「パパのお嫁さんになる」は父親の夢
「ちょっと脱線しちゃったけど、大まかな予定を説明するよ」
出来るだけ毎日ガチャの結果確認と、余ったアイテムの売買をする。
土日祝は好きな時で構わないから、ダンジョンに2~3時間入る。
ダンジョンではガチャアイテムの検証もやりながら戦う。
合間に職業の検証もする。
立会人は、最初の内はコーチャンとサブマスと父さんと爺ちゃんだけで回す。
ギルド側の2人が参加出来ない時は、サブマスの奥さんの舞菜香さんになる。
都合が合えば、記憶喪失中の人と顔合わせをする。
「朱鷺は中高一貫校だし、そのまま進学するって聞いてるから受験勉強はないよね?」
「でも試験の結果が悪いと補講があるし、母さんとの約束で勉強は疎かに出来ないよ」
「それなら試験前はオレがトキの家に行くようにして、家庭教師をやるよ」
「そんなの悪いよ。コーチャンは忙しいんでしょ?」
「大丈夫。優秀な部下がいるから」
「それって私と舞菜香にしわ寄せが来るって事じゃあ」
ボソッとサブマスが何か言ってるけど、イケメンスマイルの前に撃沈している。
「部下が優秀だから、いつも助かってるよ」
褒める上司は部下に慕われるとか聞くけど、コーチャンは慕われてるんじゃなくて、従われてるんだと思う。
「早良君、毎日は困るよ?」
「わかってるよ。試験前の週に2~3日だけにするよ」
「それより光成は家庭教師なんて出来るのか?」
「オレは全国模試で1位を取った男だよ?トキが望めば東大にだって入れてあげるよ」
望まないので遠慮します。
「朱鷺を甘やかす想像しか出来ないが…それと光に手を出したらわかってるな?」
「嫌だな。桜さんソックリだからって心配し過ぎだよ。それにオレは10も年下の子供に興味ないよ?」
「子供だから心配してるんだ。早良モードじゃなく、顔は変えて来いよ。光が惚れでもしたら責任を取って貰うからな」
え?コーチャン顔を変えられるの?
あぁ、グラマスの顔と違ってるもんね。
「ちょっと、ヒカちゃんの恋の責任までは取れないよ!だいたい惚れるかどうかもわからないだろ!」
「無闇に愛想を振り撒いてるから言ってるんだ。俺でも知ってるぞ?サワラーギルドとかアーリーグッド連盟だっけか。複数の熱狂的ファンクラブがあるそうだな。それだけの人を惚れさせてるって事じゃないか?」
サワラーギルドだけじゃなかった!
本当にモテモテだね。
「そう言えばマス姉もサワラーギルドとか言ってたな。コーチャンとマス姉って面識なかったの?」
「ああ、尚音のとこは前は関東に住んでいたから、光成と会った事はなかったはずだ。しかし尚音まで誑かすとは、ますます光に近付けられないな」
「誑かすとは人聞きが悪いな。オレは紳士な対応をしているだけだよ。それじゃあ、ヒカちゃんには塩対応にしようか?」
早良さんの塩対応とか、逆の意味でファンが出来そう…
と言うか、姉ちゃんの好みってビトーじゃなかったっけ?
そうだよ、ビトー特集を毎年見てるのも、姉ちゃんがファンだからじゃん。
あんまり顔は覚えてないが、ビトーもグラマスもガテン系イケオジだったような…
無精髭や顎髭が似合うタイプだよな。
未だに別人としか思えないが、コーチャンとグラマスが同一人物でビトーと親子なら、姉ちゃんの趣味にピッタリなのでは。
これ、コーチャンに釘を刺すつもりが、グラマスタイプで来たら逆効果じゃん。
父さんとコーチャンがヤンヤン言ってるのを見ながら、指摘するべきか悩む。
父さんに好みのタイプを教えたとか知られたら、姉ちゃんが絶対にキレる。
てか本人は俺に知られてると思ってないかも。
「八女君も早良君も落ち着いて。光ちゃんはビトー先輩が好きだから、早良君みたいなタイプに惚れないと思うよ」
サブマスェ…
何で言っちゃうの?
「なんだと?」
「別に惚れられたい訳じゃないけど、何でわかるんだよ」
そうだよ、何でサブマスが姉ちゃんの好みを知ってるのさ。
「子供の頃にビトーのお嫁さんになりたいって言ってたし、その頃の早良君の事は好みじゃないって言ってたから。女の子ってオマセだよね」
オマセの一言で片付けたよ。
この人は本当に残念キャラだな。
「なるほど。じゃあ、あの頃の好みじゃないオレなら文句はないだろ?」
ああ、確かに姉ちゃんはコーチャンと遊ばなかったのを思い出した。
ヒーローごっこが嫌いなだけだと思ってたけど。
「…それでいいから、顔は早良で来るな。他のヤツに見られると面倒だ」
父さんがブツブツと、ビトーみたいなヤツのどこが良いんだとか言ってるが、俺には解った。
無精髭のガテン系イケオジって、父さんも当てはまるって事がな!
姉ちゃんが小さい頃は、ダンジョンから帰って来た父さんの髭がジョリジョリするのを喜んでたのを覚えているよ。
まさか姉にファザコン疑惑が浮上するとは。