七夕の番外編 風がまた吹く事を
番外編でーす。全く先程と関係ない話が出るので、注意!
七夕スペシャルという奴です。キャラは……気にするなっ!
七夕、というとやはり有名な物語といえば織姫と彦星の話だろう。一年に一度、織姫と彦星は天の川に隔てられた恋人との逢瀬の日。
そんな日に私たちは短冊に願いを書き、竹に吊るす。よく考えたら、短冊と願いは何処から出たのかと思うだろう。何でも織女星に祈りを捧げ、遊芸などの上達を願うらしい。
…………将来の夢とか、その中に入るのだろうか?
その答えは、織女星にしか分からない。
一先ず、この星祭りは人々を魅了し、神々もその行事を楽しむのだ。
◇
「そう言えば、七夕で思い出したんだけどさ。ある農家の娘が冥界の王と結ばれる話って、少し似てるよね」
「あれは本当の話かどうか知らないけどね。お婆様たちに聞いても、その又お婆様から聞いた話だと言われたし…………本当の事は分からないわよ」
わたしたちはそんな会話をしながら、穏やかな風の吹く縁側で座っていた。横には盆が置かれており、湯気立つお茶には茶柱が浮かんでいた。
「あっ、おーい。影ちゃんと葉ちゃん遊ぼーっ! のんびりするより、かくれんぼした方が楽しいと思うねん」
にこやかな笑顔で新たな少女が現れる。
「水が体を使った遊びが好きなのは分かってるけど、偶には日向ぼっこも気持ちいいよ」
影と呼ばれた少女はあまり乗り気でないようだ。続く葉と呼ばれた少女は愚問だと語るように、本を読んでいる。
「むぅー、ええもん。私にはお義父ちゃんがおるもん! ラルちゃんも誘って遊んでくるもん!」
口を膨らませて去ろうとする水に、影は仕方がないという風に引き留める。
「ちょっと待ってよ、水。分かったから、それで何するの?」
「うーん、あっ、そや! 今日七夕よね? じゃっ、私たち一つずつ短冊を書くっていうのはどや?」
これは妙案だ! という風に笑う水。
「結局、水は楽しければ何でも良いんでしょ? まあ、良いけど。でも、願いか…………思いつかない」
「うちにはぎょうさんあるで! みんなと買い物に行きたいし、映画を観たいし、色々したいわ!」
早々に諦めようとする影、指を折りながら願いを一つずつ言っていく水。収集が付かなそうな状況に、葉はパタンと本を閉じた。
「ねえ、一つ思いついたから聞いてくれない?」
「ん、何を思いついたの?」
影が訊くと、微笑んで提案した。
「みんなで同じ願いを書くの、そうしたらより願いが叶う気がするでしょ? それに、良い思い出にもなる、どう?」
「ええやん、それ!」
「でも、みんなの願いを纏めるのは難しいと思う。ほら、水は願いが多いから」
「そら、何でもしたいやん。しかも、共有できればより幸せになれるからっ」
口調が崩れるくらいの本心の笑顔に釣られて笑う。
「じゃあ、書く願いはこうしよう」
◇
「おい、そろそろ帰るぞ」
「お義父ちゃん!」
たったた、と駆け寄る水の様子を眺めながら、影は別れの言葉を言って去っていった。
「さて、本の続きでも読もう」
カランカランと涼やかに鳴る風鈴が三つ冷涼な音を立てて、耳を楽しませた。
七夕、最近は短冊も書かないな。
でも、書いた日は何故か少し胸がドキドキして眠れない。
……あっ、夏はジメジメしてるからか。
皆さんも、熱中症にはお気を付けて。




