剥き出しの闘争
ラル「血が、闘争を求めているっ!」
葉「どうしたの? 突然叫び出して」
ラル「……ふぅ、いや何か叫びたくなりましたから。
何でだろー、私にも分からないねー」
葉「何かに影響されたのかな?」
まだ日も登り切らない辺りで、リラは普段使う狩猟道具を装備し、闇に包まれた村までやってきた。松明を手に巡回する衛兵の目から逃れるように忍び込み、一見何の変哲もない家の扉を特定の方法で叩いた。
無言のまま開けられた扉の中に入り、リラは扉が閉じるまで外の様子から目を離さなかった。
「準備はどのくらい出来てる?」
リラが声を潜めて、扉を開けた男に聞くと男は意味深な笑みを浮かべた。
「あれの用意は厄介この上なかったが、準備万端よ」
「そう、じゃあ貴方たちは衛兵の注意を引いて。私は勝利の鐘を鳴らしてくるから」
ぎぃっと音を立てて開いた隠し扉にリラは入り、その先に向かって駆け出した。
◇
エリスがいる天幕に伝令兵が遠くの村で火の手が上がったという報告を受け、エリスは外に出て息を吸った。既にエリスの天幕の前には大勢の団員が今か今かと待ち受けていた。
「全体進軍! 目標は奥にある城塞都市の包囲。大地を踏み鳴らし、悪逆非道を行う敵陣をを揺らしてやれ!」
その号令とともに、エリスたちは闇を切り裂きように前へ突き進んでいく。
時間をかけて、城塞の前まで来たエリスたちは言葉通り城塞を包囲し、それに気付いた敵軍も鐘を鳴らし臨戦体制に移る。
「何者だ、姿を見せろ!」
円状に囲む城壁の上から敵の大将らしき男が叫ぶ。エリスはその男の前に一人で向かった。先程天幕で着ていた服と異なり、急所に胸当てなどを付けながらも他は動きやすい軽装。矢が当たれば死んでしまうかもしれない。しかし、彼女はその怯えを臆面にも出さない。
「私は聖王国、ライデンシャフトの勇者エリス! 民を苦しめ、己の私腹を肥やそうとする貴方たちを討伐しに来たっ!」
「はっ、貴殿の武勇は知っているがその程度の兵でここを通り抜けられると思うなよ!」
エリスと大将が一瞬睨み合ったあと、互いの軍に号令をかけた。
「全軍一斉斉射! 目の前に立ち塞がる敵を打ち払え」
「突貫せよ!」
両者の軍が激突した。
◇
降りしきる矢の雨、全方向にある門から一斉に攻撃を仕掛けられた為に矢の密度は低く、エリスの率いる兵士たちが着るフルプレートは遠くから放たれた矢を弾いてゆく。勿論、敵もそれで済ませる事はなく油を城壁から投げて火矢を放つ。
草原は業火に焼かれ、至る所で火花が散る。城門までの道を一つの群れが切り開き、その群れが運んだ破城槌で城門を打ち破らんとする。
しかし、耳を塞ぎたくなるような打撃音すら、この場では闘争の声に掻き消される。肌は血で滲ませ、鉄で覆われている部分ですらへこみを作る。鉄の匂いが混ざり合い、普段なら鼻を塞ぎたくなる匂いが充満しようともその足が止まる事はないのだ。
そんな均衡を破るように、大将の男が激しい音を立てて壁から降りてきた。
「させるかァッ!」
ギラリと輝く斧槍が暴風を起こし、大将に飛びついた兵士、壁に張り付いていた兵士をも吹き飛ばす。
更地になった大地を踏み締めて、大将は近づこうとする兵士たちを薙ぎ払い、狼の遠吠えのように叫ぶ。
「勇者よ、一騎討ちを申し込む。私はアルシーア騎士団団長ダンデリオンッ! 例え女子とて、容赦はせんが誉があるのなら出てこい!」
びりびりと空気が振動し、周囲を萎縮させるだけでなく、物理的にも圧迫しているようだ。
「いいよ、私は逃げも隠れもしない」
前線より後ろ、矢が届かない辺りで指揮をとっていたエリスは立ち上がり、自分の武器を手にする。
ダンデリオンはエリスの武器に目を開くが、すぐに頭を振って目の前の敵を見据える。
「……それがお前の武器なのか? まあ、いいだろう。いざ、尋常に——」
「「勝負ッ!」」
……血生臭い戦いを書いてしまう。
うっ、次はバトル描写だよ……が、頑張るぞ!