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豚肉太郎と力の秘密

「食いすぎた……」

その後合流したエリザベート様に俺たちは笑われた。

「まったく、二人とも何をやってたんですか?」

「すみません、つい……」

「ちょっと食べすぎちゃったね」

俺とロゼは腹をさすりながら答える。

「それでエリザベート様、この後は?」

「魔王について調べたいことがあるんです。付き合ってもらってもいいですか?」

「もちろんです」

「よかった。では行きましょう」


 俺たちは城の書庫へ向かった。

「すごい量の本ですね」

俺は感心しながらつぶやく。

「ええ、ここには世界中の本がありますから」

「へぇ、そりゃあすごい」

俺は適当な本棚から一冊の本を抜き取った。

「豚肉くん、何見てるの?」

「これ。『世界の武器図鑑』って書いてある」

表紙には様々な武器の絵が描かれている。

「わぁ、おもしろそう。私にも見せて」

「ほらよ」

ロゼに本を渡す。

「どれどれ。えっと、これは剣か」

「みたいだな」

「ふむふむ。『エクスカリバー』『デュランダル』『グングニル』か……。かっこいい名前ばっかり」

「いいなぁ。俺もこういう武器で戦ってみたいなぁ」

「そういえば、どうして豚肉くんは武器を装備できないの?」

「さぁ? わからない」

そうやって本を二人で見ているとエリザベートが一冊の本を持ってくる。

「これは一〇〇〇年前の勇者と魔王の戦いについて書かれた本です」

「へぇ、そんなに前の」

「えぇ。大昔すぎて参考にならないと思ってましたが、気になることを思い出しました」

「気になったこと?」

「とりあえず読んでみてください」


 俺はロゼやエリザベートにも見えるよう、本を机の上に広げる。

「なになに。『その日、魔王は世界を滅ぼすために動き出した。しかし、それを阻止すべく立ち上がった一人の青年がいた。彼の名はエデン。彼は伝説の武器を装備し、仲間とともに戦った。そしてついに魔王を倒し、世界に平和が訪れた。そして、彼が使った武器こそ、この世に二本しか存在しない最強の剣、エクスカリバーである』か……」

どこにでもあるようなおとぎ話だ。

「この剣って」

「さっき『世界の武器図鑑』に乗ってたよね!」

現存するのだろうか?

「太郎。よくよく考えてみてください。だいたいの伝承では勇者は伝説の武器を使って魔王を倒しています」

「はい」

「でもあなたは素手で戦っているんですよね?」

「そうですね」

「勇者なのに?」

「あ……!」

言われてみればそうである。勇者のくせに伝説の武器が装備できないってなんだ? そのへんのしょぼい武器すら装備できないってどういうことだ?

