靄の奥は果たして人か?
葉「ん? 何だろう、このモヤモヤ感」
水「もやもや? そう言うんは基本気のせいやろ」
葉「いや、辻褄が合わないと言うか……何というか」
水「あー、本で一巻飛ばしで読んじゃった感じか?
確かにそれはもやもやする!」
城下町の露店でも巡ろうとしたところで、お母さんはぼろぼろの外套を着た人に声をかけられた。身長は私の前に立つお母さんより高く、その身に纏う常人とはかけ離れた雰囲気が相まって圧を感じる。
その人に誘導されて、近くにあった店に入る。
「いらっしゃいませ! 今日は祝いの日だから何でもサービスするよ。席はあちらですからね」
既に賑やかな店の中でウェイトレスに案内されて、周りと少し間を置かれた席に座る。
◇
「さて、君に話しかけたのは聞きたいことがあるから何だが……何でも知っているわけではないが、知りたいことがあれば多少力になれるだろう」
堂々と話しかけてきた割には、意外と繊細なのかも知れない。
「…………別に構いません、私に聞きたいことがあるのなら早めにお願いします」
対してお母さんは警戒を解かず、早く終えて欲しい様子。
「ふむ、私が聞きたかったのは琥珀くんの姉の様子についてなのだが……」
「[お姉ちゃんのことなんて知らないっ!] ……こほん、私は知らない。でも、何故琥珀のことを知ってるの?」
「琥珀くんはあの子と喧嘩したのか……それを君に聞いても仕方ないか」
突然お母さんの豹変に驚いて、目を丸くしてしまう。しかも、最初の声はお母さんのじゃなくて…………
「私は琥珀くんの姉、瑠璃葉くんの古い知り合いでね。会ったのも随分前だったから、心配してたがあの子は琥珀くんと喧嘩してるのか」
一人で納得したのか、頷いて丁度出されたお冷を飲む。
「…………じゃあ、次の質問。貴方は一体何なのか」
「当然の質問か、別に私自身は大した者じゃない。ただ探しものを探しに星々を渡ってるだけだからな。ただ君たちがそこまで警戒する理由はそこではないとも分かっている」
そう、彼が不審だからお母さんは警戒してるわけではない。ただ彼が——
「君たちには私が歪んで見えるのだろう? 正直、私の反応で君がそうでないと気付けていた。それでも彼女の関係者であるのなら、彼女の様子を知れると思ったからな」
歪む、というより私からしたらぼやけて見える。輪郭がはっきりせず、ただ何となく人なのだと分かるくらい。
「私がおかしいのではない。君たちが世界をそう認識しているだけなんだ。何故なら、君たちが魔の……いや、鬼の血を引くものたちだからだ」
「それがどうしたんですか?」
お母さんが見づらそうに目を狭めている。
「君たちは力を教えてもらわなかったのか? まあ、そこまで時間がかかるものではない、手短に教えよう」
もう、『あれ』とか、『それ』とか指示語を多くしたくなるけど、しても仕方ないからね。
次回、やっと放っておいた魔法に触れます
言い忘れてたけど、基本的に前編はこの世界と、彼女らが手にする力というかについての説明がメインだよ。
正直、後編だけ見ても割と……未来の作者に期待しておこう。




