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豚肉太郎と再起

気がつくと、俺はベッドの上にいた。傷はすっかり塞がっていて、痛みもない。

ここはどこだろう。俺は起き上がり、辺りを見回す。

天幕のようだ。外は明るくなっており、朝になっていることがわかる。

「目が覚めましたか」

聞き覚えのある声がした。振り返るとそこにはエリザベートがいた。

「エリ……ザべート様……」

「太郎、何があったのです」

「…………」

俺は少しずつ、昨晩の出来事を話した。

「そんなことが……」

「俺は……逃げ出して…、その上ロゼまで失って……」

「ロゼは連れ去られてしまったのですね」

「はい……」

「太郎、自分を責めないでください。あなたはよく戦いました」

エリザベートは優しく俺の手を握る。

「でも……俺は……」

「太郎、騎士団は予定通りシャンディラ城目前まで迫っています。ここはそのために設営した天幕です」

「……はい」

「これから我々はカルラ率いる魔王軍との決戦に挑みます」

エリザベートが何を言いたいかは察せられた。

「俺にそれを手伝えと。一度逃げ出した俺に」

「えぇ。だからこそです。だからこそカルラを倒し、ロゼを取り戻さないといけません」

エリザベートの瞳には強い意志を感じた。

「俺は………」

「太郎。何を迷っているのですか」

「もしカルラを倒せたとしても、ロゼは戻ってきてくれるでしょうか」

ロゼが本当に魔族で、魔王軍幹部だとしたら俺たち人間とは敵対関係だ。

そして、魔族は人族の敵である。その事実を変えることはできない。

「太郎……」

「………」

「太郎、こっちを向いてください」

俺は言われるがままに、エリザベートの顔を見る。

『パァン!!』

頬に鋭い衝撃を感じる。俺は床に倒れこむ。

口の中に血の味が広がる。

「太郎、しっかりしなさい!あなたの大切なものはなんですか?それは魔王軍に奪われたままでいいんですか?」

「俺は……」

「答えてください。太郎はロゼを取り戻したくないのですか?」

「俺は……俺は……ロゼを取り戻したい!」

「なら行きましょう。私たちと一緒に」

「はい」

「では、私は先に準備をしておきます。太郎も支度ができたら来てください」

「わかりました」


エリザベートは天幕を出ていく。

俺は立ち上がると、自分の顔を両手で叩く。

「よしっ!」

ロゼを取り戻すために、そしてカルラを倒すため、俺は覚悟を決めた。

天幕を出ると、アリアがいた。

「アリアさん……」

「豚肉ちゃん。エリザベート様にひっぱたかれたみたいだね。せっかく私が回復してあげたのに」

「やっぱりアリアさんがまた回復してくれたんですね。ありがとうございます」

「ふふふ。それじゃあ、早くエリザベート様のところに行ってあげて」

「はい」

俺はアリアに別れを告げると、エリザベートの元に向かう。

エリザベートはすでに甲冑に身を包み、出陣の準備を整えていた。

「太郎、遅いですよ」

「すみません。ちょっと寝ぼけてました」

「まったく。さぁ、急ぎますよ」

「はい」


王国騎士団はシャンディラ城に迫りつつあった。

遠目からでも、シャンディラ城の城門前にモンスターの軍団を確認できる。

「全軍、戦闘態勢!!」

ザリウスの号令により、王国騎士団が陣形を組む。

「突撃ー!!!」

「おぉおおおおおおおお!!!!」

怒号が響き渡る。

騎士団が魔王軍へと向かって行く。

しかし、魔王軍は慌てる様子もなく、迎撃する。

まず、前線に魔法部隊が攻撃を開始する。

火の玉や氷柱が降り注ぐ。

「怯むな!進めー!」

防御魔法を展開した騎士団は魔法の雨をものともせず突き進む。