「もしかして俺って勇者じゃない?」

「いえ、魔王はあなたを勇者だと考え接触してきました」

「ということは……」

どういうことだ? 全然わからん。

「これは推測なのですが…、あなたは伝説の武器と同じくらい強力な何か『別のもの』を持っている」

「別のもの?」

「それがなんなのかはわかりませんが、もしそれを引き出すことができたら」

「できたら?」

「魔王を倒せるかもしれません」

「マジか!?」

「あくまで可能性の話ですが」

それはかなりのポジティブシンキングだろう。

「今日お伝えしたかったのはこれだけです。太郎、自分の能力について今一度振り返って考えてみてはいかがでしょう」

「わかりました」


 俺たちはエリザベートと別れ、帰路につく。

「豚肉くんの秘められた力かぁ」

途中、ロゼがそんなことを言った。

「うーーーん」

俺は腕を組み考える。

「なんか、あんまりピンとこないんだよなぁ」

「でも、エリザベート様は結構確信ありげだったよ?」

「そうなんだけどなぁ……」

アルバンとの戦いを思い出す。あの時、確かに今までになかった力が湧いたような気がする。

「あれは何だったんだ? 何か条件があるのか?」

もし、秘められた力があるとしたらあのあたりに関係してくる気がする。

「どうしたら発動できるか、いろいろ試すか」

「どうやって」

「とりあえず、そのへんのモンスターと戦ってスキルを使ってみるとか」

「そっか! スキルを使えばヒントがつかめるかも」

「そういうこと。モンスターと戦うにはどうすりゃいいかな。王都の外に出るか?」

「ギルドで依頼を探すとか?」

「確かに。今から行ってみるか?」

「うんっ」

こうして俺たちは冒険者ギルドに行くことにした。


「えっと、これなんてどうかな」

ロゼが一枚の依頼書を手に取る。

「ゴブリン退治ねぇ。敵が弱すぎないか?」

「豚肉くん、最初に会ったときはレベル1だったのに言うようになったねぇ」

「そりゃそうだろ」

あのときとは全然違う。そんな俺を見てロゼが嬉しそうに笑っている。

「なんだよ」

「豚肉くんも成長したなぁって思って」

「成長って。……お、こっちの依頼なんてどうだ?」

俺が手に取った依頼書にはこう書かれていた。

『盗賊団『ブラック・ファング』の討伐』

「へぇ、盗賊団の討伐かぁ。最近、王都内で悪さをしているらしいね」

「お、じゃあ王都の外に出なくて済むじゃん。これにしようぜ」

「場所はわかってるのかな?」

「えぇと……。あ、ここか」

依頼書を詳しく見てみると、詳しい場所や地図が載っていた。ここからかなり近い場所にあるようだ。

「よし、ここに行こう」

「オッケー」


 依頼を受け、俺たちはその盗賊団がいるという酒場に向かう。

酒場に入ると、中は薄暗く、酒臭さが鼻をつく。あまり雰囲気の良いところではなかった。

「すみませーん」

ロゼが店員を呼ぶ。すると奥の方から背の低い男がやってきた。

「いらっしゃい。注文は?」

「『ブラック・ファング』」

「なんだって?」

男の表情が一変する。

「おい、てめぇら。お客さんだぞ」

男は店の奥に向かって叫んだ。

奥からはスキンヘッドの男が数人現れる。

「俺たちが『ブラック・ファング』だって知って来たのか?」

「もちろんだよ」

「なら覚悟はできてるんだろうなぁ」

男たちが一斉に武器を構える。

「お前たち、やれ」

リーダーらしき男の命令で他の連中が襲いかかってくる。

「ロゼ、下がっていろ」

「わかった」

ロゼが数歩後ろに下がる。

「スキル発動、『豚足タックル』」

俺は突進系スキルを発動する。

俺の体は一瞬にして加速し、一番手前にいた男を吹き飛ばす。

「なんだこのガキ!?」

「気をつけろ。こいつは普通じゃない!」

二人が剣を構え、左右に分かれて俺を挟み、対峙する。


「豚肉くん、はりきってるなぁ」

傍観していたロゼの近くにも、盗賊団のメンバーが近づいていた。

「このガキから先に始末してやるよ!」

一人の大柄な男が斧を振り下ろす。ロゼはそれをバックステップでかわした。

「スキル発動、『短剣術・三式:瞬閃華』」

短剣が光を放ち、その光が斬撃となって放たれる。

「ぐあっ!?」

短剣の一撃を受けた男は血を流しながら倒れた。

「こいつ、強いぞ!?」

「私のほうが豚肉くんより強いからね」

ロゼが余裕の笑みを浮かべている。

「くそぉ! なめやがって!!」

残った二人のうち一人がナイフを投げる。

「遅いよ」

ロゼは難なくそれをよけ、相手との間合いを詰めると、素早い連続攻撃で相手を圧倒した。

「うわあああ!!!」

男は悲鳴を上げ、その場に倒れ込んだ。

「豚肉くん、あとは任せた」

「おう」

俺は残る二人の元へ向かう。

「ちっ! 仕方ない。みんな、やっちまえ!」

リーダーの合図とともに、店内にいる残りのメンバーたちが襲ってきた。

「スキル発動!

『豚足アタック』」

まずは目の前の男に体当たりを食らわせる。

「ごふぅッ!?」

続いて横からきた別の男に回し蹴りを放つ。

「がはっ……」

そして最後に背後から斬りかかってきた男の攻撃を紙一重で避け、カウンターで拳を叩き込む。

「ぎゃっ」

これで全員片付けた。酒場内には静寂が戻る。

「さすがだね」

「予想以上に楽勝だったな。これじゃあ俺の秘められた力とか検証のしようがないな」

「もう少し強い敵探さないとダメかな~」

「とりあえずギルドに報告しに戻るか」


 俺たちは盗賊団を討伐したことを報告するため、再び冒険者ギルドに戻った。

「盗賊団を討伐しました」

受付嬢に依頼書を渡す。

「はい、確認します……。これは……すごいですね」

盗賊団は王都でも有名な犯罪集団だったらしい。報酬はかなり高額になった。

「ありがとうございます。ではこちらが今回の報酬です」

「はい、確かに」

「またのご利用をお待ちしております」

俺は金貨の入った袋を受け取る。

「じゃあ、今日はこれで帰ろうか。もう暗くなってきたしな」

「そうだね」

「3日後の戦いまで、しばらくこいつを続けていくか。修行がてらな」

「うん」

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