それはホラーに違いない
ダンジョンを出て今日は買取カウンターで買取処理をする。
コーチャンに買い取って貰う方が早いけど、普通の手続きも覚えないとね。
まずカードを渡して取得物を提出する。
これは通常はパーティーメンバー全員でするのだが、特例法の対象である俺は1人だ。
ダンジョンで手に入れた物はギルドを通さないといけないから、カバン等に入れている物も全て調べられる。
ランクEではそんなに大したアイテムはないのだが、危険なアイテムの規制や不法な取引をさせない為なので仕方ない。
あ、オヤツとか見られたら不味い物はストレージに入れてあるよ。
犯罪者みたいだけどギルドの許可を貰ってるから問題ない。
提出したアイテムを査定するのは、あっという間だ。
カウンターが魔道具になっていて、載せるだけでデータと照合するのだ。
ここで照合したアイテムには、魔道具に反応するマーキングがされているらしいが、防犯の為に詳細はわからない。
マーキングされていないアイテムが市場に出ると調査するんだってさ。
コーチャンの端末にも同じ機能がついてるんだけど、万能が過ぎる。
照合したアイテムの買取一覧表が魔道具に表示されるので、そこから【持帰】か【買取】か【競売】のどれかにチェックを入れると、持帰のアイテムは返却される。
持帰は、高額な物や許可制の物など一部のアイテムは誰が所持するかも指定しておく。
競売…つまりオークションに出した方が高く売れるアイテムは、こちらを選択する。
もちろん必ずギルドの買取金額より高く売れるとは限らないし、手数料がかかるから考えてやらないと損をする。
最後に買取金額の合計が表示されるから、それで良ければカードに入金される。
ギルドの規定で報酬は人数割を基本としているので、誰それのカードに多く入れろとかは出来ない。
現金での支払をしないのも、報酬の分配で不当な扱いをさせない為だ。
割り切れない端数は、リーダーに入金される。
流石に数円くらいで文句は言わないだろう。
但し、持帰にしたアイテムの分配はパーティーに任せているので、そこで揉める事はある。
そんな時はアイテムの金額を、他のメンバーに支払う事で解決するのが一般的だ。
お金は人を狂わせる事があるので、条件はきちんと話し合わないとね。
俺の場合は暫くそんな心配はなさそうだけど。
買取合計は6800円だった。
ポーションと団子は売らなかったが、土が良い値段になったから、E級の1回の稼ぎとしては破格の金額だ。
時給3千円を越えたよ。
今日はここで解散になった。
「トキ、また明日」
「コーチャン、またね」
『今日のトキはカッコ良かったなぁ』
『ありがと』
『特にラージモールを倒した回し蹴りは、力の入れ具合も完璧だったよ』
『……それ本気で言ってる?』
『本気だよ!他のモンスターはオーバーキルだったけど、ラージモールは丁度良い攻撃だったからね』
あれは後ろを向こうとして、足が偶然当たったとは言えない。
『オーバーキルだったんだ』
『パンって音がしたり、吹っ飛んだりしてたからね』
『レベルアップとリザルトの弊害で、力加減が難しいんだよね』
『確かに急激にレベルアップすると、身体の使い方が上手く出来なくなるからね』
『暫くは勝負はやらない方が良いかな?』
『昨日みたいに勝負を連続でしなければ良いんだよ。でも、暫くオレや巧乃さん達とは勝負しない方が良いかな』
『そっか』
『今どの辺?』
『駅前の通りだよ』
『結構離れても念話出来るね』
『そうだね』
イヤーカフの有効距離を確認するために、念話しながら帰っているんだ。
『後はダンジョン内でも確認したいな』
『そう言えば、アイテムの念話とスキルの念話は違うの?』
『アイテムは物によるね。このアイテムみたいにセットで使うのもあれば、一方通行の物やパーティー全員で出来るのもあるよ。スキルの場合は、距離も短いし一方的に話すだけだね』
そもそも念話は、初期スキル以外で発現した人はほとんどいないそうで、データがあまりないんだって。
それはそうかも。
どうやれば念話が出来るのか検討もつかない。
誰かに凄く心の中で伝えたいと思うとか?
ある意味怖いよね。
ある日突然心の中に誰かが話しかけて来るんだよ?
それが知らない誰かだったりしたら、ホラーだろ。
『そろそろ家に着くから、イヤーカフは外すよ』
『えー!もっと話そうよ』
『コーチャン仕事があるんでしょ?』
『仕事しながらでも話せるよ』
『ちゃんと仕事をしてる早良さんは尊敬してたのにな』
『ちゃんと仕事をやります!でも寝る前におやすみは言わせてね』
『コーチャンおやすみ』
『今じゃないよ!』