無敗の喧嘩王
お待たせしました。
投稿再開します。
「ま、まさか、その羽根とフォルムは…」
プルプルしながら指を差してるサブマス。
「そうです。クリスタルドラゴンの子供のシエルです」
「ドラゴンとか聞いてないよー!」
ダチョ…ゲフンゲフン。
「言ってなかったですからね」
「言ってくれよ!ど、ドラゴンってどうすればいいんだ!?飼っても良いんだっけ?あれ?小さいから良いのかな?え?小さい?本当にドラゴンなの?」
落ち着け。周章てすぎだよ。
「ちゃんとドラゴンですよ。育つと大きくなるけど、そうしたら大きさを変えられるようになるみたいです」
「…大きさが変えられる?…それなら、いいのか…?いやいや、そもそもドラゴンの従魔なんて聞いた事ないよ。秘匿情報に指定しないと…ああぁ、秘匿理由をどうしよう」
「大牟田も大変だな」
「解ってるなら代わってくれよ!」
「ははは。絶対に嫌だ。お前があの時OKしたのが悪い」
「まさか本当に10年以内にグランドマスターになるなんて思わないよね!?」
「あのビトーの息子だぞ?」
「そうだけど!非常識なのはあの人だけだと思うじゃないか。昔は普通の子供だったのに…」
「お前はどこを見てたんだよ…普通の子供は、たった2人で滅亡国のダンジョン制覇とかしないから」
確かに普通じゃないね。
「サブマスって、コーチャンと子供の頃からの知り合いなんですか?」
「あぁ、その、ダンジョンが出来た初期の頃に、ビトー先輩とパーティーを組んでいたんだよ。それで家族ぐるみの付き合いをしてて、光成君が生まれた時から知ってるんだよ」
「そうなんですね。あれ?ビトー先輩?」
「ああ、ビトー先輩とは高校が同じだったんだ」
「父さんはどこで知り合ったの?」
「俺と大牟田は中学は同じだけど高校は別で、ビトーは俺達の2個上だな。中学2年の時だったか?大牟田はその頃から見た目が強そうだから、ビトーに喧嘩を売られている所に俺が通りかかって、代わりにボコボコにしてやったんだよ」
ん?父さんとサブマスがなんだって?
「ははは。大牟田は俺と同級生だぞ?」
「ええ!?ホントに?」
「私が老けているのは解ってるよ。でもそんなに驚かなくても…」
「あ、すみません。えと、たぶん父さんが若作りなだけですよ」
「誰が若作りだ!」
「はは。昔から老けているって言われるから、気にしないで」
「ホントすみません。その、それじゃあ、父さんもビトーとパーティーを組んでたの?」
「まあな。ビトーはダンジョンが出来てすぐヒャッハーしてたから、俺もヤンチャをしてた頃だったし、誘われてダンジョンに入ったらハマってな」
ヒャッハーとヤンチャって…30年前なら俺と同じ歳くらいだろ?
ホントに何かやって爺ちゃんが揉み消したの?
「サブマスは止めなかったんですか?」
「ビトー先輩に逆らうなんて、私達の世代では考えられなかったよ」
どこの独裁者だよ!
「ああ、ビトーはこの辺のヤンキーのボスだったからな。所謂、番長ってヤツだな」
番長って実在したんだ…
「ステータスがなかった時でも喧嘩で無敗と言われてて、ついた二つ名が"無敗の喧嘩王"だよ」
二つ名とか中ニな病に侵されてるね。
「いや、アイツも負けた事はあるぞ。ただ、勝つまでしつこくリベンジしてたから、周りのヤツが揶揄して言ってただけだろ」
「父さんもリベンジされたの?」
「ああ。何度返り討ちにしても来るから、面倒になって親父に押し付けたら、思惑通り俺より親父に夢中になって助かったよ。親父も面白がって相手してたからな。最後には親父に弟子入りしてたし」
父さんも爺ちゃんも大概だよね。
「ただ、ステータスを獲得してからは、親父以外は勝てなくなったな。アイツのスキルは反則だよ。親父も色々と仕込んでたし。代わりに誰彼構わず喧嘩を売らなくなったのは、結果オーライとも言えるけどな」
「昔から猪突猛進を地で行く人だからね。凛花さんのおかげで落ち着いた時はホッとしたよ。でも、まさかあんな死に方をするとは思わなかったから、今でも先輩の冗談じゃないかと思ってしまうんだよ」
どんな死に方なの?
テレビではモンスターにやられて亡くなった、としか言ってなかったけど。
詳しい死因が公表されてないから、毎年される特集では都市伝説的な憶測で盛り上がってるし。
「悪いな朱鷺。凛花さんに口止めされてるから、ビトーの死因は言えないんだ」
そうなんだ。
でも気になるよ。
だって俺が記憶喪失になったダンジョンで、同時期に亡くなったんだよね?
痛っ。
まただ…何かが出かけてるのに…わからない…
ビトーや凛花さんの事は思い出せないから、その辺の記憶だと思うんだけど…
ビトー…凛花さん…
ビトー……ダンジョン………?
うっ…駄目だ……約束?
「朱鷺っ!」
「朱鷺君っ!」
…父さんと…サブマス?
「ピャー!」
……シエル?
『朱鷺~!』
………?