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豚肉太郎と姉妹

 強い。強すぎる。三人がかりでまるで歯が立たないとは。

ザリウスもエリザベートも気を失っているようだ。

俺はそれでも、と立ち上がる。

「ふぅん。やっぱりお前から最初に殺すべきだね。姉さんを誑かしたクソ男」

カルラが俺に向かって手のひらを向けた。

「今度こそ死んで頂戴」

カルラの手のひらに魔法力が収束していく。

「フォトンレーザー!!」

カルラの手のひらから光線が発射された。

光線は正確に俺の腹を貫通する。

「ぐああああああ!!!!」

俺は倒れ、激痛で叫ぶ。

吐血して、意識が遠のいていく。

「くそぉ……」

俺は必死で起き上がる。

「しぶといわねぇ。でももう終わりよ」

カルラがとどめをさすために近づいてくる。

どうすればいいんだ……。

このままじゃ死ぬ。


「やめてカルラ!!」

ロゼの声が聞こえてきた。幻聴だろうか?

「姉さん?」

カルラの動きが止まった。

ロゼがこちらに向かって歩いてきていた。

「豚肉くんを傷つけないで!!」

ロゼだ。本物のロゼだ。

「姉さん。記憶は戻ったはずでしょう? まだそんなことを言ってるの?」

カルラが呆れた表情で言う。

「記憶は……戻ってるけど……」

ロゼは下を向いてしまう。

「なら、なんでまだそんなやつの味方をするの!? あなたは魔王軍四将のひとり! 人間の敵なのよ!?」

カルラがロゼを怒鳴りつける。

「それは……」

ロゼは黙ってしまう。

「アタシたちがいままでどれだけ人間に迫害されてきたのか、思い出したでしょ!!」

カルラの言葉に、ロゼは何も言い返せないようだった。

「わかったら、さっさとこっちに戻っておいで。一緒にこの世界を魔王軍が支配する世界に変えていこうよ」

カルラが優しい声でロゼに手を差し伸べる。

「………たしかに人間への恨みは思い出したよ。でも、豚肉くんは…豚肉くんだけは私の大切な人なの。だから、私は豚肉くんのそばにいたいの」

ロゼが真剣な顔でカルラの目を見つめながら言う。

「はぁ……。姉さんのわがままには困ったものねぇ」

カルラがため息をつく。

「どいて姉さん。そんな人間ことは忘れるの。忘れさせてあげる」

カルラが両手を広げる。

「やめてカルラ!! お願い!! もし本当に豚肉くんを殺そうとするなら、私は……」

ロゼは震えながらもカルラの前に立ち塞がった。

「……なんだっていうの、姉さん」

「私は、カルラと戦う」

ロゼは短剣を構える。

それを見て、カルラは悲しそうな顔になった。

「どうしてわかってくれないの、姉さん。アタシは姉さんが一番大事なのに、姉さんにとってはそうじゃないの!?」

カルラが涙を流し始める。

「カルラ………私は………」

ロゼも涙を流し始める。けれども短剣は構えたままだ。

「ひどい……ひどいよ姉さん……。変わってしまったんだね……」

「違うの、カルラ。私は、カルラとも戦いたくないよ。でも、豚肉くんだけは」

「やだやだやだ!! 認めない!! 姉さんがそんな男を選ぶなんて!!許さない!!」

カルラは頭を抱えながら叫んだ。

そして、カルラは魔法を唱え始めた。

「インフェルノ!」

カルラの手から炎が現れ、ロゼを襲った。

「………ッ!!」

ロゼは短剣で炎を切り払い、カルラに突進する。

「はああっ!!」

「くっ……」

ロゼの斬撃をカルラ受け止める。

「フォトンレーザー!!」

カルラは再び手から光線を放つ。

ロゼは光線をギリギリのところで回避して、カルラに接近していく。


「はああああああ!!!」

ロゼがカルラに斬りかかる。

俺は瀕死になりながらも、二人の戦いを見ていた。

ロゼとカルラが互角に戦っている。

まさかロゼがここまで強いとは思わなかった。記憶を取り戻したのが関係してるのだろうか。

「うぅぅ! なんで! なんでよ姉さん!!」

カルラが叫ぶ。

「カルラ! 私は……!」

「アタシたちは二人で一つなのに!! アタシたちにはお互いしかいないのに!!」

「それは間違っているよ、カルラ。私たちは、それぞれ一人だよ」

「そんなこと言わないでよぉ、姉さん。昔みたいに仲良くしようよ。アタシはただ、姉さんと一緒にいたいだけなんだよ」

「ごめんね、カルラ。それでも、私は豚肉くんのそばにいるって決めたの」

「やだやだやだやだやだやだやだやだ!!」

カルラが駄々をこねる子供のように叫び出す。

そして、カルラは魔法を唱えた。

「ライトニングボルトォオオオ!!!」

カルラの全身から雷が発生し、ロゼを襲う。

「キャアアッ!!」

ロゼが悲鳴を上げる。

「姉さんが悪いんだ! 悪い姉さんなんか、こうしてやる!!」

カルラはロゼに向かって走り出し、拳を振り上げる。

「やめて、カルラ!!」

ロゼは短剣でガードするが、カルラの力が強く、吹き飛ばされてしまう。

「きゃあああ!!」

ロゼが壁に激突する。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

ロゼが苦しそうに息をしている。額から血を流し、足下には赤い水溜りができていた。

「これで終わりよ、姉さん。さようなら」

カルラが両手を広げて魔法を唱える。

「カルラ………」

ロゼがゆらりと歩き出す。

カルラの周りにとてつもない量の魔力が漂っているのを感じる。

あれほどの魔力をロゼが浴びれば、ロゼの体は一瞬で蒸発してしまうだろう。

しかし、ロゼは歩みを止めなかった。

「ロゼ………」

俺は絞り出すような声でロゼを呼ぶ。しかしそんなか細い声がロゼに届くはずもなかった。

「姉さんが悪いんだからね……姉さんが!!!」

「カルラ………!!」

「フォトン・エターナルエクスプロージョン!!」

カルラの手から放たれた光線が、一直線でロゼに向かう。

しかしその瞬間、ロゼの姿が消えた。

「え………?」

「秘技………雪月花乱れ閃き!!」

ロゼの声が聞こえたかと思うと、無数の光の線がカルラの周りを取り囲んでいた。

そして、光の線は形を変えて、まるで花のように輝いた。

「あ、ああ、あ……」

カルラは言葉を失っていた。

光の花は、美しく散っていった。

「ごめんね、カルラ」

ロゼはカルラに優しく微笑みかけた。

カルラは全身から血を吹き出して倒れ込んだ。

「姉………さん………」


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