騎士団はどんどん魔王軍へ近づいていく。

騎士団は魔王軍に到達すると、そのまま押し込んでいった。

魔王軍の前衛が崩されていく。

「このまま一気に攻め込むぞ!」

ザリウスの指示でさらに勢いづく。

「今こそ好機!!魔王軍を殲滅せよ!!」

騎士団は魔王軍を押し込み、ついにシャンディラ城の入り口まで到達した。

俺とエリザベート、そしてアリアは後方で待機していた。

「我々が優勢のようですが、カルラはまだ出てきませんね」

「はい。カルラはどこにいるんでしょうか」

カルラは前線に出てこなかった。

彼女が出てくれば大きく戦況が変わるだろう。

「必ずカルラは出てくるはずです。彼女は魔王軍四将の一人。ここで出なければ示しがつきません」

エリザベートはカルラが出てくることを確信しているようだ。


その時、

『ズドォオオオン!!』

シャンディラ城の壁が爆発したのだ。

土煙の中から現れたのは、巨大なドラゴンだった。そのドラゴンはカルラの召喚獣だ。

「カルラめ……。やはり出てきてしまいましたか」

エリザベートの言葉に緊張感が増す。

カルラの巨大ドラゴンの一撃で、騎士たちは吹き飛ばされる。

「なんだあの化け物は!?」

「あんなの勝てるわけないわ」

騎士団が浮き足立つ。

「皆のもの落ち着け!騎士団長の私がいる限り、負けはない!」

ザリウスが声を上げる。

「そうだ!ザリウス団長の言う通りだ!」

「我々は最強騎士団だ!」

騎士団が落ち着きを取り戻していく。

「カルラは!?」

俺はカルラの姿を探す。

「ドラゴンの頭の上にいます」

エリザベートがカルラの場所を教えてくれる。

カルラは笑みを浮かべながら、こちらを見下ろしている。

「エリザベート様!!」

ザリウスが俺たちを探して後方まで戻ってきたようだ。

「カルラを倒しましょう」

「はい」

「で、でもあのドラゴンはどうすれば?」

意気揚々とした二人に対し、俺は巨大なドラゴンを指さして言う。


「私が特大呪文をぶつけて、カルラを引きずり下ろすよ」

そう言ったのはアリアだった。

「えっ?そんなことできるんですか?」

「うん。MPが空になるからあとよろしくなんだけどね」

アリアは笑顔で言う。

「アリア……ありがとうございます。でも無理しないでください」

「大丈夫だよ、エリザベート様。あなたのためでもあるし…」

アリアがザリウスをちらりと見る。

「ザリウス隊長、死なないでね」

「君も気をつけて」

ザリウスとアリアが微笑み合う。

「では、アリア。お願いします」

アリアはこくりとうなずき、詠唱を始める。

「大いなる光の女神、我に力を……」

アリアの身体が輝き出す。

アリアの両手には光の玉が出現する。

「聖なる裁きよ、闇を滅せよ!」

アリアは巨大なドラゴンに向かって飛んでいく。

そして、巨大なドラゴンの背中に着地すると、両手を突き出した。

「ホーリー・ジャッジメント!」

アリアの両腕から光が放出される。

アリアの両手からは無数の光線が放たれている。

アリアはカルラが乗る巨大ドラゴンに向けて、光線を放ち続ける。

『グオオオ!』

巨大ドラゴンは悲鳴のような鳴き声をあげる。

「まだまだー」

アリアはさらに威力を高め、光線を放つ。

「うおおおおお!!」

アリアの放つ光線で、カルラの乗る巨大ドラゴンが少しずつ下がっていく。

「調子に乗るなよ、小娘!!」

ドラゴンの上に乗っているカルラが跳躍し、アリアに攻撃を仕掛けようとする。

しかし、 それを見たザリウスもカルラに向かって跳躍する。

ザリウスは剣を抜き、カルラに向かって振りかぶった。

ザリウスとカルラが空中で交差する。

