パーン
家に帰って姉ちゃんに俺達だけ焼肉なんてズルいと言われながら、リビングで家族団欒をした。
父さんが今度は家族全員で行こうと宥めて、姉ちゃんの追求を躱しているのを横目にニュースを見る。
昨日の騒ぎはどこへ行ったのかと言う程に、新しいシステムに馴染んだ人々がインタビューを受けている。
職業にお笑い芸人があったから芸人になるとか、歌手の職業があったから歌手デビューしちゃおう等と言ってる一般人を見ながら、微妙な気持ちになった。
同じ職業を持ってるからわかるが、大した事をしてないのに出てるから、それだけで現実の職業にはなれないと思う。
スキルを補強するのが職業の役割みたいに感じるんだよな。
職業をセットするとスキルを覚える場合もあるから、有用な職業もあるけど。
次の番組は母さんと姉ちゃんが見てる、アイドルグループの誰かが主演のドラマの時間なので、興味がないから部屋に行く事にする。
鍵をかけてガチャミの部屋を見る。
また寝てたよ…
焼肉屋で食事とデザートを食べさせたから、食っちゃ寝がデフォルトなのか?
ガシッと掴んでブンブンする。
『ぎゃ~!何するの~』
『さて、今日のガチャで出たアイテムで、持つだけで危険な物はないんだよな?』
あの時は時間がなくて保留となったが、呪いのアイテムとかあると嫌だからな。
『む~朱鷺はもっと優しさを覚えた方が良いよ~』
『ほお?焼肉屋で人に見られるリスクを冒して夕食とオヤツも食べさせた俺が、優しさを知らないって言うのか…なら、三食+オヤツを与えるような優しさなんて、なくても仕方ないよな』
『申し訳ございません~朱鷺は優しい主です~どうか御慈悲を~』
『わかれば良いんだ。それじゃあ、もう一度聞くけど今日出たアイテムとスキルに危険な物はないのか?』
『う~ん?危険はないけど~一部の高ランクのスキルは~覚えても使えないよ~』
『覚えても使えないスキルとかあるのか?』
『えとね~スキルに必要なステータスが~不足していると~使えないよ~』
『MPが足りないって事か?』
『ううん~体力とか全部の数値が足りないよ~無理に使うと~身体がパーンってなるかも~』
何それ怖っ!?
『普通は~ステータスに合わせてスキルを獲得するから~ステータスが足りない事はないけど~ガチャスキルは気を付けてって~』
あぁ、また言えない存在からのアドバイスか?
あれ?それじゃあ、初期スキルは大丈夫なのか?
『初期スキルはサービスで~ステータス値に補正があるんだって~』
それで当たりスキルだと初めから強いんだな。
『ステータス値に~依存しないスキルなら~関係ないけどね~』
ああ、幸運とかね。
『後は~初期スキルに必要なステータス値に追い付いたら~そこからは補正がなくなるって言ってるよ~』
最早誰かに聞いてる事を誤魔化さないな。
まぁ危険がないなら、詳しい内容は明日ギルドでする事にしてガチャをやるか。
装備とアイテムの10連チャンを1回ずつ回せたから、端数は持ち越しにする。
F1、E4、D6、C5、B4、A2だった。
またSが出る可能性が…まぁ今更か。
次はステータスを確認してみる。
コーチャンとの勝負で上がった時のまま、特に変わりはないな。
普通はそんな簡単にスキルは覚えないはずだもんな。
称号も変わりなかった。
妖精の粉を使ったから警戒していたが、何もなくて良かった…いやホント。
職業も増えてないな。
関係する行動とか周りのイメージ次第だから、むしろ職業の方が称号みたいだよな。
そう言えばゲームによってはサブジョブとかあるけど、それはないのか…
『ん~?サブジョブは~★3以上のジョブレベルを~MAXにしたらセット出来るようになるんだよ~』
な、なんだって~!?
この残念妖精!もっと早く言えよ!
と言うかジョブレベルとかあるのか?
それは言えない~ってまたか!
アプリでコーチャンにこれから電話しても良いか送ると、すぐに向こうから電話がかかって来た。
「トキ?何かあった?」
耳元イケボはヤバいな。
電話の声って機械で調整された声とか聞いた事があるが、信じられないくらい響くんだけど。
「実は…」
さっきガチャミに聞いた事を伝える。
「わかった。連絡ありがとう。それから、何もなくても電話してくれても良いからな」
「コーチャン忙しいんでしょ?そんなに電話なんて出来ないよ」
「今日の情報をまとめて指示をしておけば、後は部下がやるから大丈夫」
「またそんな事を言って。コーチャン…いや、早良さんが仕事を人任せにすると思えないよ」
「ふふ。バレましたか。でも本当に朱鷺君の連絡でしたら、いつでも待っていますからね?」
おぅふ。早良さんバージョンはヤバい。
負けるな俺。
「それじゃあ、またアプリで連絡するので、返事は時間がある時で良いですから、無理しないで下さい」
「ではそれを楽しみにしておきます。今日は予定と違う事があったので、疲れたでしょう?早く休んで下さいね。おやすみなさい」
くっ、囁き声とか卑怯な!
耐えろ!ここを乗り切るんだ!
「おやすみなさい、お兄ちゃん」
すぐに通話を切った。
…………ふっ………引き分けか……
俺の精神がパーンとなりそう。