。


 隣の教室から顔を出していた女子と目が合ったけど、サッと引っ込んでしまった。


 チラホラと廊下にいた生徒も、そそくさと教室に入って行く。


 あの叫びは俺じゃないから!

 変な人を見る目は止めて!


「お、朱鷺じゃん。おはよう」


「ヨーへーか…おはよう」


「どした?朝から疲れてるみたいだけど」


 斯々然々と説明する。


「へえ。面白そうなヤツだな」


「どこがだよ」


「ん?だって八女家の事を知らないなんて、この辺のヤツじゃモグリだろ?巧乃さんの事を知ってるのに、海外での愛称が真っ先に出てくるなら、外国に住んでたんじゃね?それでなくても、日本人ならオーマイガーとか言わないだろ」


「なるほど…お前って意外と頭が良いよな」


「意外とは余計だ。推理小説が好きだから、人の言葉の裏を読むが癖なんだよ」


「嫌な癖だな」


「わははは。そんな俺の事が嫌いじゃないくせに」


「あ、そっちの気はないんで」


「俺もないわ」


「ところで、ヨーヘーは何組なんだ?」


「切り替え早いな。だが嫌いじゃない。Dだよ」


「なら一緒のクラスだな。でも距離を置かせてくれ」


「だが断わる!」


「なんでやねん!」


「だって朱鷺きゅんと離れたくないんだもん」


「キモい!」


「酷い!でも、そこがイイ」


「さて、教室に入るか」


「だな」


 いつものノリを適当に切り上げて、変な顔をしてる人達の視線を振り切る。


 ヨーヘーは幼稚園からの腐れ縁で、黒歴史も知り合う仲なので、ついつい自分をさらけ出してしまう。


 いかん、中学はクラスが一緒にならなかったからクールキャラで過ごしていたのに、コイツと一緒だとキャラが崩壊する。


 こらそこ!同小のヤツらにはバレているとか思っていても、言ったら駄目だからな!


 既に意気投合している猿喰とヨーヘーに、若干のジェラシーを感じながら人物観察を続ける。


 アンボーイズみたいなヒョロガリや、山中きんに君みたいなマッチョなど次々と教室に入って来る。


 まさか、あのマッチョは職業をセットしているからじゃないだろうな?


「おはよう」を連発しながらも、やたら濃いキャラの同級生に戦く。


 ウメコ・デラックスっぽい女子?とか、バリトンボイスの白ちゃん似の男子は語尾にシンとか付けてるし。


「あれ?もしかして朱鷺は知らなかったか?」


「ヨーヘーは何か知ってるのか?」


 訳知り顔がムカついたが、何か知ってそうな幼馴染みの話に乗る。


「ああ。去年の3年B組で流行ってたんだよ」


「何が?」


「モノマネ」


 何だって?


「だから、モノマネだよ」


「それはわかったけど、何でそんなものが流行ってたんだよ」


「ほら、お前も知ってるだろ?羽高(はだか)の事は」


「あのモノマネの上手いヤツか?」


「そうそう。アイツがモノマネのコツみたいなのを教えてたら、何故か流行ったらしいんだよ」


 どうやら、1年の時から教えてた友達もモノマネが上手くなったから、皆でやってたら受けて文化祭でもやってたらしい。


 そう言えば俺も文化祭の出し物は見たな。


 そうしたら、職業に何人か物真似師が出てて、一大ブームになったそう。


 なんでも、物真似師になれば1度でもモノマネをしたら、次からは小道具がなくても変身出来るんだとか。


 それで、今クラスにいる有名人に似てるヤツは、物真似師になってモノマネをしてるって事か…


 なんでやねん。

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