ザリウスはカルラを斬りつけ、そのまま地面に降り立った。

カルラは地面へと落下していく。

「カルラ!!貴様だけは許さんぞ!!」

「なぁに!? なかなかの美丈夫がお相手してくれるってのかい!」

カルラは笑いながら体勢を立て直す。

俺とエリザベートは遠目から介入するタイミングを伺う。

「私はザリウスが離れたタイミングでカルラに魔法をぶつけます」

エリザベートは俺の目を見て話す。

「了解しました」

ザリウスとカルラの戦いが始まる。

激しい攻防が繰り広げられている。

カルラがザリウスの攻撃をギリギリでかわす。

「やるねぇ、あんた。だけど私のスピードについてこれるかしら?」

カルラが高速移動を開始する。

「くそ!なんて速さだ」

ザリウスの動きが鈍くなる。

「ははは、ほれほれぇ!」

カルラがさらに速度を上げ、攻撃を続ける。

「ぐっ……」

ザリウスの表情が歪む。

「今です! ザリウス! 離れてください!」

エリザベートが叫ぶ。

ザリウスはカルラの攻撃をなんとか避け、距離をとる。

「喰らいなさい!エターナルホーリーエクスプロージョン!!!」

エリザベートの手から放たれた光の球がカルラに迫る。

「ちっ、こんなものぉ!!」

カルラは片手で光の球を受け止めようとする。しかしエリザベートの魔法力は並大抵のものではない。

「な、なにぃ!?」

カルラは驚愕の声を上げる。

カルラは魔法を跳ね返そうとするが、魔法力が上回っているため押し返される。

「うわあああ!」

そして、ついにカルラに直撃した。

カルラを中心に大爆発が起こる。

「やったか?」

俺は呟いた。

煙が晴れると、そこにはカルラが立っていた。

「ふぅん……なかなかやるじゃない」

カルラはニヤリと笑う。

「あれを食らってもまだ動けるのか……」

ザリウスが驚きの声を上げた。

「さぁ、第2ラウンドといくわよ!!」

カルラがこちらに向かって走って来る。

「まずはお姫様に死んでもらいましょうかねぇ!!」

カルラがエリザベートに向かって飛びかかる。

「させるか!」

ザリウスがエリザベートの前に立ち塞がる。

「邪魔だよ!!」

カルラはザリウスの腹に拳を入れる。

「ぐあっ」

ザリウスは吹き飛ばされる。

「ザリウス!!」

エリザベートは叫び声をあげる。

「次はアンタの番よ!!」

カルラが勢いよくジャンプし、エリザベートに飛びかかろうとする。

「カルラァァァ!!!」

俺はカルラに突進する。

「はぁ? 豚肉太郎、アンタもいたの?」

カルラは俺の方へ顔を向ける。

「せっかくお姉さまに助けてもらったのに、また命を捨てに来るとはねぇ。馬鹿なのかしら!?」

カルラは嘲笑うように言う。

「お前だけは絶対に許さない!!」

俺はカルラを睨みつける。

「豚足タックル!!」

俺は全速力で走り、カルラに向かって体当たりをした。

「遅すぎるんだよ!!」

カルラは簡単に俺の攻撃を避けてしまう。

「くたばりな!!!」

カルラは俺の顔面を思いっきり殴った。

「うあぁっ」

俺は地面に倒れる。

「弱すぎるねぇ。あんたはこの戦いについてこれるレベルじゃないよ」

カルラは倒れている俺の頭を踏みつけた。

「やめなさい!! エターナルホーリーエクスプロージョン!!」

エリザベートが再び魔法を放つ。

「そんなでかい魔法を連発できるなんて、王女様もやるわねぇ!!」

カルラは魔法を避け、エリザベートに向かって跳躍する。

「うっ!!」

カルラは一瞬でエリザベートの眼前に迫り、回し蹴りを放った。

「ぐっ……」

エリザベートは地面へと叩きつけられる。


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