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芋虫は尻じゃなくて口から糸を出す

ふう…

リンちゃんのお陰でコーチャンの暴走が止まって良かったよ。


子供の頃の恥ずかしい話は、普段なら同情するところだが、今回に限っては自業自得なので知らないよ。


いつかまた暴走した時に、このネタは使わせて貰います。


「光成はトキが絡むと本当にポンコツになるな」


「なんでこんな子に育ったのかしら?やっぱりあの人の血かしらね」


「ああ。アヤツも凛花ちゃんが絡むと暴走していたのう」


「あははは。確かにな。それでダンジョンを1つ消した時は呆れたものだが」


「そんな事もあったわね。あれでダンジョン法に消滅の条件を追加する事になったのよねぇ」


「まあ、あれはあれで良い場所にダンジョンが移ったから、結果的に全てが丸く収まったからのう。ほんにアヤツは運まで味方にしておったわい」


「ああ言う所も光成は似てるよな。幸運スキルは持ってないのに、何故か運が良い」


「うるさいなあ。あんな無茶苦茶な親父と一緒にしないでよ」


「そう照れるなよ」


「照れてない!」


何だか恐ろしい話をしている大人達がいるが、考えたら色んな意味でヤバいので無視する。


俺としてはこのエリアもある意味で危険なので、さっさと毒消し草を採取して森側へ向かう事にしたい。


D級初心者向けの依頼である毒消し草の葉は、5枚で毒消しポーション1回分となるので、5枚単位での採取が推奨されている。


低い木の周りに生えてる事が多いので、近くの木に向かうと早速見つけた。


毒消し草なのに、毒々しい紫の斑点があるギザギザの葉っぱを、ナイフを使って茎から丁寧に切り取る。


手で千切ると葉を傷めるので、買い取り額が下がるといけないから、手間を惜しんではいけないのだ。


ここだけで20枚が集まったので切り上げる。


「それじゃあ森の方へ行くよ」


ワチャワチャしている大人達に声をかける。


「ああ、その前にお客さんだ」


父さんの言葉に周りを見ると、少し先の草が動くのが見えた。


良く見たらくすんだ緑色の塊が見える。


これはギルドの資料にあったグラスフォックスだな。


草の色に似た毛皮だから気付かず襲われる事がある。


ただし頭が良くないので、保護色を使って待ち伏せしていれば良いものを、やたらと動くため注意していれば発見は難しくないと言われている。


わざと気付かないフリで近付いて来るのを待って、飛び掛かってきた所をサクッと迎撃した。


せっかくの保護色も丸見えになるし、逃げ場もない空中に飛び出すのは、おバカな証拠だよね。


アナウンスでDチケット[D]をゲットした。

その後も2匹程倒して襟巻きと魔石が出た。


地図だと最初の道に戻って真っ直ぐ行くと、森の中に繋がる分かれ道があるので、そこへ進む事にする。


分かれ道から5分程進むと、森から新しいモンスターが現れた。


緑色の大きな芋虫であるグリーンキャタピラーだ。


全長80cmはありそうな芋虫は、頭をもたげて口から糸を吐き出してきた。


「うひぃ」


出会い頭だったので変な声が出た。


これまた保護色のため接近するまで判らなかったせいで、2メートルもない位置からの攻撃を完全には躱せずに、糸が左足にくっつく。


「うわっ」


バランスを崩しながらも何とか倒れずに踏ん張ったが、これは不味い。


芋虫が糸を引っ張ろうとするのを感じて、自分から飛び込む様に近付いて刀を逆袈裟に振り上げる。


「ピギッ」


芋虫って鳴くの!?

と言う俺の内心の驚きと共に、消えた後に残ったドロップで二重に驚いた。


「これは超レアドロップだね」


「フッ」


「ぶふっ」


「やん、可愛い」


芋虫から芋虫が出た。


何を言ってるかわからないよね。


いや、グリーンキャタピラーの超レアドロップも、ギルドの資料にはあったけどさ…


「なんで芋虫の着ぐるみなのさ!?」


「ダンジョンの悪巫山戯だろ」


「よくある話じゃな」


「可愛いから良いじゃない」


「トキには似合わないね。やっぱりこっちの方が…」


これを可愛いと言うリンちゃんのセンスが解らない。


コーチャンもウサ耳と尻尾を出さないで!


妙にリアルなアゲハチョウの芋虫を象っていて、質感も生物のような艶と柔らかさを感じるのが嫌だ。


顔と手足を出す穴が空いてるから、これを着たら芋虫人間の出来上がりだな。


ダンジョンで見かけたらモンスターとして討伐されそう。


「これって確か変身機能が付いているんだよね」


変身機能ってなんだよ…


「ああ。ビトーのヤツが面白がって一時期使ってたな」


「うむ。第3形態まであるとか何とか言ってたのう」


止めて!俺の中のビトーを壊さないで!

アレ?でも、そんな感じだった気も…痛たた…ヤバい思い出すな!


ふう…


「トキ大丈夫!?」


「大丈夫じゃないから、その話は止めてね」


アイテムボックスに芋虫を押し込んで、さっさと離れようとしたら、左足に着いたままだった糸で躓く。


あ、体液と一緒で倒す前に着いた糸も残るのか。


糸が垂れ下がったせいで足と地面が繋がってしまっているが、くっつくからナイフで切る事も出来ない。


仕方がないので、ホーンラビットの角でこそぎ落とすようにして角ごと捨てた。


ジーンズの裾に少し糸が残ったから、砂をかけて粘着力を殺しておく。

お気に入りだったのに…


「落ち込まないでトキ。またグリーンキャタピラーが出たら、剥離ポーションが出るかもしれないよ」


しょんぼりしている俺を慰めるコーチャンの言葉に希望が出た。


何故かダンジョンからは、倒した相手に対処するためのアイテムがドロップするんだよね。


毒攻撃するモンスターから毒消しポーションとかさ。


出来れば芋虫に遭遇する前のモンスターから、剥離ポーションを出して欲しいものだ。


気を取り直して、右手に刀を左手に太い棒きれを持つ。


太い棒きれは買い取り0円な上にガチャで結構出るから、捨てアイテムとしても痛くないし、ある程度のリーチもあるから、これで糸を受ければ芋虫なんて恐くないぞ。


これはフラグじゃないからね!

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