狐と狸は永遠のライバル
ここの話から段落1文字下げを使っています。
時間が出来たら他も修正していこうと思います。
少し狭くなった道を進みながら、遭遇したモンスターを倒して行く。
3匹目の芋虫でようやく剥離ポーションをゲットする事が出来た。
1階はあまり探索者がいないのかリポップしたのか判らないが、結構な頻度でモンスターに遭遇する。
芋虫の他には、狸っぽい見た目のレッドラクーンが出た。
名前の通りの赤い狸は、青々とした森では目立つので何でその色なのとか、狸と狐の色が逆じゃないかとかは思ってはいけない。
秋なら保護色になる想定なんだよきっと多分メイビー。
そんな感じでダンジョンの悪巫山戯に眼を瞑りながら進んでいると、泉がある広場に出た。
直径3メートル程の小さな泉から溢れた水は、小川となって森の奥に流れている。
斧を投げ入れたら女神が現れたりしてと思いながら、そっと覗き込むと澄んだ水底が見えるが生き物はいなさそう。
HPが回復するなんて事はなく、普通の水だが飲用可能だとか。
回復する泉があるダンジョンも存在するらしいけど。
「安全地帯になっているから、少し休憩しようか」
素早くトイレを設置したコーチャンは、更にテーブルと椅子を出してアフタヌーンティーのようなセットまで出している。
早速トイレを済ませて席に着くと、さっとアップルティが出てくる。
いつもながら完璧なタイミングだ。
喉を潤してからチョコチップ入りのスコーンを噛ると、疲れた身体に優しい甘さが染み渡る。
ガチャミに知られれば五月蝿そうだが、ステータス画面を開かなければ無問題。
小さなタルトも色んなトッピングがあって迷うが、レモンクリームを使ったものにする。
クリームチーズとレモンの風味に、タルト生地のサクサク感がたまらないね。
「さて、初めてのランクDダンジョンはどうでしたか?」
早良さんモードのコーチャンの質問に、タルトを飲み込みながら俺も真面目に答える。
「D級からはパーティー推奨なのも頷けました」
芋虫の糸にやられたらソロだと詰むし、狐も見張りがいないと採取に集中できない。
単体なら問題ないが、2階からは複数で出てくる事もあるから、よほどスキルに恵まれていないと厳しい。
と、ギルドの講習でも言っていた事を実感したと伝える。
「そうですね。スキルに恵まれた子に多いのですが、E級ダンジョンを簡単にクリアしてしまうと、D級でも余裕だと思いがちになります。でも、ダンジョンのランクが上がると言うのは、思ってる以上にレベルが違うんです。そのためギルドでは、D級からは3人以上のパーティーを推奨しています」
まだ森は道沿いしか通っていないが、中まで入るとなると、索敵は今まで以上に困難になるのも理解出来る。
前後左右を警戒するなら、最低3人いればカバー出来るって事だ。
もちろん浅い階層ならと注釈が付く。
階層が深くなると森林も深くなって視界が効かなくなるし、木の上や空から攻撃してくるモンスターも出てくるからね。
索敵スキルとかを持ってるメンバーがいれば一番いいけど。
きっと職業が斥候みたいな人もいるだろうから、これからはRPGみたいなメンバー構成になっていくかもしれない。
「今はオレ達と一緒だから良いけど、もし友達と探索をするなら、索敵系のスキルがなくても大丈夫なようにしておかないとね」
コーチャンに戻る切り替えの速さに呆れながら、高校に通うようになったら、同級生ともダンジョンに行くように言われている事を思い出す。
レベル違いの探索者とばかり行動すると、やはり本当の意味での実力が付かないからだって。
パーティー斡旋のマッチングアプリは、詐欺もあるから気をつけてって…友達くらい作れるわ!
いやほんと、初対面ではなかなか打ち解けられないけど、時間をかけたら大丈夫だから。
ちゃんと学校でもボッチにならない程度には友達もいるからね!
そんな感じでお茶をしながら、コミュ障の心配をされていると、急に俺を除く全員が同じ方へ向いた。
「どうしたの?」
俺も皆が見てる方向を確認するが、誰かが入って来た訳ではなさそう。
「ふむ、どうやら当たりのようじゃな」
「これは珍しいな」
どうやら爺ちゃん達は何かに気付いたみたい。
「やだ、ついてるわねぇ」
「凛花さん、喜ばないでよ」
「え~だって、凄くラッキーでしょ?」
「ギルドとしては頭が痛いですよ」
「ちょっと俺にも解るように説明してよ!」
コーチャン達も直ぐに解ったみたいなのがもどかしくて、俺が叫んだ時に誰かが駆け込んで来た。
「ま、間に合った」
「あぁ、助かった」
「ハァ、もうダメかと思った~」
そこには高校生くらいの男女3人がいた。
全力疾走をしたように息を荒らげて座り込んでいる。
安全地帯はここの様に周りが壁に囲まれていなくてもモンスターが入って来ないのは、ダンジョンとは結界で隔離されているとか別空間になっているからだとか言われている。
そのせいなのかは判らないが、出入口に近付かないと外も中も双方向で見えないし、入れない仕様になっている。
だから、3人が入って来るまで俺には全く見えなかったのだが、爺ちゃん達は見える前に気付いたって事だよね。
でも、高校生達が来たのがラッキーなの?
どゆこと?
俺が頭にクエスチョンマークを浮かべていると、コーチャンが3人に近付いて行く。
「何があったか聞いても良いかな?」
イケメンスマイルだけど、何だか有無を言わせない圧力を感じる。
しかし、やけにびくびくしながら教えてくれた内容に、俺も驚きを隠せなかった。




