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モグラは土竜

 ドラゴンの咆哮らしき声が大きくなって来たから、スピードを落としてゆっくり近付く。


 木が邪魔で見えなかったが、思ったよりも小さめのドラゴンのようだ。


 まあ、ランクDダンジョンで木より大きいドラゴンとか出たら、イレギュラーとしても異例になってしまうからね。


 今までのイレギュラーは、そのダンジョン内に出てくるモンスターである事が殆どだ。


 もちろん異例は過去にもあったんだけど、その場合でもダンジョン内のモンスターの上位種だったはず。


 例えば、ランクEのゴブリンが出るダンジョンでゴブリンジェネラルが出たとか、そんな感じだ。


 それで言うと、この森林ダンジョンに竜種はいないはずなんだよね。


「多分ラージモールだな」


「え?」


「モール種はドラゴンの系統と言われているんだよ」


 コーチャンの説明によると、ボス部屋でビッグリザードのお供にラージモールが出て、更にランドドラゴンのお供がビッグリザードだったりするから同じ系統だと言われているんだそう。


 もちろんボスが必ず同じ系統のモンスターと一緒に出る訳ではないが、ボス自体はダンジョン内に出てくるモンスターの上位種と決まっているからだ。


 他のモンスターの系統を考えると、モール種はドラゴンの仲間と言う結論になるんだそうな。


 でも単純にモグラは漢字だと土竜だからじゃないかと言う説もあるそうだ。


 結局はダンジョンの悪巫山戯は深く考えたら負けって事さ。


 兎に角このダンジョンで他にドラゴンの系統になるモンスターがいないので、高校生(ハーレム)パーティーが見たドラゴンはランドドラゴンの可能性が高いって事だ。


 ランドドラゴンは土属性のドラゴンで、岩のような体表をしているから物理攻撃に強いとのこと。


 逆に魔法攻撃に弱く、特に水と火が弱点らしい。


 ニコニコしながら教えてくれているが、ドラゴンが目の前まで来てるよ!


「良かった。普通のランドドラゴンだね」


 普通じゃないランドドラゴンがいるの?


 黒っぽいのは取り込んだ土の色の影響で、黄色っぽいとか白っぽいとか色々いるけど全部普通のランドドラゴンだって。


 普通じゃないのは、鉱物を取り込んだ体表のせいで魔法攻撃にも強くなるんだとか。

 判別はメタリックに光ってるかどうかだよって、悠長に説明してないで早く倒してよ!


 普通のランドドラゴンでも、俺だと死ぬからね!


 蜥蜴をそのまま大型バスくらい大きくして、岩の装甲を着けたようなゴツゴツしたフォルムは迫力満点だよ。


「それじゃあ、やるわよ。氷結地獄(コキュートス)


 リンちゃんが技名を叫ぶと辺り一面に霜が降り始め、ランドドラゴンの足や背中が凍っていく。


「グオーン!」


 ランドドラゴンが暴れるが、足が地面に張り付いたようになっているから、ただ身体をグネグネさせているだけに見える。


「さぶっ」


 今まで感じた事のない寒さに震える。


 温度耐性はあってもレベルが低いから、リンちゃんの冷気は俺のHPも削っているよ!?

 0度くらいまでは平気だけどマイナスはらめー!!


「大丈夫だよ」


 イケボと共にフワッと温かくなる…って、どさくさ紛れに抱き付かないで!


「トキを寒さから守るためだよ」


 いや、普通に結界でも張ってくれれば良いでしょ!

 ほら、爺ちゃん達が白目で見てるじゃないか!


「ちぇー、我が儘だなぁ」


 振りほどいて抗議すると、理不尽な言い掛かりを付けられた。


 でも俺の力で振りほどけるくらいなんだから、巫山戯ているだけなのは解っているぞ。


 パチンと指を鳴らすと温かくなったから、ちゃんと結界を張ってくれたようだ。


 イケメン+指パッチンなんて…

 気障な仕草が似合うとか、女子が惚れてまうやろー!


「もう、最初からそうしてよ!」


「いやー、照れてるトキが可愛くて」


「照れてない!嫌がってるんだよ!」


「ほら、イチャイチャしてないで、さっさと止めを刺してよ」


「リンちゃん!?イチャイチャなんてしてないからね!」


 風評被害で訴えるよ?


 念のため減ったHPをポーションで回復しておく。


 しかし、このメンバーなら苦戦なんてしないと解っていたけど、本当にあっという間だったね。


 目の前で半分…いや3分の2くらい凍り付いたランドドラゴンを見ると、本当に恐ろしいな。

 冷気の余波だけでHPを削られるはずだよ。


 ドラゴンを眺める機会なんてないから近くで眺める。

 見上げると口が開いてしまうのは自然の摂理。


 全体に白く粉を吹いたように凍っているが、背中や尻尾がピクピクと動く度に氷の欠片が落ちてくる。


 喉元や腹は凍っていないから、呼吸に合わせて動いているのが見える。


 止めを刺せるように凍らせる場所を選ぶなんて器用だよね。


「ほら、早く止めを刺さないと溶けちゃうわよ」


「逆鱗なら今の朱鷺でもいけるだろう」


 父さんが喉元にある、1枚だけ銀色に光る逆さに生えた鱗を指し示す。


 ドラゴンに逆鱗と言う判りやすい弱点があるのは、世間のイメージ通りだからかな。

 元々は逆鱗に触れると竜に殺されるとかだったはずなのに、いつから弱点のイメージになったのか知らないけど。


「何で俺が止めを刺すの?」


「そりゃあ、強運パワーにあやかる為だな」


 だと思った。


「ふうぅ…」


 息を整え鯉口を切る。


「シッ」


 うっ、硬い。

 この刀はガチャで出たCランクの魔鋼製だから、ランクDのモンスターなら余裕なんだけどな。


 ランドドラゴンはランクBだから攻撃が効かない程の差はないのだが、物理耐性が高いから下手な攻撃をすると刃が折れる。


 今の俺では標的が動いていたら絶対に無理だったわ。


「ギャオーン!!」


 これぞ断末魔って感じの叫び声に耳がキーンとなる。

 身体を仰け反らせたせいで、凍った足や胴体が割れている。


「わわっ」


 こっちに倒れてくるかと思ったが、その前に煙のように消えた。


「ふむ。まあ合格点じゃな」


「まあまあだな」


「トキ、カッコ良かったよ!」


「あの小さな男の子が強くなったわねぇ」


「爺ちゃんも父さんも厳しいよ!リンちゃん、ありがとう」


「トキ、俺には?」


「ドウモアリガトゴザイマス」


「なんで片言なのさ」


 それは胸に手を当てて考えてくれたまへ。

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