汝、如何なる姿を明鏡に映す
葉「ホラーな展開は好きじゃないんだけどな……」
影「家族全員ホラー苦手じゃん」
ある種、ホラー回です。
本場の人と比べると、勿論、生ぬるいけどね。
洗い場から上がった少女は裾の長い、だぼだぼとした寝巻きを着る。そして何の素材を使っているのか、琥珀から割と適当に洗っても大丈夫だと言われた和服を洗った。
「後は乾くまで。以外と面倒な感じじゃなくて良かった……」
心からホッと息を漏らし、まだ濡れたままの和服をカゴに入れて、最初の部屋に戻ってきた。
「ええっと、掛けるものはないかな。…………うん、これにしよう」
適当な長さの棒を上手く引っ掛けて、上に和服を吊るした。和服だからか、ハンガーがなくても棒を通せば問題なさそうだ。
◇
暫くすると、琥珀が部屋に入ってきた。扉の取っ手は明らかに今の琥珀より高いはずなのに、どうやって開けたのか。
[良かった、まだ起きてたのね。部屋はいっぱいあるみたいなんだけど、私もここに居ていいかしら]
「いいけど、…………寂しいの?」
[そ、そんな事ある訳ないじゃないっ! 夜も私だけで寝られるようになったし……]
それは全く弁解になってない気がする。少女は仕方がないという風に琥珀を抱え、寝床に入る。
「そう言えば毛布が薄いって感じてたから、……暖かい、すぅ」
[ちょっ?!?!]
少女は琥珀をぎゅっと抱き締めて、幸せそうに目を閉じる。
◇
蝶が舞った。
水平線の続く浅瀬の湖、何処までも広大な蒼天が私の視界を染めていた。
ぽつん、ぽつんと浮かぶ水泡から青い蝶が生まれ、何処かへと羽ばたいて消えて行く。
湖は鏡のように私を反射し、こちらに手を伸ばす白髪の少女を映し出した。よく見ると、服があのコスプレのような和服に変わっている。
私が鏡面に触れると、指を伝って私の知らない景色を照らしてゆく。
朧げな景色は様々な人々から建物まで移り変わってゆく。
その中でも、特に鮮やかな色で照らされた一枚は家族だろうか、父親らしき男性が快活に笑う様子や、母親らしき女性の後ろ姿。父親と同じ背の高さがあっても、何処か子どもっぽさが抜けない少年二人が肩を組み、その様子を少女が馬鹿だなぁと呆れたように笑う。そして、振り返ると幼い少年と少女が私を無垢な瞳で見上げながら、こちらに手を伸ばす。
最後、新たに一人現れ……景色が赤く染まった。
赤く、紅くこの色は何の色?
少しずつ溶けるように広まっていく。
蝶が舞い降り、赤を覆い尽くす。
上を見上げると、天蓋も私を映し出す。
鏡に映る私の後ろで誰かが――――微笑んだ
◇
世界は変わらず、未だに未来は覆い隠されている。
時に世界は悪夢のような現実を突きつけ、わたしたちを挫けさせようともする。
もしその悪夢が明けたとき、見渡す世界は一体どんな景色だろう。
それは、その景色を見た者たちにしか分からない。
作者は割とホラー映画を見たことがあります。
……アメリカンな話は何であんなにも、セクシーシーンがあるんだろうね。流石、アメリカ。
作者の見てる作品、B級が殆ど占めてるからかな。




